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インフルワクチンにパッチ剤の可能性

 2019年11月12日 06:00

 米国で開発中のインフルエンザワクチン(IFV)の経皮吸収型製剤(パッチ剤)は、マウスを使った実験で十分な効果を示し、副作用も認められなかったという。研究者らによると今後、ヒトでの効果を確認し、医薬品として承認されれば、IFV注射剤のように医療従事者による薬剤の管理や廃棄時のバイオハザード(使用済み注射針からの感染)対策が不要になるという。研究の詳細は、J Invest Dermatol(2019年8月2日オンライン版)に報告された。

皮膚炎患者のバリア機能低下がヒント

 皮膚には、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入するのを防ぐバリア機能がある。皮膚バリア機能は病原体から生体を保護する一方で、予防接種ワクチンなどの分子量が大きい物質の皮膚からの吸収を妨げる。湿疹やアトピー性皮膚炎の患者では皮膚バリア機能が破壊されやすく、花粉、カビ、その他のアレルゲンが皮膚から侵入して免疫反応を起こすことが知られている。

 研究者らは湿疹患者などを対象とした検討を重ね、皮膚バリア機能を低下させる成分を見いだし、この成分とIFVを組み合わせたパッチ剤を開発。事前にマウスにIFVを注射してインフルエンザウイルスに対する攻撃力を誘導し、さらにその背中にパッチ剤を貼付して攻撃力が高まるか否かを評価した。

パッチ剤はインフルエンザウイルスへの攻撃力を増強

 検討の結果、パッチ剤を貼付するとインフルエンザウイルスに対する攻撃力が強まることが確認されたという。

 なお、パッチ剤貼付後にIFVを注射したマウスでは、パッチ剤によりインフルエンザウイルスに対する攻撃力は増強しなかったという。すなわち、パッチ剤はIFV接種や自然感染により、インフルエンザウイルスにさらされた経験がある生体の攻撃力を高めることが示唆された。

 皮膚バリア機能が長時間低下すると体内に病原体が侵入する恐れがあるが、今回IFVパッチ剤貼付後に皮膚バリア機能は一時的に低下したものの、パッチ剤除去後24時間で、元の状態に回復したという。パッチ剤除去後3カ月間の観察期間中に、易感染(免疫力が低下してさまざまな感染症にかかりやすくなる状態)などの安全性に関する問題は認められなかった。

 研究者らは「今後はパッチ剤によるインフルエンザウイルスへの攻撃性を向上させるべく貼付時間を最適化し、将来的にはヒトを対象とした試験で効果を確かめたい」と展望している。

 このパッチ剤は注射器が不要なため、針刺しによる傷や痛みがなく、廃棄時のバイオハザード対策も不要である。そのため「このパッチ剤の技術を応用すれば、さまざまな疾患に対するワクチン療法の簡略化が望める」と研究者らは述べている。

(あなたの健康百科編集部)

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