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読み書きができないと認知症のリスクが3倍に

 2019年11月29日 06:00

 文字を使って読み書きする力を識字能力、それを持つ人が全人口に占める割合を識字率と呼ぶ。識字率は日本を含む多くの国で99%を超すが、サハラ以南のアフリカ諸国やアフガニスタンなど50%に満たない国もあり、世界の15歳以上人口の6人に1人(7.5億人)が識字能力を持たないとの報告もある。米国では移民などを中心に、読み書きできない人が3,200万人を数えるという。米・コロンビア大学タウブアルツハイマー病・加齢脳研究所のMiguel A. Renteria氏、Jennifer J. Manly氏らは、ニューヨーク在住の高齢者の協力を得て、識字能力と認知症の関係を調査。読み書き能力のない人は、ある人と比べて認知症の発症リスクが3倍に上ることを明らかにした。

認知症を有する割合も発症する割合も高い

 Manly氏らが検討の対象としたのは、学校教育を受けた期間が4年以下の高齢者983人(平均年齢77歳)。彼らはマンハッタン北部に住み、多くはドミニカ共和国で生まれ育った人たちだった。識字能力の有無は、「あなたは今までに読み書きを習ったことがありますか」という質問に対する回答で判定。研究開始時とその後1.5〜2年ごとに、健康診断と認知症の検査を行った。

 研究の開始時点で識字能力を持つ人は746人、持たない人は237人だった。そして、識字能力を持たない人では35%(83人)に、持つ人では18%(134人)に認知症の症状が見られた。両グループの年齢や社会経済的背景、合併症などを調整すると、識字能力のない人はある人の3倍、認知症を有していた。

 開始時点で認知症のなかったグループを中央値で3.5年間追跡調査したところ、識字能力を持たない人では48%(114人)、持つ人では27%(201人)が認知症を発症した。この結果についても同様の調整を行ったところ、識字能力のない人はある人の2倍、認知症を発症しやすいことが明らかになった

読書は認知症の発症、進展を遅らせる

 もちろん、認知症の検査には言語能力が必須で、読み書きの不自由な人が不利であることは否めない。しかし今回の結果は、識字能力が読解力、言語力のスコアだけでなく、記憶力、思考力などスコア全般に影響することを示した。Manly氏は「読書はいろいろな回路を通じて脳を刺激し、認知症の発症や進展を遅らせる可能性がある」と考察する。その上で「今後は、識字能力のない人に読み書きを教える取り組みによって、認知症を減らせるかどうかを明らかにしたい」と述べている。

 認知症予防は日本の高齢者にとって最大の関心事である。読書がいい、新聞を読む人は認知症になりにくいといった話はよく耳にするが、明確な根拠は示されていない。日本では識字能力の問題は限定的なだけに、脳のさまざまな回路をいかに刺激するかがポイントである。「読む」だけでなく「書く」「朗読する」「聞いた話をメモする」といった言語機能の多角的な刺激が重要となるだろう

(あなたの健康百科編集部)

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