海藻を毎日食べると心臓病リスクが低下
2019年12月03日 06:00
日本人約9万人を約20年間追跡した大規模な調査から、海藻(アオノリ、ワカメ、コンブなど)を毎日食べる人は心臓病のリスクが大幅に低下することが明らかになった。研究の詳細は、医学専門誌Am J Clin Nutr(2019年9月13日オンライン版)に発表された。
リスク低下は男性で24%、女性で44%
これまでに動物を用いた研究で、海藻に含まれるミネラル、ビタミン、食物繊維、蛋白質などには、血圧を下げる作用や血清脂質を改善する効果があることが報告されている。しかし、ヒトを対象とした研究では、海藻摂取と心血管疾患リスクの関係について明らかにされていない。今回、日本人の生活習慣病の予防と健康寿命の延伸を目的に行われている多目的コホート研究JPHCの参加者を約20年間追跡し、海藻摂取と脳卒中、虚血性心疾患の発症リスクとの関係を検討した。
対象は1990~94年に40~69歳で循環器疾患およびがんを発症したことがなく、食事摂取頻度に関する調査票に回答したJPHC参加者8万6,113人(男性4万707人、女性4万5,406人)。食事摂取頻度の調査結果から、海藻を①ほとんど食べない②週に1~2日食べる③週に3~4日食べる④ほとんど毎日食べる―の4グループに分け、海藻摂取頻度とその後の脳卒中および虚血性心疾患の発症との関係を検討した。
約20年の追跡期間中に、脳卒中は4,777人(脳梗塞2,863人、脳出血1,361人、くも膜下出血531人)、虚血性心疾患は1,204人が発症した。
居住地域、年齢、体格、余暇の運動習慣、喫煙・飲酒習慣、高血圧または糖尿病の既往、高コレステロール血症の治療、総エネルギー摂取量、野菜・果物・赤肉・加工肉・魚類・大豆製品・緑茶・食塩の摂取量を統計学的に調整した解析では、海藻を食べる頻度が多い人ほど虚血性心疾患発症リスクが低下することが分かった。海藻をほとんど食べない人に対してほとんど毎日食べる人では虚血性心疾患発症リスクが男性で24%、女性で44%低下した。
一方、脳卒中と脳卒中タイプ別の発症リスクについては、海藻摂取との関連は認められなかった。
健康な食事パターンとは関係ない
以上から、研究者は「今回、海藻摂取が男女を問わず虚血性心疾患発症リスク低下と関連することが初めて示された」と結論。さらに「その機序として、海藻に含まれる食物繊維による血清脂質改善作用や蛋白質による血圧降下作用などが考えられる。また、海藻を日常的に食べる人は健康な食事パターンを実践していると考えられるため、健康な食事パターンの人が多く取る食品(野菜・果物・魚類・大豆製品・緑茶)の摂取状況を調整して解析したところ、結果に変わりはなかった。この結果から、海藻の摂取は健康な食事パターンとは関係なく、単独で虚血性心疾患発症リスク低下と関連している可能性が示された」と説明している。
(あなたの健康百科編集部)