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がん患者の吐き気に抗精神病薬が有効

 2019年12月24日 06:00

 がん患者にとって、悪心(吐き気)・嘔吐(吐くこと)の症状は時によって耐え難い苦痛を伴い、QOLを低下させるといわれている。そのような中で今月(2019年12月)、静岡県立静岡がんセンターと国立がん研究センターを中心に全国30施設から成る研究グループは、抗がん薬の治療による悪心・嘔吐を抑える新たな制吐療法の有用性が、医師・薬剤師の主導による臨床試験J-FORCE(J-SUPPORT 1604)で明らかにされたことを発表した。

嘔吐の抑制効果とともに、翌朝の眠気やふらつきも抑制

 抗がん薬治療では、さまざまな副作用が現れることがある。中でも悪心・嘔吐は半数以上の患者が経験しており、薬物療法の継続・完遂の妨げになるなど予後にも影響を与える。そこで、吐き気を抑える制吐療法による支持療法が重要となるが、現在の標準的な制吐療法では、悪心・嘔吐の研究で最も重要な指標とされる「嘔吐完全抑制割合」(嘔吐しない、かつ、追加の吐き気止めがいらない患者さんの割合)は、特に抗がん薬の投与後24時間以降の遅発期(投与2~5日目)には低下する。そのため、持続的な抑制効果の維持が課題であった。

 今回、有効性が確認された新たな制吐療法は、オランザピンという抗精神病薬を用いたもの。同薬が抗がん薬治療に伴う悪心・嘔吐に有効であることは既に知られていたが、眠気やふらつきの副作用が出やすいため、日本や欧州では普及していなかった。そこで研究グループは、肺がん、食道がん、子宮がんなどの治療でシスプラチンを含む抗がん薬を初めて開始する日本人患者を対象に、現在の標準的な3剤を用いたに制吐療法に加え、オランザピンの用量を減らし内服時間を工夫して併用する新たな制吐療法の効果を検証。その結果、眠気やふらつきの副作用を抑えながら、現在の標準的な制吐療法よりも高い悪心・嘔吐抑制効果が持続的に得られることが確認された。

 具体的には、前述の嘔吐完全抑制割合において、成績の改善が求められている遅発期の割合が現在の標準的な制吐療法のみでは66%だったのに対し、オランザピンを併用すると79%と良好な成績が得られた。その差は13%で、より有効性が高い新たな治療として認められる国際的な基準である「10%以上の改善」を満たしていた。さらに、悪心の程度についても、明らかな改善効果が確認されたという。

 同研究によって、この制吐療法が新たな標準的な制吐療法として国際的に採用されることが期待される。同研究は、今年開催された主要ながん関連国際学会および国内学会で優秀演題賞に選ばれた。また研究成果の詳細については、世界的に評価が高いとされる医学雑誌Lancet Oncology2019年12月11日オンライン版)に掲載されている。

(あなたの健康百科編集部)

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