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統合失調症患者の就労、個別支援が鍵

 2020年01月29日 06:00

 障害者雇用促進法の改正などにより、精神疾患を有する人の就労に向けた取り組みは進んでいると言われる。しかし、統合失調症のような重い精神疾患の患者にとって、就労の継続は依然として高いハードルのままだ。そこで、国立精神・神経医療研究センター精神保健サービス評価研究室室長の山口創生氏らの研究グループは、統合失調症患者が受けた「援助付き雇用プログラム」の内容を調査。同プログラムの再現性が高い事業所ではそうでない事業所と比べ、統合失調症患者の就職率が高く、就労継続期間も長かったと発表した。詳細は、米精神医学誌Psychiatr Serv(2020年1月3日オンライン版)に掲載された。

13事業所でプログラムの再現性を測定

 「援助付き雇用プログラム」とは、特に重い精神疾患を持つ人を対象に、患者個々のペースに合わせた就職活動や就労後の定着などを支援するプログラムのこと。これまでの研究から、集団的なトレーニングを課す標準的な就労支援と比べ、同プログラムを用いた支援は高い就職率と長期の就労継続をもたらすことが分かっている。

 しかし、同プログラムの過程で患者にどのようなサービスが提供されているか、事業所ごとに内容にばらつきがあるかは検証されていなかった。そこで山口氏らは、13カ所の事業所(医療機関4カ所、障害福祉事業所9カ所)で新たに登録され就労支援が開始された統合失調症患者51人を対象に、12カ月にわたって同プログラムの再現性(忠実に提供されているかどうか)を調査した。再現性は、「フィデリティ尺度」と呼ばれるチェックリストを用いて評価した。

支援プログラム再現で高い就職率

 調査の結果、同プログラムの再現性が高かった6カ所(22人)では統合失調症患者の就職率が68.2%だったのに対し、再現性が低かった7カ所(29人)では就職率は37.9%にとどまっていた。また、再現性が高い事業所では、低い事業所と比べて就労継続期間が長かった。

 患者が受けたサービスの内容別に見ると、再現性が低い事業所では就労支援員が1カ月当たり平均約13時間のサービスを提供していたものの、内訳は約80%が集団サービスだった。それに対し、再現性が高い事業所では1カ月当たり平均約6時間のサービスが提供され、そのうち約80%が個別サービスだった。また、再現性が高い事業所では、個別サービスとして事業所外での支援活動に最も多くの時間を費やしていた。

 研究グループは「本研究の知見は、重い精神障害を持つ当事者に対し就労支援を実施する際、事業所内外での個別サービスを提供できるシステム、あるいは個人の特性に応じた柔軟な定着支援を提供できるシステムが必要であることを示唆している」とコメント。精神障害患者に対する就労支援のいっそうの促進に向けて、個別のニーズを重視した援助付き雇用プログラムの定着が期待される。

(あなたの健康百科編集部)

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