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若い女性に忍び寄るサルコペニアの影

 2020年03月04日 06:00

 65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が25%を超え、超高齢社会を迎えた日本。人生100年時代といわれているが、男女とも平均寿命と健康寿命の間には10年近く開きがある。要介護認定高齢者は約600万人に上ると推定され、要介護の原因となる骨粗鬆症やサルコペニアへの対策が求められている。国立病院機構京都医療センター臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部臨床内分泌代謝研究室室長の日下部徹氏は、第40回日本肥満学会/第37回日本肥満症治療学会(2019年11月2~3日)で、サルコペニアに関する研究の解析結果を紹介。高齢者だけでなく若い女性(平均年齢18歳)でも、将来のサルコペニアリスクにさらされている現状を報告した。

実は年齢にかかわらず認められるサルコペニア

 サルコペニアは高齢者の有病率が6〜12%で、高齢期に見られる骨格筋量の減少および筋力または身体機能の低下と定義されている。しかし、身体活動性や病気、栄養に関連して発生する二次性サルコペニアは年齢にかかわらず認められ、これらを含めるとサルコペニア有病者の年齢層は幅広い。

 骨格筋量は30歳ほどでピークを迎え、その後は年間1〜2%ずつ減少していく。サルコペニアの判定は骨格筋量減少と握力低下、身体機能として歩行速度低下などで行われる。全てが認められれば重症サルコペニア、握力低下と歩行速度低下のいずれかと骨格筋量減少があればサルコペニア、骨格筋量減少のみであればプレサルコペニア、握力低下のみであればダイナペニアに分類される。

 日下部氏は、若年者(京滋大学生研究)におけるサルコペニアの実態を調査するために行った研究の解析結果について紹介した

男性は活動量、女性はエネルギー摂取量が筋肉量につながる

 京滋大学生研究の対象は、京都府と滋賀県の大学1年生1,264人(男性838人、女性426人、平均年齢:男性18.5±0.6歳、女性18.3±0.5歳)。身体測定、血圧・脈拍測定、サルコペニア指標などの測定に加え、質問紙調査により1週間当たりの身体活動量とエネルギー摂取量を評価した。

 検討の結果、男女とも標準的な体格の人が多く、体格指数(BMI)が25以上の肥満は男性11%、女性5%、18.5未満の痩せはそれぞれ17%、16%であった。

 サルコペニアの診断基準を満たしたのは男性0.4%、女性1%、プレサルコペニアはそれぞれ9%、3%、ダイナペニアは0.4%、1%であった。

 多変量解析の結果、筋肉量は男性では1週間当たりの身体活動量が多い人ほど多く、女性ではエネルギー摂取量が多い人ほど多いことが分かった。

 対象のエネルギー摂取量を、厚生労働省「2017年国民健康・栄養調査報告」の20〜29歳の平均値と比較したところ、男性はおおむね同程度であったが、女性は平均よりも少なかった。

 日下部氏は「サルコペニアの原因となる骨格筋量減少への対策には運動・食事療法が効果的であるが、特に今回の検討では若年女性のエネルギー摂取量の少なさが浮き彫りとなった。これは、将来のサルコペニアリスクにつながる恐れがあることから、骨格筋が成長する若年期にしっかりエネルギーを摂取し、筋肉量を増やすことが重要と考える」とまとめた。

(あなたの健康百科編集部)

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