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老人性難聴の予防、治療に福音

 2020年03月11日 06:00

 聞こえない、聞き取りにくいという老人性難聴(加齢性難聴)に悩む高齢者やその家族は少なくない。多くのケースでは生活に不満や不安を感じながらも、誰にでも訪れる老化現象の1つとして放置されている。しかし近年、老人性難聴と認知症発症との関連を指摘する報告が相次ぎ、難聴の予防と早期発見の重要性が高まっている。順天堂大学耳鼻咽喉科学准教授の神谷和作氏らの研究チームは、老人性難聴の初期に生じ進行に関わるメカニズムの存在を明らかにした(Experimental & Molecular Medicine 2020; 52: 166-175)。このメカニズムの解明が進めば、老人性難聴の治療につながる可能性があるという。

治療法の開発が進む遺伝性難聴と同じ発症メカニズム

 音が聞こえるという現象は、耳に入ってきた音が鼓膜を振動させ、その振動を内耳にある有毛細胞が神経に伝えることで生じる。これまで、老人性難聴の原因はこの細胞が加齢とともに劣化、もしくは減少することにあるとされてきた。それに対し、神谷氏らの研究チームはマウスを用いた検討で、有毛細胞は難聴初期には正常な状態で存在していることを明らかにした。

 研究チームは遺伝性難聴の研究で、内耳にあるギャップ結合複合体(音の振動を神経の電気信号に変換する働きを持つ)の崩壊が難聴の発症と関連することを既に解明している。そこで、老人性難聴とギャップ結合複合体との関連についてマウスを用いて検討したところ、ギャップ結合複合体は若年期には正常だが、老化初期には分断され構造が著しく崩れていることを確認した。また、複合体の構成成分である蛋白質も若年期の4割近くに減少していた。ギャップ結合複合体は細胞間の情報を伝達する重要な役割を持つため、その構造が崩れることは内耳機能や有毛細胞の活動低下にも直結する

 以上の結果から、老人性難聴は内耳にあるギャップ結合複合体が老化に伴い、分解・劣化することで発症すると考えられた。現在、研究チームは遺伝性難聴に対し内耳ギャップ結合をターゲットとした治療薬や遺伝子治療の開発を進めており、これらの治療法は発症メカニズムが共通している老人性難聴にも役立つ可能性があるとしている

(あなたの健康百科編集部)

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