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利尿薬は全て「同じ」?

日本高血圧学会で4氏がディベート

 2015年11月04日 17:00
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 利尿薬は積極的適応がない場合,高血圧治療の第一選択薬に位置付けられているものの,単剤よりはむしろ配合剤としての使用の方が頻度は高い。わが国で使用できる降圧利尿薬は限られるが,ほぼ同一として取り扱われており,米国のように比較されることはほとんどない。「降圧利尿薬はすべて一緒か?」のテーマで行われた第38回日本高血圧学会総会(10月9~11日,会長=愛媛大学大学院分子心血管生物・薬理学教授・堀内正嗣氏)のディベートでは,利尿薬は「同じでない」「同じ」の両面から,専門家4氏が議論した。

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「同じでない」立場から

優劣ではなく違いを考慮した対応を

 近畿大学内科学講座腎臓内科主任教授の有馬秀二氏は,欧米ではサイアザイド利尿薬よりサイアザイド類似薬の使用が提唱されている点に触れ「降圧利尿薬は異なる」と主張した。

 コホートの後ろ向き解析では,クロルタリドンはヒドロクロロチアジドに比べて心血管リスクが約20%低いことが報告された〔ハザード比(HR)0.79,95%CI 0.68~0.92,P=0.0016〕。その要因として,クロルタリドンはヒドロクロロチアジドとは異なり,半減期が長く降圧効果が高い,酸化ストレスを軽減し血管内皮機能を改善するなどの作用が考えられる。

 Michael E. Ernst氏らは,クロルタリドンはヒドロクロロチアジドに比べて24時間自由行動下血圧測定(ABPM )における夜間血圧を有意に低下させたと報告しており,クロルタリドンの強い降圧および心血管疾患抑制の効果が示された。

 またJNC-7作成委員のBarry L. Carter氏は,JNC-7完成後,他の2人の委員とともにサイアザイド利尿薬とサイアザイド類似薬との違いについて検討。エビデンスの不足から,JNC-7には明示できかなったが,両者は異なると結論したレビューを2004年に発表した。

 しかし,わが国ではクロルタリドンが使用できない。そのため有馬氏は,同じく類似薬であるインダパミドとクロルタリドンを併せたメタ解析の成績を紹介した。それによると,サイアザイド類似薬はサイアザイド利尿薬に比べて心血管イベントが12%有意に低く(P=0.049),心不全は21%有意に低かったという(P=0.023,Hypertension 2015; 65: 1041-1046)。この点について,Norman M. Kaplan氏は「優劣がつくエビデンスレベルではないが,違いがあると考えるべき」とコメントした (Hypertension 2015; 65: 983-984)。

 有馬氏は「どっちが優れているということではない。サイアザイド利尿薬とサイアザイド類似薬の違いを考えながら,対応していくべきではないか」と提言した。

投与量不十分で差が生じる可能性

 宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野准教授の北俊弘氏も「降圧利尿薬は異なる」とする立場から,わが国の実臨床に焦点を当ててその違いを述べた。

 同大学で利尿薬の使用が最も多かったのはインダパミドであり,次いでトリクロルメチアジドであった。ヒドロクロロチアジドは配合剤として処方されていた。利尿薬併用後の降圧度を比較したところ,インダパミドおよびトリクロルメチアジドに比べて,ヒドロクロロチアジド配合剤で大きかった,と同氏は指摘した(図1)

 わが国でのアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)・カンデサルタンとヒドロクロロチアジドの配合剤による降圧度は,カンデサルタン単独投与から配合剤への切り替えで有意に大きくなり,最大用量のカンデサルタンとの比較においても同じ結果であった(各P=0.01)。

 また,同氏らが検討したロサルタン・ヒドロクロロチアジド配合剤の有効性と安全性を検討したPALM-1試験によると,配合剤への切り替えによって約20mmHgの降圧が認められたという。

 同試験において,同配合剤を1年間継続できた患者207例を,さらに4年間(合計5年間)追跡し,そのまま継続した群と他剤に変更した群で心血管イベントを評価した。その結果,継続群(57%)における心血管イベントのハザード比(HR)は,他剤に変更した群に対し0.27(95%CI 0.10~0.69)であり,有意に低い結果であった(P=0.007)。

 降圧効果以外に,同配合剤によりNT-proBNPの低下作用や,ARB+カルシウム拮抗薬(CCB)との比較で左室心筋重量の有意な低下作用など,安定した降圧効果を示唆する国内データが示されている。

 わが国では利尿薬の多くは他剤と併用して用いられており,副作用への懸念から十分量が投与されているとは言い難い。その一方で,配合剤として用量が固定されているヒドロクロロチアジドは十分量が投与され,高い降圧効果が得られるとともに副作用も軽度にとどまり,最終的にヒドロクロロチアジドが高い効果を発揮するという逆説的な結果が見られた。

 同氏は「わが国での使用状況を考えると,インダパミドがかなり控え目に処方されている傾向がある」と指摘。「投与量の差が,利尿薬に"違いがある"ことに結び付いている」と述べた。

「同じ」立場から

適正用量なら差はない

  一方,東京大学病院検査部講師の下澤達雄氏は「高血圧治療ガイドライン2014」では,降圧薬の種類ではなく降圧度に言及していると指摘。利尿薬同士で降圧度を見た場合,いずれも差がないとして「利尿薬はどれも同じである」と述べた。

 コクランのシステマチックレビュー(2014年)によると,クロルタリドンは少量でも低下し,用量依存性がない(図2)。ヒドロクロロチアジドは増量することでクロルタリドンとほぼ同じ降圧効果が得られる。インダパミドはいずれの薬剤とも大きな差はない。

 つまり,これら3剤は適正に使用すれば降圧効果に遜色ない。カリウム(K),尿酸値などの副作用についても3剤間で大きな差はない。

 利尿薬の臓器保護効果を検討したhead to head試験はないが,併用薬や対照薬の位置付で,INSIGHT,ALLHAT(高リスク対象),PROGRESS(脳卒中),LIFE(左室肥大合併症),RENAAL,IDNT(腎障害),STOP-Hypertension,Syst-Eur,ANBP-2,ALLHAT,HYVET(高齢者)などの大規模ランダム化比較試験(RCT)が実施されてきた。いずれのRCTを含むJNC-7で採用されたエビデンスを見ると,レニン-アンジオテンシン系 (RAS)阻害薬投与による臓器保護効果が得られたが,その多くは利尿薬が併用されていた。

 米国の利尿薬単剤の市場データの推測から,併用頻度が最も高いのはヒドロクロロチアジドであると考えられたものの,同氏は「用量を適切に選べば薬剤間の差はないだろう」と述べた。

 したがって,サイアザイド利尿薬およびサイアザイド類似薬の効果に差はなく,クラスエフェクトが期待できると結論付けた。

限定的な使用下では同じ

 琉球大学保健管理センター准教授の崎間敦氏も,利尿薬による臓器保護効果をhead to headで比較したRCTがないことを踏まえ「利尿薬はいずれも同じ」という立場を表明した。

 わが国とは異なり,欧米のGLでは利尿薬の効果に差があるとしている。RCTで示された各利尿薬とプラセボとの降圧差を見たメタ解析によると,ヒドロクロロチアジドは5mgまでは用量依存性であった。一方,クロルタリドン,インダパミドでは明らかな用量依存性は見られない。降圧効果はクロルタリドンでより高いように見受けられるが,同薬を用いたRCTでは孤立性収縮期高血圧(ISH)例が多く含まれる可能性がある。

 そこでISHを除外して解析した結果,3剤の降圧レベルはほぼ同じになった。そのため降圧度を比較する際は,人種,性,年齢別に行うことが望ましいとされた(The Cochrane Library 2014, Issue 5)。

 24時間血圧をヒドロクロロチアジドとクロルタリドンで比較した検討では,クロルタリドンで降圧効果が高いと報告されているが(Hypertension 2006; 47: 352-358),日本人を対象とした臨床研究において,ヒドロクロロチアジドの24時間降圧効果が証明されており,特にdipper型でその有効性が示されている(Circulation 1999;100: 1635-1638)。PROGRESSサブ解析によると,アジア人では収縮期血圧(SBP)や心血管イベント抑制に対する効果が高いという(J Hypertens 2009; 27: 2437-2443)。

 日本人は白人に比べて食塩感受性遺伝子を高率に有するため,食塩摂取量の多い日本人の高血圧治療において,降圧利尿薬の使い方は重要となる。

 同氏がわが国における利尿薬の臨床試験をPubMedで検索したところ,ARBとの配合剤としてヒドロクロロチアジドを用いた試験が最も多く,診察室血圧,家庭血圧,夜間血圧のいずれも低下が見られた。

 同大学および関連病院における利尿薬の処方状況によると(2011年調査),約9,900例中,約11%に利尿薬が処方されており,主に配合剤としてヒドロクロロチアジドが処方されていた。

 前述の通り,各利尿薬で心血管イベント抑制に差があることを直接比較したRCTはなく,使用できる薬剤が限られるわが国の医療環境下では,いずれも同じと捉えるべきであろう,と同氏は述べた。

(田上玲子)

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