1. 薬物動態の変化を伴う薬物相互作用 はじめに
独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 杉山特別研究室 杉山雄一
東京大学医学部附属病院 薬剤部 鈴木洋史
2015年12月21日 15:00
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本記事は薬剤師向け情報誌「PharmaTribune」に掲載されたものになります。
複数の薬を使うことで,薬効の増強,減弱,思わぬ副作用などを生じた場合に,これを薬物相互作用と呼びます。日本で使われる治療薬は2,000 ~ 3,000種と言われ,その組み合わせで生ずる相互作用の可能性は,個々に列挙するならば天文学的な数字になります。薬物相互作用のこのような膨大さ, 複雑さに対して,個別の組み合わせを記憶して全ての注意喚起を図ることは不可能です。したがって,そのしくみを理解した上で,薬剤をグループ分けし,グループとグループの組み合わせでリスクを判断する考え方が必要です。ポスターおよびポケット版に記載されている相互作用に関連する薬のリストは,そのような考え方を積極的に支援するものです。このリストは私たちの調査・研究に基づき,ファーマトリビューン誌上で2009 ~2013年に毎年更新を加えて掲載したものです。2014年は休載しましたが,その間の大きな動きとしては,「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」の発表がありました。このガイドラインは,米国FDAや欧州EMAの同様な規制文書に対応して作成されたものですが,今後,わが国における相互作用の研究に大きな影響を与えるものと考えられています。このガイドラインの主な目的は,新薬開発時の研究において相互作用の可能性を見落とさず,また見い出した場合には,情報を医薬品添付文書の中で適切に表現することと言えます。そして,そのときに相互作用の強さを添付文書で表現する方法として,私たちが提唱してきた薬剤をグループ分けする考え方が積極的に取り入れられました。その意味で,これまで本連載の相互作用のマネージメントの方法とガイドラインの方向性は,大変よく似ていると言えます。