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2. 薬物代謝酵素による相互作用

千葉大学大学院薬学研究院 臨床薬理学研究室 樋坂章博
東京大学医学部附属病院 薬剤部 大野能之

2015年12月21日 15:00

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本記事は薬剤師向け情報誌「PharmaTribune」に掲載されたものになります。

1. 薬物代謝の意義

 経口薬は体内に吸収されて薬効を示した後に,一般には代謝を受けて活性を失い,体外へと排泄されます。経口薬の多くが体内で代謝を受ける理由は,体内に入るときには小腸粘膜を透過するために脂溶性が必要なのに対し,体内から排泄されるときには,胆汁中あるいは尿中に溶けなければならないので,今度は水溶性が必要となるからです。

 経口投与された薬剤は,小腸内腔から小腸粘膜を経て血液中に吸収され,門脈を通じて肝臓へと運ばれ,肝静脈を経て全身循環に入ります〈図1〉。薬物代謝酵素は小腸と肝臓に特に多く発現しており,そのために薬は全身循環に入る前にまずここで代謝を受け,これを初回通過効果(first pass effect)と呼びます。薬などの異物にとって,初回通過効果は体内に入る前の重要な関所となっています。関所を越えて全身循環に入った後は,多くの薬物は肝臓および腎臓で代謝・排泄を受けることで徐々に消失します。

 これらの薬物代謝の程度の変化は,薬効に大きな影響を与えます。したがって,併用薬により薬物代謝酵素が阻害,あるいは誘導されると,薬物相互作用が起こります。薬物相互作用は,初回通過時でもその後の全身循環からの消失過程でも両方起こりますが,そのうち初回通過時の相互作用は経口薬の場合のみに認められることに注意が必要です。そのために経口投与時と静脈内投与時では薬物相互作用の大きさが異なり,その違いは数倍に及ぶこともあります。一方で,初回通過効果の小さい薬剤は経口投与時と静脈内投与時の相互作用の程度の差は小さくなります。なお,以降では基本的に経口薬について解説します。

 薬物の体内動態には,代謝酵素の他にトランスポーターが重要な働きを示す場合があります。肝臓,腎臓,小腸における薬物の輸送については,「薬物トランスポーターの関わる相互作用」を参照してください。


図1 小腸と肝臓における初回通過効果と相互作用

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