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医師は薬剤コストを考えて治療すべきか?

 2016年07月11日 18:00

 がん治療の在り方を変える可能性があるとされる免疫チェックポイント阻害薬が上市され、その効果もさることながら、「想定外」の高薬価に衆目が集まっている。これまで医療コストについて、あまり言及してこなかった医師の意識にも変化が現れ始めている。国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の後藤悌氏は、7月4日に東京都で開かれた第12回肺がん医療向上委員会で講演し、「医師が医療コストを考えずに最善の治療をためらうことなく続けることがいいのか、あるいはeconomy based medicineを意識しなければならないのか、悩ましい問題だ。しかし、将来の世代に負担をかける現行制度では、いずれ限界がくるだろう」と述べた。

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薬の開発コストは過去10年で倍増

 新薬の薬価は類似薬の価格を参考に決められているが、類似薬がない場合は原価計算方式が取られる。製造(輸入)原価に販売費、営業利益、流通経費などを加えた額を、外国での価格を参考に調整する。昨年(2015年)12月に肺がんに対する適応が追加された免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ20mg瓶の場合、製品総原価9万4,620円、営業利益3万4,997円、流通経費9,457円、消費税1万1,126円で、15万200円という薬価が決定された。後藤氏は「新薬の開発コストは過去10年で倍増しており、それが薬価の高騰に反映されている」と語った。

 新薬が開発され成功する確率は2万5,482分の1、1剤の開発コストは1,000億円ともいわれる。同氏は「製薬業界はどの業種よりも効率が悪い。薬を開発して国などの承認を受けて、上市しない限り、開発コストは一切回収できない。また、市販後の安全性調査などの費用も製薬会社の負担であり、膨大なコストが必要となる」とし、新薬の薬価を低く抑え過ぎると、日本では新薬が導入されなくなるリスクが生じると指摘した。

 一方で、2014年の医療用医薬品の総額は薬価ベースで約10兆円。うち抗腫瘍薬は約7,500億円に上る。がん患者の1カ月当たりの薬価として一例を挙げれば、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブで約90万円、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブで120万円超、ニボルマブは体重に依存するが約300万円とされる。がん新薬の高騰は米国でも同様で、「financial toxicity(財政的な毒)」とも呼ばれている。

1年の"命の価値"は600万〜700万円

 薬剤の価値は価格だけでなく、生命予後とQOLの改善によって評価できる。これらを単一の指標で評価するのが、QALY(quality adjusted life year)である。患者のQOL評価を基に0 QALY(死亡)〜1 QALY(完全な健康状態で生存する1年)として算定される。では、完全な健康状態で1年間生存延長できるならばどの程度の支出が許容されるのか。英国の調査では、1 QALY当たり約400万〜600万円(20,000〜30,000ポンド)とされるが、日本のある調査では635万〜670万円だったという。

 海外では、米国や英国などでeconomy based medicineが主流になっているというが、日本ではこのような医療技術評価はなかなか根付かない。その理由として、後藤氏は「患者、医師、政策決定者の誰もが損をしない構造になっているからだ」と指摘。①国民皆保険制度の他に高額医療費の公的負担制度があり、患者の負担は最大でも月14万円に抑えられ、世界的に見ても安い②医師はEBM(evidenced based medicine)に基づき、最善の治療をためらうことなく提案できる③政策決定者は、医療が成長産業であるという幻想を持っており、それを捨てられない-などの背景が考えられるという。それらを踏まえて、同氏は「日本の将来の世代に大きな負担がかかり、現行の制度のままではいずれ立ち行かなくなる可能性がある」との懸念を示した。「それを回避するためにも、今後は、完治を目指したがん研究や医療費削減を目的とした研究などが必要だ」と強調した。

伊藤 茂

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