日本のアルコール医療の見直しを①
断酒だけでなく節酒から始めて治療対象の拡大を
2016年08月08日 07:10
米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)により、アルコール依存・乱用を物質使用障害として統合したアルコール使用障害という概念が提唱され、診断基準には従来なかった渇望の項目が組み込まれた。これにより、重症患者への断酒だけでなく軽症患者への節酒も治療選択肢となる。日本のアルコール医療は、アルコール依存症(以下、依存症)を対象に断酒を唯一の治療目標として約50年にわたり行われてきたが、長期断酒率は2割程度で、この治療成績はいまだ変わっていない。国立病院機構肥前精神医療センター院長の杠(ゆずりは)岳文氏はアルコール医療の問題点を指摘し、治療目標に節酒を積極的に取り入れ、軽症を含めてアルコール使用障害者全般を治療対象として拡大する必要があることを、第112回日本精神神経学会学術総会(6月2〜4日、会長=東京慈恵会医科大学精神医学講座教授・中山和彦氏)のシンポジウム「DSM-5時代のアルコール依存の診断と治療のゴール--断酒か飲酒量低減か--」で強調した。