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うつ病治療GL2016を公表

個別性を強調、児童思春期と睡眠障害の対応を追加

 2016年08月09日 13:25

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 日本うつ病学会(理事長=名古屋大学大学院精神医学/精神生物学主任教授・尾崎紀夫氏)の気分障害の治療ガイドライン(GL)作成委員会(委員長=九州大学大学院精神病態医学教授・神庭重信氏)策定の「日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ. うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016(以下、GL2016年版)」が、第13回同学会総会(8月5~6日、会長=尾崎氏)で公表された。2013年以来となる改訂であり、2013年の米国精神医学会の精神疾患の診断分類改訂第5版(DSM-5日本語版)の診断名に準拠した上で、多様化する病態に応じて治療場面を設定して円滑な診療を実践できることを目的とした「うつ病治療計画の策定」に力点を置き、社会的要望が高い「児童思春期のうつ病」と「うつ病の睡眠障害とその対応」に関する解説を新たに追加した。さらに、「精神科医療の普及と教育に対するGLの効果に関する研究:Effectiveness of GUIdeline for Dissemination and Education in psychiatric treatment」(EGUIDE研究)で、改訂版GLを用いた教育プログラムを実施し、適正な診療の普及を図っていくという。

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診断と治療方針の策定に力点を置く

 同学会総会の会期中に開催された記者会見で、尾崎氏は「GLは2012年に初版が発行された。当時、国内で医学的知見に裏打ちされていない『新型うつ病』の議論がなされ、DSMをチェックリストとして使用し安易に『うつ病』を診断するなど、診断上の混乱が生じたこと、わが国の独自の多剤処方、世界的に抗うつ薬の副作用が問題視されたことや、多くの新薬が実臨床の場に登場したことなどにより、適正なうつ病医療の指針を提供する必要性が生じたことからGLを策定することとなった。その後、2013年に小改訂版、そして社会的要請とDSM-5を受けて今回、GL2016年版を策定した」という。

 GL2016年版のうつ病の定義は、DSM-5の診断基準である「major depressive disorder」(『うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害』)に準拠した。しかし、うつ病は多様性が顕著な疾患カテゴリーであるため、GL2016年版ではDSM-5の診断基準に合致した場合、さらに患者の特性(個別性)を加味かつ鑑みた治療計画を立てて適切な診療を実践する重要性が強調されている。

 治療計画の策定に関しては、DSM-5の診断基準、他疾患との鑑別、併存疾患、重症度を捉えて患者の特性を明らかにした上で治療方針を立てることとしている。具体的には、把握すべき情報としては理学的所見、既往歴、家族歴、生活歴、病前パーソナリティ傾向、また、病前の適応状態、ストレス因子、睡眠状態、女性の場合は妊娠や家庭内外の負荷の程度、注意すべき兆候としては自殺念慮・企図、自傷行為、服薬状況、身体合併症、併存疾患などが挙げられている。また、治療開始に際しては治療場面の選択(外来または入院)、急性期治療や導入期、回復期や維持期における治療の進め方などについて記載されている。

児童思春期のうつ病では基礎的な介入が重要

 GL2016年版では、軽症・中等症・重症うつ病、精神病性うつ病の項目を設ける他、新たに「児童思春期のうつ病」と、「うつ病患者の睡眠障害とその対応」の項目が追加された。

 児童思春期のうつ病に関しては、診断が困難、かつ安易な抗うつ薬治療がかえって自殺リスクを高める可能性などマイナスに作用するとの問題点が指摘され議論が多いことから、GL2016年版では全例に行うべき基礎的な介入が強調されている。

 全例に行うべき基礎的な介入については、①成育歴を含めた患者背景と病態の包括的な理解②心理および疾患教育と環境調整③支持的な介入④家族への支援-が挙げられた。

 必要に応じて選択される治療は、6歳以上では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)セルトラリン、12歳以上では同クラスのエスシタロプラム、認知行動療法、対人関係療法、推奨されない治療は三環系・四環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が挙げられた。

依存性が高い睡眠薬は推奨せず

 睡眠障害への対応に関しては、睡眠薬への依存によりうつ病の治療がかえって長引くといった問題点が指摘されるなど議論が多いことからGL2016年版で追加された。睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群を合併している可能性を考えて十分な鑑別を行うこと、睡眠衛生指導や不眠症状を考慮した薬物療法、認知行動療法が推奨された。

 推奨されない治療としては、依存性が強く過量投与により呼吸器系や循環器系へのリスクが指摘されるバルビツール酸系薬(ベゲタミンなど)、非バルビツール酸系薬、同一作用機序を持つ多剤併用、過眠に対する中枢神経系刺激薬、特に注意すべき有害作用としては抗うつ薬による不眠の悪化、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の奇異反応、鎮静系抗うつ薬による心血管系への副作用が挙げられた。

ガイドラインが実臨床で役立っているのか EGUIDE研究で検証

 同学会では、GL2016年版を普及させるために、精神科医に対する教育プログラムを行ってGLの効果を検証するEGUIDE研究が今後行われる。GL2016年版のEGUIDE講習は、推奨事項に関する講義を受けた後、ケースディスカッションによりGLの実際の活用方法を丸1日かけて学ぶ。

 例えば、うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害における軽症例に関する講義に関しては、薬物療法や精神療法のエビデンスは十分でないことから、GL2016年版に沿った治療計画として、患者背景や病態の理解に努めた上で支持的精神療法と心理教育を基礎的介入として行うべきとしている。ケースディスカッションの例では、SSRI無効の重症うつ病患者に対し、診断のための評価、薬物療法無効例への治療方針、さらに治療方針の妥当性についてGL2016年版を活用してディスカッションし、治療計画を策定していく。

 大阪大学大学院連合小児発達学研究科准教授の橋本亮太氏は「EGUIDE研究は、統合失調症薬物治療GLやうつ病治療GL2016年改訂版に関して全国22施設で教育プログラム(EGUIDE講習)を10月から開始し、10年間にわたって研究を行う(関連記事)」とし、「2013年のDSM-5に準拠してうつ病全体の治療について対応可能となったGL2016年版は、学会ホームページで無料ダウンロードをできるようにしている。さらに、EGUIDE研究により適切な精神科医療を広く普及させていくとともに、GLが実臨床で役立っているのかどうかを検証していきたい」としている。

右から神庭重信氏、尾崎紀夫氏、橋本亮太氏

(金本 正章)

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