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バーチャル歩行訓練で転倒予防

通常のトレッドミルに比べ転倒回数が大幅減

 2016年08月18日 07:05

イメージ画像 (Lancet 2016年8月11日オンライン版)

 バーチャルリアリティーの要素を加えたトレッドミルによる歩行訓練が高齢者の転倒予防に有効だったとするイスラエルやベルギー、イタリアなど5カ国の多施設共同研究グループが実施したランダム化比較試験(RCT)の成績がLancet2016年8月11日オンライン版)に発表された。転倒リスクの高い高齢者282例を対象とした同試験では、トレッドミルの前方に設置されたモニターに映し出された歩道を、水たまりやハードルなどの障害物を乗り越えながら歩く訓練に取り組んだ高齢者では、通常のトレッドミル歩行訓練に取り組んだ高齢者と比べて実生活で転倒する頻度が減ったという。

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ゲーム感覚で転倒を回避する動きを訓練

 今回のRCTでは、高齢者の転倒を予防するためのトレッドミルを用いた歩行訓練にバーチャルリアリティー・システムを搭載し、その有効性が検証された。同システムは、トレッドミルの前方にモニターとカメラを設置。カメラが足の動きを捉え、リアルタイムでモニター上に再現される仕組みだ(写真)。画面上の歩道を進むと水たまりやハードルなどの障害物に遭遇し、それを乗り越える必要があるなど、ゲーム感覚で実生活での転倒を回避するための動きを訓練できるよう設計されている。

 同試験の対象はベルギー、イスラエル、イタリア、オランダ、英国に住む60~90歳の高齢者で、介助なしで5分間歩行できるが過去6カ月間に転倒した経験が2回以上ある282例。このうち130例はパーキンソン病で、43例に軽度認知障害(MCI)があった。

 同グループは、このうち154例をバーチャルリアリティー・システム搭載のトレッドミル歩行訓練に6週間取り組む群(VR+トレッドミル群)に、148例を通常のトレッドミルによる歩行訓練に取り組む群(通常トレッドミル群)にランダムに割り付けた。いずれの訓練も1回当たり45分で、試験対象者が訓練に取り組んだ回数は6週間に平均16回だった。

 その結果、VR+トレッドミル群では転倒回数(平均)が訓練開始前6カ月間の11.9回から訓練終了後6カ月間には6.0回へと有意に減少した。一方、通常トレッドミル群でも同期間の転倒回数(同)が10.7回から8.3回へと減少したが、有意ではなかった。

特にパーキンソン病患者で大きな予防効果

 今回のRCTでは、運動機能だけでなく認知機能にも働きかけるバーチャルリアリティーの要素を加えた歩行訓練が高齢者の転倒予防に有効であることが示された。この結果を受け、研究グループのメンバーでイスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのAnat Mirelman氏は「高齢者の転倒の多くは、つまずいたり、障害物を乗り越えられないことで発生する。高齢者が障害物を乗り越えにくくなる要因の1つとしては、『運動の計画』、『注意の分割』、『実行機能』、『判断力』といった認知機能が加齢に伴い低下することが考えられる。しかし、一般的に高齢者の転倒予防を目的とした介入は筋力やバランス、歩行を改善することだけに照準を合わせたものがほとんどなのが現状」と指摘している。

 また今回のRCTでは、VR+トレッドミル群の中でも特にパーキンソン病の高齢者で転倒回数が大きく減少していた。これについて、同グループは「パーキンソン病患者では訓練開始前から転倒回数が多かったこと、バーチャルリアリティーの要素がパーキンソン病で低下していた認知機能や運動機能に好影響を及ぼしたことなど、さまざまな要因があるのではないか」と考察。ただ、今回のRCTはサブグループ間の差を明らかにするには検出力が不十分としている。

 なお、トレッドミル装置にバーチャルリアリティーの機能を搭載するための追加費用は約4,000ユーロ(約45万円)だという。今後、より長期の試験で有効性を検証する必要はあるとしながらも、同グループはこの認知機能と身体機能の2つの要素を組み合わせた歩行訓練について「高齢者やパーキンソン病などの身体の動きが制限される疾患がある患者の転倒を予防し、安全に歩行できるようにする訓練として、スポーツジムやリハビリテーション施設、介護施設などに導入する価値があるかもしれない」と期待を寄せている。

岬りり子

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