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妊娠中の飲酒が原因"FASD" に新GL

米国立アルコール乱用・依存症研究所

 2016年08月25日 07:15

イメージ画像 (c)Thinkstock/Getty Images ※画像はイメージです

 米国立衛生研究所(NIH)傘下の米国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)は8月10日、胎児性アルコール・スペクトラム障害(fetal alcohol spectrum disorders;FASD)の診断に関するガイドライン(GL)を改訂したとプレスリリースで発表した。FASDは妊娠中に飲酒した母親から生まれた子供の顔面などの奇形や発育遅延、中枢神経の問題などを連続的に捉える概念。1996年に米国医学研究所(IOM)が診断分類を定め、2005年にNIAAAが招集した専門家グループがそれに基づく診断GLを公表していた。今回、同グループによる約1年の作業期間を経て改訂GLがまとめられた。GLの全文はPediatrics2016; 138: e20154256)に掲載されている。

続きを読む(読了時間:約 2 分) 

最新データ反映した4つのカテゴリーの診断基準示す

 NIHのプレスリリースによると、FASDは低IQや低体重、低身長といった発育遅延、短い眼瞼裂や薄い上唇、人中の溝が浅いといった特徴的な顔貌(写真)、脳の構造的異常、神経行動学的障害などに関係するとされ、遺伝的要因を除けば世界の発達障害の原因として最多を占めるという。

Pediatrics 2016; 138: e20154256)

 胎児期のアルコール曝露による発達への悪影響については1960年代後半から報告があったが、その後、胎児期のアルコール曝露は多様な障害に関係することが徐々に明らかになり、FASDと呼ばれるようになった。1996年には米国医学研究所(IOM)がFASDの診断カテゴリーとして胎児性アルコール症候群(fetal alcohol syndrome;FAS)、部分的胎児性アルコール症候群(partial fetal alcohol syndrome;PFAS)、アルコール関連神経発達障害(alcohol-related neurodevelopmental disorder;ARND)、アルコール関連先天異常(alcohol-related birth defects;ARBD)の4つのカテゴリーを確立。2005年にはNIAAAが招集した専門家グループがこれに基づく初のFASDの診断GLを策定し、公表した。

 約1年をかけて策定された今回の改訂GLでは、この4つのカテゴリーに基づいた診断は踏襲する一方、胎児期のアルコール曝露に関する研究の参加者約1万例のデータの分析結果などが考慮された。

 このうち、FASの診断基準は以下の通り。

胎児期アルコール曝露の確認が取れているか否かにかかわらず、A〜Dの全てを満たしている場合にFASと診断

  1. 特徴的な顔貌(①短い眼瞼裂②薄い上唇③人中の溝が浅い―のうち2つ以上が該当)
  2. 出生前(胎児期)および/または出生後の発達遅延(身長および/または体重が10パーセンタイル以下)
  3. 脳の発達が不十分、異常な形態形成、あるいは神経生理学的異常(①頭囲が10パーセンタイル以下②脳の構造的異常③繰り返す非発熱性の発作―のうち1つ以上が該当)
  4. 神経行動学的障害(3歳以上:認知機能障害または行動障害がある場合、3歳未満:発達遅延のエビデンスがある場合)

 一方、ARNDに関しては、「胎児期アルコール曝露を確認」「神経行動学的障害」の両方を満たすとともに、認知機能障害を伴っているか、認知機能障害は存在しなくても行動障害を伴う場合に診断されるとしている。

「胎児期アルコール曝露」の定義を明示

 また、改訂GLでは「胎児期アルコール曝露」の定義を「妊娠中の飲酒量が1週当たり6杯以上のペースで2週間以上」「妊娠中に一度に3杯以上飲む機会が2回以上」「妊娠中にアルコールに関連した社会的あるいは法的な問題を経験」などのうち1つ以上を満たす場合とし、従来に比べ明確な基準が記されている。

 なお、GLでは「FASDはさまざまな領域の専門家から成る集学的アプローチによる診断、評価が望ましい」としているが、FASDリスクが高いと考えられる胎児期にアルコールに曝露した小児を診る機会が最も多いと考えられるのは小児科医であることから、その役割は極めて重要だと強調。将来の胎児期アルコール曝露予防に向け母親に指導するという役目も果たすべきだとしている。

米国の有病率は1.1〜2.5%

 GLによると、米国では小児におけるFASおよびPFASの有病率は1,000人当たり10.9〜25.2人(1.1〜2.5%)とする地域住民を対象とした調査結果が報告されている(Drug Alcohol Depend 2015; 155: 118-127)。一方、南アフリカからは多様な人種を含む地域住民の調査でFASDの有病率が1,000人当たり135.1〜207.5人(13.5〜20.8%)と極めて高いことが示されている(Clin Exp Res 2013; 37: 818-830)。なお、WHOでは欧州、アジア、アフリカ、北米の幾つかの国におけるFASDの有病率を明らかにするための調査を計画しているという。

 女性の飲酒率の高まりなどを背景にFASDの有病率の高さを問題視する米国小児科学会(AAP)も、昨年(2015年)11月、飲酒の量や時期を問わず、妊娠中のアルコール摂取で安全なレベルはない」などとするガイダンスを発表している(Pediatrics 2015; 136: e1395-e1406)。

岬りり子

変更履歴:誤字を修正しました(2016年8月25日)

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