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卵子前駆細胞で体外受精の成功率向上目指す

自家ミトコンドリアを卵子に注入

 2016年08月30日 15:35
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 自家の卵子前駆細胞のミトコンドリアを卵子に注入し、体外受精の成功率を高めるAUGMENT療法が不妊治療専門の医療機関グループであるIVF JAPANで今年(2016年)から開始された。同グループ理事長でHORACグランフロント大阪クリニック院長の森本義晴氏は、同治療法により2人が妊娠に成功したことを8月29日、同治療法を開発したOvaScience社(米国)とIVF JAPAN主催のプレスセミナーで紹介した。

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卵巣生検が25人に行われ、2人が妊娠

 AUGMENT療法は卵巣皮質から抽出した卵子前駆細胞(EggPC細胞)のミトコンドリアを顕微授精の段階で卵子に注入し、卵子が持つ既存のミトコンドリアを増補して体外受精の成功率を高める治療法。卵子前駆細胞は卵巣表面にある未成熟な卵細胞で、OvaScience社が2004年にマウスで発見した。健全なミトコンドリア内部構造を保持し、体外でより多くのエネルギー(ATP)を産生するとされている。ミトコンドリアは精子機能や着床、受精と胚分割など生殖において重要な役割を担うとされ、ミトコンドリアをMⅡステージ(成熟卵)のブタの卵子に注入した実験では、生存卵数は100%だったという(Yamochiら、2016)。

 また、同治療の安全性確認のための動物実験では、マウスの胎児の体重が正常に増加し、生後のマウスにおける行動評価では吸啜能力やストレス・恐怖に対する反応などが正常だった。

 森本氏によると、IVF JAPANでは2016年に同治療を開始し、25人(27~46歳)に卵巣生検が実施された。獲得された卵子前駆細胞は平均17万5,261で、胚作製は12人、胚移植は6人で行なわれ、27歳と33歳の2人が妊娠に成功したという(2017年2月分娩予定)。日本での本格的な展開は2017年開始の予定。なお、OvaScience社では2015年以降、AUGMENT療法により世界で約30人の子供が生まれたとしている。

高額な費用と対象症例の明確化が課題

 治療の流れは、医師からの説明と夫婦のインフォームドコンセント、腹腔鏡による卵巣生検(3~4日の入院)、卵巣組織凍結、卵子前駆細胞抽出、卵子前駆細胞からミトコンドリアを抽出、顕微授精で精子とミトコンドリアを卵子に注入―と約3カ月を要する。

 今後は、妊娠中の経過や出産時の状況、児の身体的・精神的発達の状況を把握し、対象症例の明確化を行っていくという。また、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班に参加し有効性のメカニズムを検討する他、他実施施設への教育・啓発を通して医療サービスの質の維持をしていきたいと森本氏は述べた。

 なお、OvaScience社では卵子の量を増加させる「OvaPrime療法」の臨床研究、ホルモン注射を使用しない次世代の体外受精「OvaTure療法」の前臨床研究を行っているという。

 同氏は「本治療法は現在250万円程度と、通常の体外受精の5倍ほどの費用がかかるが、これまで趣味や夢などを諦めて治療に打ち込んできても、なすすべがなかった夫婦を救う治療法となる可能性がある。有効性のメカニズムは明らかになっていないことから、今後はメカニズムの解明やコストダウンを進めていきたい」と展望した。

林 みどり

  

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