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欧州で脂質管理GL改訂、米と一線画す

Treat to Targetを維持

 2016年09月02日 07:25

 欧州心臓病学会(ESC)と欧州動脈硬化学会(EAS)は8月27日、両学会が合同で策定した脂質異常症管理ガイドライン(GL)をEur Heart J2016年8月27日オンライン版)などに発表した。2011年以来、5年ぶりの改訂。この間に米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)が発表した心血管疾患(CVD)予防GLでは脂質値の目標値が撤廃されたことが話題を呼んだが、今回発表された欧州のGLでは従来通りLDLコレステロール(LDL-C)の目標値を明示。米国のGLとは一線を画し、Treat to targetが適切とする方針が打ち出された(関連記事)。また、改訂GLには目標値を達成するための薬物療法におけるPCSK9阻害薬の位置付けも示された。

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目標値の設定で管理の個別化しやすく

 改訂GLでは、従来通りCVDや糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、家族性高コレステロール血症のない40歳以上の無症候の男女に対し、SCORE(Systematic Coronary Risk Evaluation)などの評価ツールを用いて致死性CVDの10年リスクを算出することを推奨。全体的な心血管リスクの程度は、既にCVDや高血圧などの危険因子を伴う糖尿病、進行したCKDがある患者やSCOREによる致死性CVDリスク10%以上の者が該当する「極めて高リスク」からSCOREによる致死性CVDリスクが1%未満の「低リスク」まで4段階に分類している。2011年のGLからの変更点は、腎機能によるリスク分類が細分化されたこと。以前はGFR60mL/分/1.73m2未満が「極めて高リスク」に分類されていたが、今回のGLでは同30mL/分/1.73m2未満「極めて高リスク」に、同30~59mL/分/1.73m2未満が「高リスク」に分類されている。

 心血管リスクの程度とLDL-Cに応じた介入のタイミングとその内容は表1の通り。2011年のGLではLDL-C 70mg/dL未満でも心血管リスクが「高リスク」の場合には生活習慣への介入に加え薬物療法も考慮可能とされていたが、今回のGLでは「脂質への介入は不要」となるなど、一部に変更がある。

表1. 心血管リスクとLDL-C値に基づいた介入戦略


Eur Heart J 2016年8月27日オンライン版)

 また、今回のGLで特に注目されるのは、従来通りLDL-Cの管理目標値が維持されたことだ(表2)。これは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、スタチンが有益な4つの患者群に対して高強度か中強度のスタチン治療を行うFire and Forget方式を提唱した2013年のAHA/ACCによるGLとは一線を画す。この点について、GLでは「ベースラインのLDL-C値が高いか低いかにかかわらず、全ての高リスク者に高用量のスタチンを使用すべきとするAHA/ACCの推奨を支持するランダム化比較試験(RCT)はない」と指摘。一方で、LDL-Cが低下するほどCVDリスクが減少するとのシステマチックレビューやLDL-Cをどこまで下げると利益が見込めなくなるのか、あるいは害が生じるのかは明確にされていないことなどを考慮。少なくとも心血管リスクが極めて高い場合には、可能な限りLDL-Cを低下させることが適切ではないかとの見解を示している。

表2.CVD予防のための治療ターゲットと目標値


Eur Heart J 2016年8月27日オンライン版)

 さらに、食事療法や薬物療法によるLDL-Cの低下度には個人差があるため脂質管理では個別化アプローチが求められるが、目標値を設定することで「心血管リスクの低減に向けた具体的な対策が分かりやすくなる」 「患者と医師の間でのコミュニケーションが深まる」 「治療へのアドヒアランスも高まる可能性がある」ことなども、今回の決定に至った理由として挙げられている。なお、「極めて高リスク」 「高リスク」では、目標値に加えて「脂質低下薬を使用しない状態でLDL-Cが目標値を超えている場合にはLDL-Cを50%以上低下させる」とする治療目標も併記されている。

脂質検査は空腹時から非空腹時へ

 薬物療法に関しては近年登場したPCSK9阻害薬の位置付けが注目されるが、同薬を使用した治療の対象について「最大耐用量のファーストライン治療(スタチン)やセカンドライン治療(エゼチミブなど)でもLDL-C高値が続く極めて高リスクの患者あるいはヘテロ接合体FH患者(および一部のホモ接合体FH患者)の他、LDL-C高値が続いているがスタチンに忍容性のない患者が候補となる」と記されている。高コレステロール血症の薬物療法に関する推奨は表3の通り。

表3. 高コレステロール血症治療で推奨される薬物療法


Eur Heart J 2016年8月27日オンライン版)

 さらに、今回の改訂に伴う主な変更点の1つとして、脂質検査を空腹時に行う必要性がなくなったことが挙げられる。これは、採血が空腹時でも非空腹時でも検査結果(総コレステロール、LDL-C、HDL-C)やリスク予測能に有意差はなかったとする報告を踏まえたもの。ただ、糖尿病患者ではLDL-Cが過小評価される可能性があるとの報告があることなどから、糖尿病や重度の脂質異常症、高トリグリセライド血症の患者には空腹時採血による脂質値の検査が勧められるとしている。なお、欧州動脈硬化学会(EAS)は今年4月、欧州臨床化学・臨床検査連盟(EFLM)と合同で脂質値の測定を目的としたルーチンの血液検査を非空腹時に行うことを推奨するコンセンサスステートメントを発表している(関連記事)。

PREDIMED試験など踏まえ食事の重要性を強調

 この他、両学会のプレスリリースによると、改訂GLでは従来よりも食事の重要性が強調されているという。その背景には地中海食により心血管イベントのリスクが30%低下したとする2013年に報告されたスペインのRCT、PREDIMED試験などの成績(関連記事)がある。GLの生活習慣に関する章には、LDL-Cの低下や脂質プロファイルの改善で「望ましい食品」「控えめに摂取すべき食品」「たまに少量だけ摂取すべき食品」をまとめた表を掲載。例えば、穀類のカテゴリーで「望ましい」のは全粒穀物、「控えめに摂取すべき」なのは精製された穀物が原料のパン、精製された米、パスタ、ビスケット、コーンフレーク、「たまに少量だけ摂取すべき」なのはペイストリー、マフィン、パイ、クロワッサンなどが挙げられている。一方、料理に使う油やドレッシングのカテゴリーで「望ましい」のは酢、マスタード、ノンオイルドレッシング、「控えめに摂取すべき」なのはオリーブオイル、植物油(パーム油やココナツ油を除く)、ソフトマーガリン、サラダドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、「たまに少量だけ摂取すべき」なのはパーム油、ココナツ油、バター、ラード、ベーコンの脂などが例示されている。

(岬りり子)

  

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