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9月第2木曜日は骨髄増殖性腫瘍の日

医師と患者双方の立場から報告

 2016年09月07日 11:30

 希少疾患への診療を進歩させるには、医療者の尽力だけではなく、その疾患の認知度を高め、多くの人に理解を深めてもらうことも重要である。8月25日に東京都で開かれた、製薬メーカーのシャイア-・ジャパン主催のメディアセミナーでは、希少疾患の1つである骨髄増殖性腫瘍(MPN)の啓発を図る「MPNの日」が毎年9月の第2木曜日に制定されたことを機に、同疾患の専門医と患者が講演。専門医からはMPNの発症メカニズムや分類、特徴的な症状、診療の現状などが、患者からは患者会の活動内容や患者の立場から感じる問題点などが報告された。

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本態性血小板血症、真性多血症

若年発症も見られる

 MPNは血液造血幹細胞に異常が起き、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞が著明に増殖し、腫瘍を生じる疾患の総称であり(図1)、本態性血小板血症(ET)、真性多血症(PV)、骨髄線維症(MF)の3つに分類される。

 山梨大学血液・腫瘍内科教授の桐戸敬太氏は、それら3つのうち、ETとPVについて解説した。日本血液学会の疾患登録データによると、わが国における両疾患の推計発症率は、ETが10万人当たり0.7人、PVは0.4人であり、比較的若年での発症も見られるため、若年患者のQOLを下げる要因になっているという。また、患者の死因としては血栓や白血病への移行、他のがんなどが多く挙げられるとした。

図1.MPNが骨髄に及ぼす影響

「赤血球や血小板が多い」との患者情報には要注意

 両疾患の診断の契機となるのは、外来患者の発言による場合も少なくなく、「過去の健診や検査で赤血球や血小板が多いと言われた」などの話を耳にした場合は、より正確な診断や適切な管理が求められる。ET、PVの診断は現在、世界保健機関(WHO)の診断基準を用いることが一般的であり、ETでは①血小板が増えている②骨髄病理所見がある③他のMPNが否定できる④JAK2/MPL/CALR遺伝子の変異がある-の4項目、PVでは①赤血球が増えている②JAK2遺伝子の変異がある③骨髄検査所見がある-の3項目を満たす場合とされている。

 なお、骨髄の調査には、細胞の密度、巨核球の数や形、線維化の程度などを明らかにして疾患のタイプの決定や予後予測を可能にし、遺伝子変異の解析には、変異パターンによる予後や薬剤の奏効率の違いを把握するという意義があり、最適な治療のためには重要なプロセスであるという。ただし、桐戸氏は「現時点においてJAK2遺伝子の変異解析は保険適用されておらず、CALRやMPL遺伝子の変異は、ごく一部の施設でしか解析できない」と、両疾患の診断における問題点を指摘した。

低リスク群、高リスク群に分けて薬物治療

 また、桐戸氏は両疾患が動脈系血栓や静脈系血栓の発症リスクを高める点や、MF、急性骨髄性白血病に移行するケースが少なからず見られる点、多様な全身症状を伴い、QOLを低下させる点などが挙げられると述べ、これらを踏まえた治療法について説明した。

 まず薬物療法の前提として、血栓リスクを高める喫煙の禁止や合併する糖尿病、高血圧、脂質異常症の管理などが必要であるとした。薬物療法においては、年齢が60歳以上であるかどうか、血栓症の既往の有無によってリスクを評価すべきであり、どちらかに該当する場合は高リスク群、いずれも該当しない場合は低リスク群に分類されるという。

 低リスク群に対しては、ETでは抗血小板薬の使用、PVでは同薬の使用に加えて瀉血も選択されると紹介した。一方、高リスク群に対してはこれらの治療に加えて骨髄系細胞の減少を目指す薬物療法が実施されるとし、ETでは代謝拮抗薬のハイドロキシウレアや血小板産生抑制作用のあるアナグレリド、PVではハイドロキシウレアやリン酸化酵素であるJAK1/2を阻害するルキソリチニブが用いられると解説した。

 同氏は両疾患の治療について、「管理の主体は血栓の予防であり、白血病や二次がん、全身症候のリスクもあるため、慎重な観察が求められる」とまとめた。加えて、周産期や周術期の患者においては、適切な管理を行わなければ流産や死産、血栓、出血リスクが高くなるため、産科医や外科医との情報共有が肝要であることも強調した。

骨髄線維症

貧血、脾腫、急性白血病をもたらす

 順天堂大学内科学血液学講座主任教授の小松則夫氏は、MFについて解説した。同疾患の患者は現在までにわが国で700例が登録されているとみられ、男女比はおよそ2:1で男性が多く、年齢は中央値が66歳ほどで40歳未満の発症は極めてまれであるという。

 MFは、腫瘍化した巨核球から線維芽細胞の増殖を刺激する液性因子が分泌されて骨髄が線維化することで発症し、主な症状としては、脾腫や貧血、急性白血病などが挙げられる。特に造血の場が骨髄から脾臓に移行する髄外造血によって起こる脾腫は顕著な所見を呈することもある。初発症状としては、検査値異常の他に貧血や腹部症状が多く見られ、血液学的特徴として、同疾患の末梢血塗抹標本を観察すると、涙滴状赤血球が確認される。

骨髄検査や遺伝子解析が診断の鍵握る

 診断には病歴の聴取や理学的所見の確認をはじめさまざまな手段があるが、小松氏によると特に重要なのは骨髄検査と遺伝子解析である。骨髄検査については、MFの場合、骨髄の液体部分が減少している、いわゆる"ドライタップ"の状態であるために骨髄穿刺は難しく、骨髄生検を実施する必要がある。また、MFの患者では約80〜90%にJAK2、MPL、CALRのいずれかの遺伝子が変異を有しているため、遺伝子解析も有効な診断方法といえる。

予後予測モデルでリスクを分類し、症状に応じて治療

 治療に当たっては、MFの進行度が患者ごとに大きく異なることから、予後予測モデルが使われるという。IWG-MRT(International Working Group for Myelofibrosis Research and Treatment)が作成したこのモデルはDIPSS plusと呼ばれ、年齢や持続する症状(体重減少、発熱、盗汗)、貧血の指標などの予後因子から疾患を低リスク、中間-1リスク、中間-2リスク、高リスクに分類できる。小松氏はこのモデルを用いたリスク別治療アルゴリズムを示し(図2)、具体的な症状に対する治療法を紹介した。

図2.DIPSS plusによるMFのリスク別治療アルゴリズム 

(図1,2ともメディアセミナー発表資料より作成)

 脾腫についてはハイドロキシウレアや脾摘、放射線照射などが挙げられるものの、いずれも対症療法であり、持続性が低い、効果が一過性である、術後に深刻な合併症が生じる可能性があるなど、さまざまな問題点が指摘されている。また、貧血症状に対しても対症療法として男性ホルモン製剤である蛋白同化ステロイドや子宮内膜症治療薬でもあるダナゾールが用いられる。

 MFの根治療法としては同種造血幹細胞移植があるが、同氏は「適応は65歳以下で中・高リスクと位置付けられる患者に限られ、移植に関連する合併症の発症率や死亡率が比較的高いため、対象者の決定には慎重を要する」と注意を促した。

 さらに、近年はMFに特有の遺伝子変異が認められる点に着目した新規治療薬の開発も進められているといい、その例としてJAK2阻害薬に触れた。同薬は、細胞内のさまざまな分子活性に関与し、血球増加や骨髄線維化をもたらす活性化経路であるJAK-STAT経路を構成するJAK2を阻害する働きがあり、脾腫や諸症状を改善することで患者のQOLを高める効果が期待できると述べた。

より多くの情報、より広い交流を

 このセミナーでは、ETの患者であり、わが国における骨髄増殖性腫瘍患者・家族会(MPN-JAPAN)の事務局長でもある小瀬良克也氏が同会の設立経緯と活動内容や「MPNの日」制定の理由と目的について語った。

 同氏は2000年9月にETと診断され、以降約15年にわたりハイドロキシウレアの服用を続けており、これまでメーリングリストでMPN患者やその家族と交流や情報交換をしていたという。しかし、より広く患者・家族同士でサポートできる体制をつくり、不安な日々を過ごしている患者に安心材料を提供するとともに、全国の人々にMPNとその患者を知ってもらおうとMPN-JAPANを設立したと説明した。

 同団体はこれまで海外でミーティングやカンファレンスを開き、国内でも交流会の開催や疾患を解説する小冊子の作成、配布などの活動を行ってきたが、「MPNの日」の制定もその一環と位置付けられる。同氏は「メーリングリストなどを介したネット上のつながりだけでなく、患者と家族が実際に交流できる場も設けたい」との意向も示した。 

診断時の適切な説明で患者の不安を払拭

 小瀬良氏は自らの闘病生活を振り返りつつ、MPNの症状は個人差が大きく、解明されていない部分が多いことから、「診断時、この病気の症状や治療方針、使用薬剤などについて説明がきちんとなされていない、あるいは医師により説明が異なる場合がある」と指摘し、「そういった説明により、患者やその家族がとても不安になってしまう。医師には時間をかけて説明を尽くし、患者の不安を取り除いてほしい」と要望した。

 さらに、「MPNは脳梗塞、脳出血、心筋梗塞の発症に伴う検査や健診後の再検査で診断されるケースが多く、就職や就労、若い女性患者ならば妊娠にも大きな影響を及ぼしうる。医師はもちろん、国民の皆さんにもこの病気をもっと知ってほしい」と訴えた。

(陶山 慎晃)

  

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