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iPS細胞を用いて三次元的心臓組織を構築

 2016年09月28日 07:10

 iPS細胞のヒトでの実用化が期待されているが、京都大学iPS細胞研究所・増殖分化機構研究部門教授の山下潤氏はiPS細胞を用いた心臓再生治療について先頃東京都で開かれた生命科学フォーラム(後援:大正製薬)で講演。自身の開発したヒトiPS細胞由来心臓組織シートが移植によりシートの生着と血管新生の促進が認められたことから、現状で心移植しか治療法がない重症心筋症に対する治療の1つとして有望であることを示した。

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生着率の高い細胞シートを開発

 拡張型心筋症や虚血性心筋症などの重症心不全の根本治療は現在、心臓移植しかないが、日本における移植は年間30件程度でドナー不足は著しい。こうした中で期待されるのが再生医療だが、とりわけ、実用化が近いとされるヒトiPS細胞由来の心臓細胞シートに注目が集っている。重症心不全の心臓では、拍動の源である心筋細胞が失われるだけでなく、心臓を構成している多種類の細胞が失われることにより組織構造が壊れ、その結果として機能低下を来す。このため、山下氏は「細胞の移植効果を高めるためには、心筋細胞だけでなくその他の心臓を構成する細胞も補い、心臓組織構造として再構築することが望ましい」と指摘した。これまで、心臓に直接、心筋細胞を注入移植する方法などが取られていたが、生着率が低かった。

 同氏らが開発した細胞シートは、ヒトiPS細胞から心臓を構成する細胞を分化誘導する方法により、心筋細胞、内皮細胞、壁細胞を分化させ、それら3種類を混合した細胞シートを何枚も積み重ねた多層体のもの。これを直接心臓に貼り付ける。この細胞シートは、長期にわたって心臓に生着する上、3種類の細胞が混ざることで「サイトカインの分泌をよくするパラクライン効果が見られる」(山下氏)という。

 細胞シートを積層化する技術としては、ゼラチンハイドロゲル微粒子を細胞シート間に挟み込み、隙間を確保することで、低酸素細胞死を防ぐことを可能にした。シート自体を厚くすれば、生着率が高まると考えられるが、普通に細胞シートを積み上げると、間に挟まれた細胞が酸素不足のため壊死してしまう問題があった。

動物実験で心機能改善効果を確認

 ラットの心筋梗塞(MI)モデル実験では、ヒトiPS細胞由来心臓細胞シートを3枚積層化後移植したところ、移植後1カ月で9例中4例で生着し、心筋梗塞部の平均24.7%(最大44%)を再生心筋がカバー。生着した移植細胞領域内に宿主ラットの心臓から伸長した血管網が形成されていることが観察された。心機能は偽手術に比べ164%アップした。現在、ブタのMIモデルで検証中で、2018年には臨床試験に入りたいとしている。山下氏は「この細胞シートは他の臓器・組織にも幅広く応用可能で、三次元の高次組織形成を容易にすることで、再生医療に貢献できるだろう」と述べた。

伊藤 茂

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