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ESC、がん治療の心毒性管理で提言

腫瘍と循環器の専門医の連携が重要

 2016年10月05日 07:15

 がん治療後の心毒性の管理では、腫瘍専門医と循環器専門医の連携が重要である。欧州心臓病学会(ESC)臨床ガイドライン作成委員会委員長でスペイン・University Alcala de Henares、University Hospital Ramón y CajalのJosé Luis Zamorano氏らは、がん治療と心毒性に関するポジションペーパー2016を作成、「がん治療開始前に腫瘍専門医と循環器専門医が密接に連携して患者の心臓の状態を正確に把握し、定期的診断に基づいた適正な処置を行う必要がある。心保護効果については有酸素運動にも目を向けるべき」とEur Heart J2016; 37: 2768-2801)に報告した。

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無症候期の早期発見が患者を救う

 がんサバイバーの増加に伴い、化学療法や放射線療法の心毒性に起因する心血管疾患(CVD)が注目され、腫瘍専門医と循環器専門医との連携によるcardio-oncologyの重要性が認識され始めている。しかし、現状では、がん治療関連の副作用を長期的に予測できないことがCVDの過小/過剰診断や、がん治療への不適切な評価の一因となっている。

 ESCはがん治療に起因する心血管合併症を①心筋障害および心不全(HF)②冠動脈疾患(CAD)③弁膜症④不整脈(とりわけQT延長作用を有する薬剤により誘発される不整脈)⑤動脈性高血圧⑥血栓塞栓症⑦末梢血管疾患および脳卒中⑧肺高血圧症⑨心膜の合併症―の9カテゴリーに分類し、それぞれについて病態生理学的考察ならびに管理法の検討を行っている。

 がんの化学療法では複数薬剤の使用、放射線療法の併用による相互作用が心血管予後予測をいっそう困難にしている。心毒性のうち、発現頻度や重症度の観点から最も重要なものの1つは左室機能不全およびHFであり、アントラサイクリン系薬をはじめHER2 標的薬、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)など多くの薬剤が誘因となりうる。特に、アントラサイクリン系薬の場合は治療後数年経過後に顕症化する慢性心毒性が問題となるが、心筋損傷進行の初期段階である無症候期に発見・治療すれば心機能の良好な回復につながると報告されている。

治療開始前のリスク評価が鍵

 心毒性のリスク因子としては、心筋症の現症、心毒性を有するがん治療の既往、年齢〔18歳未満、高齢(トラスツズマブでは50歳超、アントラサイクリン系薬では65歳超、など)〕、50歳未満でのCVD発症の家族歴、動脈性高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、生活習慣の問題(喫煙、大量飲酒、肥満、運動不足)を挙げている。がん治療開始前(ベースライン)に、これらのリスク因子を評価するとともに、既往や心機能をチェックし、無症候性の心血管障害を見落とさないようにすべきである。

 ベースラインにおける高リスク群などでは心臓保護のための措置を検討する()。

表. 化学療法による心毒性を軽減させるための工夫

Eur Heart J 2016; 37: 2768-2801)

 またベースラインでのリスクが低くても、アントラサイクリン系薬の総投与量が250~300mg/m2を超える見込みの場合は心臓保護薬の投与を検討してよいとしている(ただしエビデンスは得られていない)。

 高用量のアントラサイクリン系薬を含む化学療法レジメンでトロポニンの上昇が認められる場合にも、心臓保護薬の投与開始を検討する。

 心毒性の検出には、心エコー、心臓核医学検査、心臓MRI、心バイオマーカー〔トロポニンⅠ、高感度トロポニンⅠ、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)〕の測定が提案されている。

 化学療法施行期間中あるいは施行後は左室駆出率(LVEF)の定期的モニタリングが必須であり、必要に応じてHF治療薬投与を検討する。LVEFが無症候性に低下しているケースは多く、注意が必要である。症候性のHFが認められる場合には現行のHFガイドラインに沿った対応を試みる。

強めの有酸素運動の効果にも期待

 同ポジションペーパーでは、がん患者に対する心臓保護目的で非薬物的介入として有酸素運動を強く推奨している。生活習慣の全般的な改善(健全な食生活、禁煙、定期的運動、体重管理)、特に有酸素運動は化学療法によって誘発される心毒性の予防および軽減に有望であるとしている。

 化学療法施行下および同治療後に運動を行うことにより、心肺機能および心血管機能、体組成、免疫機能、筋力や柔軟性、ボディーイメージや自己評価などが改善し、化学療法完遂率も高まる。加えて、吐き気や疲労感、疼痛などの副作用の頻度や程度が低下し、ストレス・抑うつ・不安が軽減し、入院期間の短縮にもつながる。

 ウオーキングやサイクリングなどで検討したところ、強めの運動がより効果的であるとの結果が示された。ただし、疲労困憊するような過度な運動には効果はないようだ。

 長期がんサバイバーが増加している中、CVDリスクについての周知徹底とサバイバーに対する定期的検診は欠かせない。ESCは、がん治療関連CVDの解明と並行して、サバイバーに対する長期的サーベイランス体制の構築が重要としている。

(古川忠広)

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