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ホーム »  ニュース »  2016年 »  学会レポート »  次世代の降圧薬③アルドステロン分泌抑制薬

次世代の降圧薬③アルドステロン分泌抑制薬

CYP11B2発現を抑制する既存の化合物

 2016年10月20日 07:10

 日本には高血圧患者が4,000万人存在すると推定され、未治療の患者を含めると3,000万人程度で血圧コントロールが不十分とされる。その中には、3剤以上の降圧薬を内服してもコントロール不良な治療抵抗性高血圧や原発性アルドステロン症が含まれる可能性もあり、新規降圧薬の開発が期待される。東北大学大学院分子内分泌学分野教授の菅原明氏と同分野助教の伊藤亮氏は、約2万種類の化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、既存薬の中からアルドステロン合成酵素遺伝子の発現を抑制する化合物を同定し、マウスで降圧効果が確認されたと第39回日本高血圧学会(9月30日~10月2日)で報告した。

CYP11B2 の安定発現株を用いたスクリーニング

 既存の降圧薬には直接的レニン阻害薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などさまざまな種類があるが、現時点では副腎からのアルドステロンの合成や分泌を直接抑制する薬剤は存在しない。そこで、菅原氏らはアルドステロン産生の律速酵素であるアルドステロン合成酵素遺伝子CYP11B2 に着目。アンジオテンシンⅡ、カリウムなどの転写因子を介してCYP11B2 の転写活性が亢進し、アルドステロンが分泌されることから、これら転写因子のシグナル伝達を抑制する新規化合物の同定を目指した。

 まず同氏らは、ヒト副腎H295R細胞を用いてCYP11B2 転写活性を鋭敏に感知することが可能なCYP11B2 プロモーター(転写開始に関与する遺伝子の上流領域)安定発現株を作製し、変動係数、シグナル強度の比、Z'値(アッセイ系の質の目安)による評価により、ハイスループットスクリーニングが行えることを確認した。この細胞株を用いて東京大学創薬機構コアライブラリー(9,600種類)、同既存薬ライブラリー(1,979種類)、東北大学薬学部ライブラリー(5,562種類)の約1万7,000種類の化合物を対象にスクリーニングを行った。東北大学は、スクリーニング設備を整備した文部科学省最先端研究基盤事業の6拠点の1つで、化合物ライブラリーを活用した創薬研究を行っている。

高血圧モデルマウスで血圧が低下

 今回は東京大学創薬機構の既存薬ライブラリー(1,979種類)から、CYP11B2 発現を制御する化合物をスクリーニングした結果が報告された。

 スクリーニングの結果、22種類の化合物がヒットし、うち7種類の化合物が既知の治療薬、15種類の化合物が副腎に対する影響が全く知られていない薬剤だった。この15種類の化合物のうち1つの化合物は、H295R細胞株のアンジオテンシンⅡによるCYP11B2 発現応答とアルドステロン合成を阻害すること、高血圧モデルマウス(つくば高血圧マウス)において対照群と比べて体重を変化させることなく有意に血圧が低下したことが確認された。

 以上から、菅原氏は「既存薬ライブラリーからCYP11B2 の発現を抑制する化合物の候補が見いだされた。また、本系を用いて新しい機序の降圧薬の開発を進めることが可能と考えられた」と述べ、「特にカリウム刺激によりCYP11B2 の発現を抑制するような薬剤が発見されれば、原発性アルドステロン症に対する新規治療薬の開発につながる可能性が高い。既存薬と機序が異なることから、難治性高血圧患者への治療薬としても期待が持てる」と展望した。

(林 みどり)

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