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自家鼻中隔軟骨細胞で膝軟骨損傷を治療

スイスで患者10例に世界初の臨床試験

 2016年10月28日 07:10
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 自家鼻中隔軟骨細胞から作製した軟骨グラフトを用いて膝軟骨損傷患者の膝機能を安全に修復できる。関節軟骨損傷の治療についてはさまざまな模索が続けられているが、決定的な治療法は存在しない中、スイス・University Hospital BaselのMarcus Mumme氏らは、10例の膝関節軟骨損傷患者に鼻中隔軟骨細胞を培養して作製した軟骨グラフトを自家移植する世界初の臨床試験を実施。その結果、患者の症状が改善し、移植24カ月後にはグラフト移植部位が本来の膝関節軟骨に近い構造で再生していることが確認された」とLancet2016; 388: 1985-1994)で報告した。

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鼻軟骨細胞の関節環境適応能に着目

 毎年、欧米では約200万人が外傷や事故による関節軟骨損傷と診断されている。関節軟骨はひとたび損傷を受けると自然修復が難しく、二次性の変形性関節症を生じて関節の全置換術が必要となることも多い。臨床的には疼痛、関節機能障害、QOLの著しい悪化が生じ、社会経済的負担も大きい。

 治療法としては、関節鏡下でのデブリドマン、マイクロフラクチャー(軟骨組織下の骨髄を刺激することで幹細胞を誘導して軟骨様組織の再生を促す)、モザイクプラスティー(自家骨軟骨移植)、他家骨軟骨移植、多血小板血漿(PRP)療法などがあるが、特に軟骨損傷面積が大きい場合の効果は限定的で、骨軟骨移植の場合にはドナー関節への負担も問題となる。そこで、近年では自家培養軟骨細胞移植の研究が盛んになりつつある。

 同研究チームは腫瘍後の鼻翼再建で鼻中隔軟骨を使用した実績を持つが、今回、なぜ鼻中隔に着目したのかについてBasel UniversityのIvan Martin氏は「鼻中隔組織の一部を採取しても鼻の機能や形状が損なわれる恐れがなく、鼻中隔軟骨細胞の培養は比較的容易である上、同細胞は関節環境に適応する可塑性を有しており硝子軟骨組織の再生能力が高齢者でも高い」と説明している。

実施可能性・安全性に問題は生じず

 今回の試験では、自家鼻中隔軟骨細胞から作製した軟骨グラフトを用いて膝軟骨損傷患者の膝機能を安全に修復できるかが検討された。

 対象は、外傷後、大腿骨顆あるいは大腿骨滑車部にInternational Cartilage Repair Society(ICRS)基準でgradeⅢまたはⅣの全層性の軟骨損傷(損傷部面積2~6cm2)が認められる症候性患者10例(19~52歳、うち男性8例)。症状発現後6カ月~16年が経過していたが関節の変性は生じていなかった。

 Mumme氏らは、まず、局麻下でのパンチ生検により患者の鼻中隔軟骨組織(直径6mm)を採取。単離した軟骨細胞に成長因子を加えて2週間培養後、コラーゲン膜上に播種してさらに2週間培養した。こうして作製した軟骨グラフト(30×40×2mm)を適切な大きさにカットし、ミニ関節鏡下で軟骨損傷部に移植した。

 主要評価項目は治療法自体の実現可能性および安全性とし、副次評価項目は患者の自己評価に基づく臨床スコア(術前および24カ月後)およびMRIによる再生組織の質的評価(6カ月後および24カ月後)とした。

 10例全例で、採取した鼻軟骨細胞から軟骨グラフトを作製することは可能で、鼻軟骨細胞数、細胞外マトリックス中のグリコサミノグリカンおよびⅡ型コラーゲンの濃度に問題はなく、移植作業に十分に耐えうる構造的安定性を有していた。

 鼻中隔の組織採取部位には有害反応は生じず、膝関節修復部位にも24カ月以内に移植術に起因する有害反応は生じなかった(術後の疼痛および腫脹を除く)。

膝関節軟骨本来の組織に近づく

 自己評価に関してはInternational Knee Documentation Committee (IKDC)のスコア(膝機能全般の評価)とKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)の5つのサブスケール(疼痛、膝の他の症状、日常生活における膝機能、スポーツやレクリエーション時の膝機能、膝関連のQOL)を使用した。その結果、経過観察中に移植膝の別部位に新たな軟骨損傷が見つかり処置を受けた1例を除き、術後24カ月における全スコアが術前より有意に改善していた()。

図. 術前と術後24カ月の臨床スコアの変化

Lancet 2016; 388: 1985-1994)

 MRIによる評価では、欠損部の修復程度にはばらつきが認められたが、移植片の組織学的組成は本来の関節軟骨に近いものとなっていた。再生組織中のグリコサミノグリカン濃度は移植6~24カ月後に有意に増加しており、修復部位の組織が関節軟骨本来の硝子軟骨組織に向けて成熟しつつあることを示していた。水分やコラーゲンの量も正常な軟骨組織に近づいていた。

 同試験は現在も継続中で、最終的には25例までの検討が予定されている。Mumme氏は「今後、大規模対照試験で長期的な有効性を厳密に評価し、既存の治療法との比較検討も踏まえた上でルーチンに臨床導入できるかどうかを検討する必要がある」と指摘。同時に、退行変性の初期段階あるいは膝以外の関節への適応拡大についても検討を開始する予定だという。

(古川忠広)

  

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