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抗うつ薬試験のプラセボ反応は上昇していない

日・英共同で「二十年来の常識」覆す

 2016年11月14日 07:00
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イメージ画像 (c)Getty Images ※画像はイメージです

 抗うつ薬治験におけるプラセボ反応率は1970年代以降は上昇傾向にあることが"常識"とされてきたが、今回、「プラセボ反応には20年以上変動がない」という、これまでの常識を覆す研究結果が報告された。京都大学大学院健康増進・行動学分野教授の古川壽亮氏らはUniversity of Oxford、Technische Universität München、University of Bernと共同で、単極性大うつ病患者を対象とした抗うつ薬の二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューを行い「過去25年間のプラセボ反応率は35~40%の範囲で安定的に推移しており、年々上昇しているわけではない」との解析結果をLancet Psychiatry2016; 3: 1059-1066)で報告した。

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従来研究のデータと解析手法に疑問

 これまでの定説では「抗うつ薬臨床試験におけるプラセボ反応率は1970年代以降上昇している」とされてきた。その根拠となったのは2002年に公開された論文(JAMA 2002; 287: 1840-1847、そこでは2000年までの抗うつ薬に関するプラセボ対照試験75件が検討されていた。その後の複数の研究でも同様の解析結果が得られていたが、プラセボ応答率の上昇は臨床試験の"失敗"につながる由々しき現象である。そこで、その原因の探索が試みられてきたがいずれも特定には至らなかった。

 古川氏らは、従来研究ではデータセットと解析に用いた統計学的手法の双方に問題があったのではないかと推測。成人大うつ病患者の急性期治療で用いられる第一世代・第二世代抗うつ薬21剤に関するRCT 252件(1978~2015年、論文未発表の44件を含む)を対象にシステマチックレビューを行い、研究年(研究終了年)とプラセボ反応率との関連、患者背景や試験デザインとの交絡の可能性について、あらためて検証した。これら252件の試験でプラセボ群に割り付けられた患者総数は2万6,324例であった。

1991年以降は35~40%で安定推移

 まず、プラセボ反応〔ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)-17のベースラインからの50%以上の減少と定義)〕率を対数変換し研究年ごとにメタ解析により統合した。

 全期間を通してみると研究年ごとのプラセボ反応率は0~70%と極めてばらつきが大きかったことから(異質性指標I2=74.1%)、古川氏らは、次に、ある時点を起点とする急激な変化(構造変化:structural break)が生じていないかをどうか、structural break testを用いて検証。その結果、1991年に構造変化が生じていることが示された。

 以上を踏まえ、1991年以降の193試験に絞って研究年とプラセボ反応率との関連を検討したところ、抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ反応率の平均は35~40%の範囲内で安定的に推移していることが示された。研究年が5年新しくなることによる相対リスク(RR)は1.00(95%CI 0.97~1.03、P=0.99)であった。

研究期間の長さと研究参加施設数が有意な交絡因子

 さらに、多変量解析の結果、研究期間の長さと研究参加施設数が、研究年とプラセボ反応率との関係に影響する有意な交絡因子であることが示された。研究期間が1週間延長することによるRRは1.03(95%CI 1.01~1.05)、多施設試験を単施設試験と比較した場合のRRは1.32(同1.11~1.57)であった。

今後の精神薬理学の展開にも影響

 さらに古川氏らは、前述のJAMA2002論文の解析結果が再現可能かどうかを2000年までのデータのみを用いて検証(対象研究132件)。その結果、1978~2000年に研究年が5年新しくなるごとのプラセボ反応率のRRは1.10(95%CI 1.05~1.15、P<0.0001)で、プラセボ反応率の経時的上昇傾向が確認された。

 その要因をメタ回帰分析により検討した結果、試験参加施設数、投与量の固定または変動、試験期間が影響を及ぼしていることが示された。そこで、これらの変数を調整したところ、研究年とプラセボ反応率との関連は有意ではなくなったという。

 同氏らは「今回のシステマチックレビューにより、これまでの"世界の常識"とは異なり、抗うつ薬臨床試験におけるプラセボ反応率の平均は25年以上にわたり安定的に推移していることが示された。この新たなエビデンスは今後の学術文献解釈、精神薬理学の展開に大きなインパクトを与えるものだ」と結んでいる。

(古川忠広)

  

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