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キノコの成分がうつや不安を軽減

進行がん患者対象、2件の小規模RCT

 2016年12月13日 07:10

イメージ画像 (c)Getty Images ※画像はイメージです

 マジックマッシュルームに含まれる幻覚成分として知られるシロシビンが、進行がん患者の抑うつや不安といった症状の軽減に有効であることを示す2件のランダム化比較試験(RCT)の結果がJ Psychopharmacol(2016; 30: 1165-11801181-1197)に掲載された。いずれも対象例が約30~50例と小規模だが、シロシビンの単回投与で迅速な効果が得られ、かつ約半年間にわたってその効果が持続したという。進行がん患者の多くはうつや不安の症状に苦しんでいるが、現在使用されている抗うつ薬では即効性が期待できず、副作用の問題もある。こうした中、今回2件のRCTで有効性が示されたことを受け、新たな治療選択肢としてシロシビンを有望視する専門家の論評も同誌に掲載されている。

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精神療法との併用で治療反応率58~83%

 報告された2件のRCTはいずれも二重盲検クロスオーバー試験だが、介入方法や規模などが異なる。このうち1件は、米・New York University School of MedicineのStephen Ross氏らが実施したRCTで、対象は不安や抑うつの症状を有する進行がん患者29例(平均年齢56.3歳、範囲22~75歳)。62%がステージⅢまたはⅣのがん患者で、90%が適応障害の診断基準を満たしており、59%に抗うつ薬または抗不安薬の使用歴があったが、試験登録時に向精神薬を使用している例はなかった。また、90%が白人で、女性が62%を占めており、55%に幻覚薬の使用歴があった。

 このうち14例を精神療法に加えてシロシビン0.3mg/kgを投与し、その7週間後にナイアシン250mgを投与する群に、15例を精神療法に加えてナイアシン同用量を投与し、7週間後にシロシビン同用量を投与する対照群にランダムに割り付けた。平均追跡期間は6.5カ月間だった。

 その結果、シロシビンまたはナイアシンの投与後1日目、2週目、6週目、7週目(いずれもクロスオーバー前)の全ての時点において、ナイアシンを最初に投与した対照群に比べ、シロシビン群で不安および抑うつの評価スコア〔HADS※1、ベック抑うつ質問票(BDI)、STAI※2など6つの評価尺度のスコア〕が有意に改善していた。

 また、シロシビン群ではベースラインと比べ、これらの評価スコアの有意な改善が8カ月後まで維持されていた一方、対照群では7週目にシロシビンを投与するまではベースラインと比べて有意な改善は認められなかった。さらに、投与から7週後のうつ症状への治療反応率は、対照群の14%に対してシロシビン群では83%に上った。一方、不安への治療反応率はそれぞれ14%、58%だった。

 この他、シロシビン群では副次的アウトカムの実存的な苦痛(existential distress)※3やQOLの有意な改善も認められたという。

「神秘体験」が症状評価スコアに強く関連

 なお、シロシビンなどの幻覚薬を使用すると「神秘体験(Mystical Experience)」が引き起こされることが知られているが、その体験を定量化するMEQ30※4で評価した結果、対照群に比べシロシビン群では神秘体験の発生率が有意に高く、神秘体験と抑うつや不安の評価スコアとの間に強い関連が認められたとしている。

 安全性に関しては、重篤な有害事象は両群で認められず、ベンゾジアゼピン系薬や抗精神病薬などを追加する必要性が生じた例もなかった。シロシビンの乱用や中毒に至った例もなかった。シロシビンに関連した有害事象で最も頻度が高かったのは、臨床的に問題とならない血圧上昇および心拍数の増加(76%)で、次いで頭痛または片頭痛(28%)、悪心(14%)が続いた。精神医学的な有害事象としては、一過性の不安(17%)、一過性の精神病様症状(7%)が見られた。

 以上から、Ross氏らは「生命を脅かすがんの患者における不安や抑うつに対し、シロシビン中用量の単回投与は、精神療法と組み合わせることで迅速に、強力で持続的な臨床的ベネフィットをもたらすことが示された」と結論。一方で、小規模で対象者の約9割は白人であることなどから今回の結果を一般化することはできないとして、引き続き安全性と有効性の確立に向けたさらなる研究が必要との見解を示している。

高用量で投与後5週時点の治療反応率は92%

 もう1件のRCTは米・Johns Hopkins University School of MedicineのRoland R. Griffiths氏らが実施した。対象は、抑うつや不安を有する進行がん患者51例。同試験では、シロシビンを低用量(1mgまたは3mg/70kg)投与し、5週間後に高用量(22mgまたは30mg/70kg)投与する群と、高用量を投与してから5週間後に低用量を投与する群にランダムに割り付け、本人および医師、地域の観察者(家族や友人など)の3者がGRID ハミルトンうつ病評価尺度(GRID-HAMD)やBDIなどを用いて気分や姿勢、行動などについて評価した。

 その結果、高用量シロシビン群では抑うつや不安の主観的評価と客観的評価のいずれのスコアも大幅に改善し、投与から5週時点の治療反応率は低用量群の32%に対して高用量群では92%に達した。また、同時点における寛解率も低用量群の16%に対して高用量群では60%に上った。さらに、対象例の80%で高用量シロシビンによる抑うつや不安の軽減効果が6カ月の追跡期間を通じて維持された。なお、同試験でも神秘体験と抑うつや不安の評価スコアとの間に有意な関連が認められたとしている。

60年代にはLSDの有効性示すRCTの報告も

 Ross氏らによると、がんの入院患者で不安や抑うつに苦しんでいる割合は30~40%に上るとの報告があり、これらの症状はがん患者の治療アドヒアランスの低下や医療サービスを利用する頻度の増加、予後の悪化、QOLの低下、社会的機能の低下、障害の増加、自殺率の増加などに関連することが指摘されているという。また、こうした症状には通常、薬物療法や心理社会的な介入が行われることが多いが、介入の効果については一致した研究結果が得られていないとしている。

 こうした中、同氏やGriffiths氏らが今回着目したのが、5-HT2A受容体拮抗作用を有するセロトニン作動性の幻覚薬であるシロシビンだ。末期がん患者の精神的苦痛に対するセロトニン作動性幻覚薬の効果や安全性については、1960年代から1970年代にかけて主にリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)を用いた複数の研究が実施され、その一部で有効性が示されていた。しかし、1970年代にセロトニン作動性幻覚薬に対する法規制が強化されたことで研究が途絶えたという。その後、約40年の年月を経て、2000年代に再びがんを含む致死性疾患患者を対象としたシロシビンやLSDの臨床試験が実施され、いずれも精神的苦痛の軽減に有効であることが示唆されていた。

 今回のRoss氏やGriffiths氏らによるRCTに関して、複数の専門家が同誌に論評を寄稿しているが、総じてシロシビンを新たな治療薬として有望視する意見が目立つ。米・Columbia UniversityのHerbert D. Kleber氏は、2件のRCTから一致した結果が得られたことから、「シロシビンの単回投与によって、がんに関連した不安や抑うつの軽減で相当な、かつ持続的な効果が得られたとする結果の頑健性(robustness)は高いと考えられる」と評価(2016; 30: 1211)。また、同施設のJeffery A. Lieberman氏らは、別の論評でがん患者の精神的苦痛だけでなく、さまざまな精神疾患において、シロシビンを含む幻覚薬が果たしうる役割について検討を進める価値があるとの見解を示している(2016; 30: 1198-1200)。

 一方で、Lieberman氏らを含む複数の専門家がシロシビンによる効果のメカニズムが不明であることを指摘しており、今後より多様な患者を対象とした、さらなる研究が必要と強調している。

※1  Hospital Anxiety and Depression scale

※2  State Trait Anxiety Inventory

※3 生きる意味や目的、生きる気力などを失ったり、希望を持てなくなることによる苦痛

※4 30-item Mystical Experience Questionnaire

(岬りり子)

  

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