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子宮移植の臨床研究、慶大が初の申請へ...年内5人に〔読売新聞〕

yomiDr. | 2017.01.10 15:05

 病気などで子宮がない女性に、妊娠・出産を目的に第三者の子宮を移植する子宮移植の臨床研究を、慶応大のチームが2017年内に学内の倫理委員会に申請する方針であることがわかった。海外では出産例もあるが、国内で実施されれば初めて。

 子宮移植は赤ちゃんを得ることが目的で、心臓や肝臓の移植のように本人の生命維持のためではない。

 このため、倫理委員会や関連学会の承認を得て、先天的に子宮がない「ロキタンスキー症候群」という病気の女性を対象に3年間で5人に移植する計画だ。子宮は母親など親族から提供を受ける。将来は子宮頸(けい)がんなどで子宮を失った人も対象になる可能性がある。

 チームは16年2月、産婦人科や小児科など学内の13の診療科・部門でつくる作業部会を設置。医師や看護師、移植コーディネーターなど多職種が毎月1回、国内初の子宮移植に向け、技術的な課題や出産後のケアなどの議論を重ねている。

 子宮移植を巡っては、赤ちゃんを得るために提供者に大きな身体的・精神的な負担を与えていいのか、拒絶反応を防ぐために投与する免疫抑制剤が赤ちゃんに悪影響を及ぼさないかなどの課題が指摘されている。

 このため、チームは学内の倫理委員会のほか、日本産科婦人科学会や日本移植学会にも研究計画を提出し、安全面や倫理面での問題がないか判断を求める。

 子宮移植は00年にサウジアラビアで初めて実施された。スウェーデンで14年9月、子宮を移植された女性が世界で初めて出産に成功。少なくとも同国で5人の出産が報告されている。子宮を提供する側、される側、生まれた子どもいずれも死亡の報告はない。

 慶応大は13年、東大などと共に、子宮を摘出して再移植したサルの実験で出産に成功したと発表した。

 チームの 阪埜(ばんの)浩司・慶応大専任講師は「今回の研究は、生まれつき子宮がない人に選択肢を提供するのが狙いだ。技術的には十分可能だと考えているが、この医療をどう考えるか、広く社会での議論が必要だ」と話している。

【子宮移植】 生まれつき子宮がなかったり、がんなどの病気で子宮を摘出したりした女性に子宮を移植し、あらかじめ体外受精させた受精卵を戻して出産させる技術。対象となりうる女性は、国内に20〜30歳代だけで推計6万〜7万人。胎児を育てる子宮の機能は閉経後も残り、中高年でも提供者になりうる。

倫理・安全面広い議論必要

 臓器移植法は、心臓や腎臓など救命や生活の質の向上につながる臓器を対象にしている。だが子宮移植は、妊娠・出産を目的とした新しい移植だ。

 子宮がない女性の福音になる可能性がある一方、倫理面の課題は少なくない。

 同法の対象外のため、生体からしか移植できない。生命維持に関わらない子宮提供で、健康な人の体にメスを入れることには議論の余地がある。肝臓や腎臓の移植では、提供者の死亡例も起きている。希望する女性の母親などが、周囲から「提供すべきだ」と重圧を受ける恐れも指摘される。

 技術面では、拒絶反応を防ぐために使う免疫抑制剤の影響が懸念される。添付文書では妊婦への投与は禁忌とされている。実際には腎臓などを移植後に出産したケースは多数あるが、赤ちゃんに異常があれば、問題になる可能性もある。

 体外受精した受精卵を別の女性の子宮に入れて産んでもらう代理出産は、出産のリスクを第三者に負わせるなどの問題があり、国内では学会が認めていない。

 子宮がない女性が、子どもを持つための選択肢はどうあるべきなのか。安全面や倫理面の議論を深めてほしい。

(2016年1月10日 読売新聞・医療部 加納昭彦)

ヨミドクター

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