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注目ワード「ケトン体」、これだけは知っておきたい

日本抗加齢医学会セミナー

 2017年05月16日 18:00

 ケトン体は、糖尿病患者で血中濃度が高まると糖尿病性ケトアシドーシスの原因となることから「悪者」のイメージが強いが、近年は生体への好影響の面が注目されている。抗老化作用、アルツハイマー病の治療など神経保護作用、さらにはSGLT2阻害薬による心血管死の減少効果でもケトン体がキーワードとして語られている。日本抗加齢医学会エデュケーショナルセミナーで国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センターセンター長の植木浩二郎氏がレビューしたケトン体の最新情報を紹介する。

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「神経過興奮の惹起」を起こさない

 ケトン体は、飢餓や長時間の運動の際にブドウ糖の代わりにエネルギー源となる。脂肪細胞が分解して血中に放出した脂肪酸を材料に、肝臓で合成される。

 ケトン体の血中濃度は、通常食で数十μMだが、半日の絶食では200~300μM、2日程度の絶食、90分程度の激しい運動、ケトジェニックダイエット(低炭水化物・高脂肪食)では1~2mM、恒常的な飢餓・絶食や糖尿病性ケトアシドーシスでは6~8mMになるという。

 たびたび取り上げられるケトン体の作用の1つが抗老化作用。ラットでは間欠的絶食により寿命が延長することが知られており、「幾つもの機序が考えられるが、少なくとも一部はケトン体の上昇で説明できる」と植木氏は述べた。ケトン体が遺伝子レベルに働き抗酸化酵素の発現を高める機序が分かっており、このことも抗老化作用を支持すると考えられる。

 ケトン体は難治性てんかんに対する治療食として有用であることが知られているが、アルツハイマー病など神経変性疾患への神経保護作用も指摘されている。アルツハイマー病では脳でのブドウ糖の取り込みが低下しており、ケトン体が代替エネルギーとして役立つため効果があると推測されている。

 また、最近では別の機序も提唱されている。神経細胞は、アストロサイトでブドウ糖が代謝された乳酸もエネルギーとして活用する。この代謝経路を阻害するとてんかんが抑制されることが分かり、ブドウ糖が神経過興奮を惹起していると考えられる。ケトン体はこの代謝経路を経ずに神経細胞のエネルギーとして活用されるので、神経過興奮を起こさないとみられる。

SGLT2阻害薬の心血管死抑制にも関与

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが心血管死を減少させることが臨床試験で確認された(関連記事;糖尿病治療薬の新時代)が、ここでもケトン体が鍵になっている。心不全状態の心筋はブドウ糖を主なエネルギーとしているが、糖尿病ではブドウ糖の取り込みを促すインスリン産生が不足して十分に取り込めない。SGLT2阻害薬を投与すれば、血中ケトン体濃度が上昇、代替エネルギーを供給できる。一方、SGLT2阻害薬投与でヘマトクリットが上昇する現象が知られており、エネルギー産生に必要な酸素の供給も高めるのでこれも利点として働く。

 このようにケトン体には生体へのさまざまなメリットがある一方で、植木氏は、重篤な症状である糖尿病性ケトアシドーシスに触れ、「糖尿病患者、特にインスリン分泌の少ない方はケトジェニックダイエットを行う際には糖尿病性ケトアシドーシスに注意が必要。専門家の管理下で行うべき」とした。

牧野勇紀

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