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広がる「民間救急救命士」の活用

今年5月に「病院前救護統括体制認定機構」が発足

 2017年07月13日 06:30
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 救急救命士の資格を有しているが、消防機関には所属していない「非消防」の民間救急救命士が増加している。国士舘大学大学院救急システム研究科教授の田中秀治氏は、今年(2017年)5月に「病院前救護統括体制認定機構(PMO)」が発足し、こうした民間救急救命士を活用するために病院前救護統括指示体制構築の試みが始まったことを第20回日本臨床救急医学会(5月27~28日)で報告した。

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救急救命士資格者であれば特定行為の実施は可能

 現在、わが国における救急救命士の有資格者は約5万6,000人に達しているが、そのうち消防本部や消防団などの消防機関に所属しているのは約3万人にすぎない。

 そこで、救急救命士活動に関与する団体(日本医師会、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本救護救急学会、日本旅行医学会、全国救急救命士教育施設協議会、日本救急医療財団、日本救護救急財団、日本ライフセービング協会など)が中心となって、昨年8月に「救命救急士の社会的利活用検討協議会」を立ち上げ、消防機関に属さない救急救命士の有資格者(以下、民間救急救命士)の社会的利活用について検討を重ね、今年3月末に答申を公開した。

 同協議会は、今年5月1日に新たに「病院前救護統括体制認定機構」として一般社団法人化し、今後は同機構が民間救急救命士の生涯教育や民間救急救命士を雇用する施設の認定を担うことになったという。

 田中氏によると、1991年に施行された「救急救命士法」について数年前から勉強会を開催し、法律専門家を交えて医師、救急救命士らと検討を重ねてきた。その結果、法律専門家は「救急救命士法は資格法であり、同法で規定されているのは救急救命士の救急救命処置の対象と活動の場、医師からの指示、救急処置記録保存、救急救命士が搬送する車両としての救急用自動車などである」と指摘。同法では職業を限定した処置の実施について一切規定されていない。そこで、民間であっても救急救命士資格者でかつ要件を満たしていれば、傷病者の搬送、処置の実施は可能ではないかを所管庁に確認したところ、「救急救命士法に規定されている通りに救急救命処置を行い、かつ正しくメディカルコントロール体制が構築されるのであれば資格法としては問題にはならない」との回答を得た。

 救急救命士の利活用協議会で具体的に議論された内容は、さらに一歩踏み込み、救急救命士法や関連法を遵守しつつ、「民間救急救命士に対する、民間のメディカルコントロール体制を構築すること」であった。同氏によると「日本医師会や日本救急医学会を含む救急関連団体が一致団結し、消防機関に所属する救急救命士と同様に民間救急救命士に対して指示・指導・事後検証・生涯教育体制の構築を真正面から議論することで、民間救急救命士が救急現場で救急救命処置を実施する具体的要件が急速に整った」と言う。

 実際、同協議会での議論が行われる数年前から、民間救急救命士は病院診療補助やドクターカー・ドクターヘリの診療補助、在宅療養者の搬送や老健施設からの搬送など、地域包括医療において救急救命士が活用されるようになってきており、今回の議論が待たれていた。

 また、国内には常備消防未設置の地域(2015年4月時点で31町村)があり、こうした地域では日本救急システムなどの民間企業によって、日本初の民間の救急活動が行われてきた。このような企業は消防組織に代わり役場救急を受託し、過疎地域における住民本位の新たな病院前救急医療の在り方を示してきたという。

新機構で生涯教育と資格の認定を実施

 民間救急救命士は大規模集客施設でも活用されている。例えば、東京スカイツリーの350m展望台救護室には救急救命士が1人常駐している。展望台で傷病者が発生した場合、消防機関に救急救命士を要請すると到着するまでに15分以上かかるが、救急救命士が展望台に常駐することで観察・処置が早期に着手できる。この他、大規模マラソンなど多人数が集まるイベントにおいても、民間救急救命士の活用による劇的な救命例が報告されるようになってきた。これらの民間活用例では、いずれも医師の指示・助言体制、事後検証体制といった民間独自の救護統括指示体制が構築されている。

 田中氏らは、東京マラソンなどの大会において発生した20例を超える心停止事例に対して、同大学で取り組んできた民間救急救命士による救命効果を検証した。その結果、心肺蘇生開始までに要した時間は平均1.6分、自動体外式除細動器(AED)使用までは4.3分で、蘇生率は93%と非常に高率であった(図1)。

図1.救急救命士が現場にいることによる救命効果の検証

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 同氏は「このように、早期から救急救命士が現場にいることで救命できる事例が少なくないことが認識されれば、今後は多くの人が集まり心停止が多発する空港やホテル、駅などの商業施設に民間救急救命士を常駐させる企業などが増えるのではないか」と考察した。

 一方で、民間救急救命士の活動の安全と自立性を担保するための課題も山積している。同氏は課題として①消防機関のメディカルコントロール体制とシームレスな関係を持った病院前救護統括体制の構築②民間の指示指導医師による病院前救護統括体制の確立③救急救命士生涯教育の推進④救急救命士を雇用する施設の認定⑤救急救命士の事故発生時の対応と医療保障体制の構築―を挙げた。

 病院前救護統括体制認定機構では、これらの課題を解決するため、民間救急救命士のメディカルコントロール体制の構築、資格の認定と生涯教育の実施が急務であるという(図2)。

図2.病院前救護統括体制認定機構(構成案)

1706091_fig2.jpg

(図1、2とも田中秀治氏提供)

 生涯教育については、消防機関における救急救命士と同様に関連学会の協力を得ながら2年間で最低128時間の生涯教育を提供し認定を行う予定である。

 最後に同氏は、この制度が社会に定着することで救急救命士の社会的利活用の場が広がり「現在、消防機関に所属している救急救命士が退職後、"第二次の人生"を民間救急救命士として活躍することも可能になる。救急救命士がより長期間社会に貢献し、生きがいのある人生を送ることができるようになると思う」と述べた。

髙田 あや

  

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