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【寄稿】オープンダイアローグ、創始者が来日講演へ

認定NPO法人リカバリーサポートセンターACTIPS 下平 美智代

 2017年07月15日 07:00

 近年、オープンダイアローグという名のフィンランドの精神科医療の取り組みが日本でも注目されている。オープンダイアローグはフィンランドにおいても一般的なアプローチというわけではない。北極圏に近い6自治体をキャッチメント・エリア(管轄区域)とする西ラップランド保健圏域において、唯一有床の精神科専門病院であるケロプダス病院を中心に実践されているユニークな取り組みである。この度、オープンダイアローグの創始者が来日し、8月20日に東京大学の安田講堂で講演を行う(詳細は右の画像をクリックで表示)。

続きを読む(読了時間:約 2.5 分) 

ファミリーセラピストによる治療ミーティング

 西ラップランド保健圏域では、精神科急性期の初回コンタクトにおいて、患者は精神科医と必ずしも会うわけではない。代わりにファミリーセラピストの資格を持った2人以上のスタッフによる「治療ミーティング」が、本人の自宅などで開かれる。

 このミーティングには、患者本人と家族など患者にゆかりのある人々が招かれる。治療ミーティングでは開いていく会話、つまりオープンダイアローグそのものが実践されている。ただ1つの結論(答え)を求める会話が閉じていく会話だとすると、開いていく会話では、それをファシリテート(支援)するスタッフはあらかじめプランや仮説を立てず、結論を求めず、話をまとめようとはしない。こうした会話では、参加者同士が互いの声(話し)を聴き、それぞれが独自の表現の仕方で気持ちや考えを発することで、別の視点に立ち視野を広げたり、気付きを得たり、新たな共通の理解に到達したりする。

 家族療法になじみのある専門家であれば、H.AndersonとH.Goolishian、そしてT.Andersenなどの言う「治療的会話」を想起するに違いない。実際に治療ミーティングは「治療」そのものといえる。ただ、それ以外の治療法(例えば薬物治療や個人精神療法)も、個人のニーズに合わせて提案され、適宜提供される。

国の精神科病床削減策とスタッフの問題提起が変革を後押し

 オープンダイアローグが開発された背景には、1980年代に推し進められたフィンランドの脱施設化があった。このころ、Keropudas病院ではJaakko Seikkula(心理士)やBirgitta Alakare(精神科医)など熱意のある多職種のグループが形成されていた。彼らの問題意識は「治療困難」とされている患者の回復を助けるために何ができるのかということであった。精神科病床数削減という国の方針と、内部スタッフからの問題提起の両方が病院の変革を後押ししたという。

 彼らは、まず他の地域で実践し効果が認められていたNeed Adapted Treatment(NAT)を取り入れた。そのアプローチは、家族療法のトレーニングを受けたスタッフが2,3人でチームを組み、患者と家族に定期的に面接するというものであった。NATを推進する医師たちは薬物治療も入院も必須とはせず、症状を抑えることに注力するのではなく、患者の語るさまざまな話に真摯に耳を傾け、個別のニーズに合わせて治療や支援を提供していた。

クライシスに早期に対応する治療システム

 NATを取り入れた同病院の草創期メンバーたちは、やがて臨床実践を積み重ねていく中で、家族療法という枠にとどまらず、患者の重要なネットワークを含む治療ミーティングを主軸とした治療システムを発展させていった。

 現在、彼らは24時間365日のオンコール体制と治療チームが必要とされる場所にどこにでも出向くアウトリーチ可能な体制を取っている。精神科急性期の対応として、早期に「治療ミーティング」を行うシステムの定着により、西ラップランド保健圏域では、1983年に人口1,000人当たり4.2床あった精神科病床数が1992年には0.8床にまで減少し※1、フィンランド国内でもいち早く脱施設化に成功した。そして精神病圏初発者の5年後の追跡調査で約8割が就学・就労していた※2という良好な結果も示されている。

日本におけるオープンダイアローグ導入、現況に合わせた取り組み

 現在、まだ少数ではあるが日本の精神科医療機関において、オープンダイアローグの治療ミーティングを臨床実践に取り入れ始めた医療チームが存在する。ただ医療制度や人口規模の異なる日本で、オリジナルのオープンダイアローグと全て同じことができるわけではない。彼らはそれを認識した上で、オープンダイアローグの考え方や治療態度を学び、それぞれの機関と地域に合わせた取り組みを行っている。こうした取り組みはオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)主催の実践報告会などで報告されている。

草創期メンバーが語るオープンダイアローグの歴史

 2017年8月20日にSeikkula氏とAlakare氏の講演会「創始者が語る:オープンダイアローグ誕生の物語と未来への可能性」が、東京大学の安田講堂で開催される。Keropudas病院におけるオープンダイアローグの草創期メンバーたちは、NATおよび家族療法を出発点に実践を重ね、失敗も成功も含めた体験をデータに、患者の治癒の助けとなる治療的アプローチを模索し、言語化し、それを全ての医療スタッフが実践可能なように、そしてそのような実践が持続可能なように、システムを構築していったのだと筆者はみている。あらためて彼らの語るオープンダイアローグの歴史から私たちは何を学ぶことができるだろうか。

  • ※1 伊勢田堯. フィンランドとベルギーの精神医療改革―発病早期の治療VS長期入院の解消.こころの科学 2015: 180(3); 63-69
  • ※2 Seikkula J, Aaltonen J, Alakare B, et al. Five-year experience of first-episode nonaffective psychosis in open-dialogue approach: Treatment principles, follow-up outcomes, and two case studies. Psychotherapy Research 2006; 16(2): 214-228

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