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早く人に投与したい・この細胞で一旗...元講師、無届け再生医療で執着心〔読売新聞〕

 2020年01月16日 09:58
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 大阪医科大で違法に再生医療が行われた事件で、15日、元講師で医師の伊井正明容疑者(52)ら2人が再生医療安全性確保法違反容疑で逮捕された。伊井容疑者は大学側の調査に「頼まれてやってしまった」と説明したが、周囲の証言からは、自身の研究成果を人に試すことに執着していた様子が浮かぶ。第一線の研究者がなぜ、無断で再生医療の実施に踏み切ったのか。

技術に自信

 「この細胞を早く人に投与したい」。大学関係者によると、伊井容疑者はここ数年、同僚や部下らにこう語っていたという。
 この細胞とは、自身が考案した手法で加工した脂肪幹細胞のこと。内部に薬剤を入れ込むことで、投与した際に体の組織の再生などを促す効果があるとされ、伊井容疑者は「認知症や心筋梗塞(こうそく)の治療につながる」と主張。しかし、動物実験で効果がみられただけで、データ不足などから、人に使う臨床研究の段階にはなかったという。

 そんな状況にもかかわらず、伊井容疑者は「これで一旗あげる」と周囲に語り、技術に自信を見せていた。2018年夏、東京都内の医療ベンチャー会社から創薬の共同研究を持ちかけられた際には、「すぐに臨床研究に移行できる。学長もOKを出している」と強調。実際には大学側に説明していなかったために臨床研究はできなかったが、企業側には「つてがある大学に頼めば、臨床研究ができる」と言って、人への投与にこだわりを見せた。

 共同研究は結局、今回の事件が発覚して中止となった。企業幹部は「とにかく、人への投与を急いでいた印象だった」と振り返る。

異色の存在

 伊井容疑者はなぜ、人への投与にこだわったのか。研究歴を追うと、その理由が浮かぶ。

 伊井容疑者は1992年に大阪医大医学部を卒業後、付属病院の循環器内科などで臨床医として勤務。理化学研究所(神戸市)の研究員を経て、2010年に大阪医大に戻った。当初在籍したのは、専門外の薬理学部門で、16年から実験動物の管理部門に異動。当時を知る関係者は「主流とは言えない部門だけに、何とか名を上げようとしていた」と明かす。

 こうした中で、注目したのが、理研で携わった再生医療だった。大阪医大は再生医療の実績が少なかったが、地道に研究を続け、15年には再生医療の知識などが豊富な医師に与えられる日本再生医療学会の「認定医」になった。関係者は「学内では異色の存在とみられ、本来業務とは違う研究に打ち込むのをよく思わない人もいた」という。

 転機が訪れたのは16年。自らが考案した脂肪幹細胞を加工する技術について、大阪医大が有望な研究として特許を申請したのだ。この技術は医療関係企業から注目され、資金が集まり、人脈が広がった。共犯者として逮捕された浜園俊郎容疑者(62)ともこの頃、知り合った可能性があるという。

 「この技術のすごさを世間に示す」。伊井容疑者は部下らにこう話すようになり、成果を求めるあまり、部下を叱責(しっせき)することもあったという。

 大阪府警によると、伊井容疑者は容疑事実となった脂肪幹細胞の培養を、部下の助教にさせていた疑いがある。

 「実用化までには、有効性を示すデータを積み重ねて臨床研究に移行し、さらに安全性と効果を確認するなど地道な努力が必要だ。急に脚光を浴びて基本を忘れ、成果を出そうと焦ったのではないか」。ある大学関係者は、事件の動機をこう推し量った。

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(2019年1月15日 読売新聞)

ヨミドクター

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