死亡直前の医療・療養生活に関する全国調査結果
患者・家族へのさらなるケアが必要であることが明らかに
2020年11月04日 21:23
2名の医師が参考になったと回答
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターは約5万人の遺族(うち、がん患者の遺族は約2万6,000人)を対象に、患者の死亡前の療養生活や利用した医療の実態について全国調査を実施し、その結果をまとめている。今回、前年度に実施した予備調査で実行可能性を確認した後に初めて行う大規模な本格調査を報告した。
本調査は厚生労働省の委託事業であり、2017年の人口動態調査の死亡票情報から「がん」「心疾患」「脳血管疾患」「肺炎」「腎不全」で死亡した患者の遺族を対象に、2019年1月から3月の期間に郵送によるアンケートを実施。アンケートの内容は、遺族からみた「死亡前1カ月間の患者の療養生活の質」「亡くなった場所で受けた医療の質」「家族の介護負担や死別後の精神的な負担」などが含まれている。
調査票を5万21人(うち、がん患者の遺族2万5,974人)に送付し、有効回答数は2万1,309人(うち、がん患者の遺族1万2,900人)だった。アンケートの回答は疾患別および死亡場所別に実際の死亡数の比率で調節した推定値を算出した。調査結果のポイントは下記の通り。
死亡前1カ月間の療養生活の質
死亡前1カ月の間に疼痛や気持ちのつらさを感じているがん患者が約4割程度存在し、患者の苦痛症状が十分に緩和されていないことが推定された。
死亡時の医療に対する満足度
死亡時に受けた医療に満足しているのは6~7割で、利用した医療について必ずしも満足していない患者が存在することが推定された。
人生の最終段階における医療・ケアに関する話し合い
患者が希望する最期の療養場所や蘇生処置について、医師と患者で話し合いがあった割合は2~3割、患者と家族間で話し合いがあった割合は3~4割に留まっていた。
家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状
介護について、全般的な負担感が大きかったと感じている家族は4~5割存在した。死別後の抑うつ症状は1~2割、悲嘆が長引いているのは2~3割に認められ、疾患別ではがん患者の遺族が多かった。家族の介護負担や、死別後を含めた家族の精神的な負担が推定された。
本調査の結果から、人生の最終段階の患者・家族の療養生活や医療を向上するため、緩和ケアや家族へのケアについて、より一層の対策が必要であることが示された。
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