胆膵領域における炎症と発癌

2020年11月07日 06:55

胆膵領域の基礎から臨床まで幅広くフォロー

　セッションではまず、この領域の第一人者である古川徹氏が基調講演を行い、胆膵領域における炎症と発がんの関係について、遺伝子変異などを含め病理学的視点から考察する（図）。

　続く12演題では、胆膵領域における炎症と発がんの関係について、細胞モデルや動物実験などの基礎研究（松尾洋一氏 、岡部純弥氏、鈴木玲氏、濱田晋氏）から、発表者の所属施設における自験例の検討（久居弘幸氏、瀧端康博氏、井上宏之氏、工藤篤氏、石川卓哉氏）、さらに全国調査のデータベースを用いた危険因子の同定（鈴木裕氏、立澤直子氏）など、胆膵がんの早期発見・診断に直結した幅広い内容が並ぶ。「膵がんだけでなく、肝内胆管がん、胆囊がんまで幅広く網羅している。このようなテーマでは基礎研究が多くなりがちだが、今回は基礎から臨床までバラエティーに富んだラインナップをそろえた」と正宗氏。中でも、膵がんおよび自己免疫性膵炎における新規バイオマーカーの探索については、「今後、大きな進展が期待される」と言う。

　膵がんは予後不良であるため早期発見が重要だが、近年、早期診断を可能にする所見として、膵くびれに注目が集まっている。主膵管の狭窄や上流の拡張所見は膵炎でもよく見られるが、がんにおいては膵臓組織が脂肪に変化し、局所的に痩せることにより膵くびれが生じる。小橋優子氏は、放射線科医の視点からCTによる膵くびれ所見の拾い上げと膵がん早期発見の関係を考察する。

　正宗氏は「消化器内科医の視点だけでなく、放射線科医の実臨床に即した視点も取り入れることで、幅広い専門領域の先生方に興味を持って聞いていただける構成になっていると思う」と述べている。