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鎌状赤血球症の治療薬候補を開発

既存薬よりも低い毒性

2023年01月25日 05:05

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 鎌状赤血球症は常染色体劣性(潜性)の遺伝性血液疾患で、βグロビン遺伝子(HBB)の点変異により発症する。治療にはヒドロキシ尿素が使用されるが、DNA合成の阻害など安全性と有効性に問題があり新たな治療薬の開発が望まれている。東京薬科大学生命科学部特別研究員の高瀬翔平氏らは、14万種以上の化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングにより得られた化合物を基に1,000種類以上の誘導体を合成。構造活性相関研究により、ヒドロキシ尿素より高い有効性と安全性を示し、既存薬よりも毒性が低い鎌状赤血球症治療薬候補の開発に成功したとNat Commun2023; 14: 23)に発表した(関連記事「鎌状赤血球症に対する糖鎖創薬を開発」「小児鎌状赤血球症、抗血小板薬で効果示せず」)。

ヒストンメチル化酵素G9aが治療標的として有望

 ヒトヘモグロビン(Hb)は、αグロビン鎖と非αグロビン鎖の各2分子で構成される4量体蛋白質である。ヒトでは出生後に、非αグロビン鎖としてγグロビン鎖を有する胎児型Hb(HbF)から、βグロビン鎖を有する成人型Hb(HbA)への切り替えが起こる。鎌状赤血球症はHBBの点変異により、HbAが異常なHbSに変化することで発症し、毎年世界で約30万~40万人の新生児が発症すると推定されている。

 現時点で造血幹細胞移植以外に根治療法はなく、胎児期に存在し出生後に失われるHbFを再誘導させる目的でHbF誘導活性作用を示すヒドロキシ尿素が用いられる。近年、ヒストンメチル化酵素G9a阻害薬UNC0638がHbF誘導活性作用を持つことが報告され、鎌状赤血球症の治療標的としてG9aが有望視されている。しかし、ヒドロキシ尿素はDNA合成阻害に伴う遺伝毒性や細胞毒性を有し、UNC0638を含む既存のG9a阻害薬は毒性が強いことから、有効性と安全性に優れる新薬が待望されていた。

既存化合物の約200倍のG9a阻害活性を示す

 そこで高瀬氏らは、東京大学創薬機構の化合物ライブラリー(約14万種)からG9a阻害活性を有する化合物の探索を目的にハイスループットスクリーニングを実施。得られた化合物を基に合成した1,000種以上の誘導体の構造相関研究により、既存化合物の約200倍と高いG9a阻害活性を有するRK-701の開発に成功した()。RK-701は、既存のG9a阻害薬に比べて著明に毒性が低く、薬物動態も良好だった。ヒト赤血球細胞に投与したところ、ヒドロキシ尿素よりも低濃度で優れた薬効を発揮した。また、動物モデルでも有効性が認められた。

図. G9a阻害薬RK-701開発の流れ

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(東京薬科大学プレスリリースより)

 遺伝子の網羅的解析からは、①G9aによる胎児型γグロビン遺伝子の発現抑制には、BGLT3が重要な役割を果たしている、②胎児型γグロビン遺伝子の主要な転写抑制因子であるBCL11AとZBTB7Aは、G9aと相互作用してBGLT3の発現を抑制する、③RK-701などのG9a阻害薬は、BGLT3の発現増加を介して胎児型γグロビンの発現を増加させる、④BGLT3は普遍的なHbFの活性化因子である―ことが示唆された。

 以上を踏まえ、高瀬氏らは「新たな化学構造を持ち、特異的かつ強力なG9a阻害薬RK-701の開発に成功した。既存のG9a阻害薬と比べ著明に毒性が低く、ヒドロキシ尿素よりも優れた安全性と有効性を示したことから、鎌状赤血球症治療薬として期待できる」と結論している。

(小野寺尊允)

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