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血中循環腫瘍DNA、大腸がん再発予測に有用

2023年01月31日 16:14

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 日本において大腸がんは男女とも2番目に多いがんで、年間の新規患者数は約16万例(男性約9万例、女性約7万例)に上る。大腸がん切除後には、病理組織検査から推定される再発リスクに応じて術後補助化学療法が行われるが、薬効や副作用には個人差があり、特に末梢神経障害が長期にわたり後遺症として残存することが課題となっていた。九州大学病院消化管外科准教授の沖英次氏らは外科治療を施行する大腸がん患者を対象に、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた包括的がんゲノムプロファイリング検査(リキッドバイオプシー)の術前・術後再発リスク予測における有用性を検討する大規模多施設前向きレジストリ研究GALAXY試験を実施。中間解析の結果、ctDNA測定は大腸がん再発リスクの予測に有用であることを明らかにしたとNat Med2023; 29: 127-134)に発表した(関連記事「世界初、リキッドバイオプシーで検出の大腸がん術後微小残存病変に対する国際第Ⅲ相医師主導治験を開始」「血液検体解析で大腸がん術後治療例を選別」)。

患者独自の遺伝子パネルを作製

 GALAXY試験は、リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan」の一環として行われた。対象は2020年6月~21年4月に92施設で登録した切除術を施行予定のStage Ⅱ~Ⅳ期大腸がん患者1,563例のうち、十分な臨床情報とctDNAのデータが得られた1,039例(男性52.9%、年齢中央値69歳)。

 生検または手術で採取した腫瘍組織を用いた全エクソーム解析の結果を基に、16遺伝子を選択して患者独自の遺伝子パネルを作製した。ctDNAの測定には、米・Natera社の高感度遺伝子解析技術Signateraアッセイを用いた。

 術前および術後4、12、24、36、48、72週時に血液を採取し、独自の遺伝子パネルによりがん遺伝子異常の有無を調べた。

ctDNA陽性例では、術後補助化学療法により再発リスクが有意に低下

 沖氏らは今回、2022年6月8日時点における中間解析結果を報告した。追跡期間中央値は16.74カ月(範囲0.49~24.83カ月)で、術後4週時のctDNA陽性率は18%(187/1,039例)だった。大腸がん再発率は、陰性例の9.5%(81/852例)に対して陽性例では61.5%(115/187例)と有意に高かった〔ハザード比(HR)10.0、95%CI 7.7~14.0、P<0.0001、図1〕。

図1. 術後4週時の遺伝子パネル検査の結果別に見たDFS

 18カ月時の無病生存(DFS)は、陰性例の90.5%(95%CI 88.3%~92.3%)に対し、陽性例では38.4%(同31.4~45.5%)と有意に不良だった(HR 10.82、95%CI 7.07~16.6、P<0.001、図1)。

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 Ⅱ/Ⅲ期の患者に限定した解析では、術後4週時にctDNAが陽性だった場合、18カ月時のDFSは術後補助化学療法非施行例の22.0%(95%CI 10.9~35.5%)に対し、術後補助化学療法施行例では61.6%(同49.0~71.9%)と再発リスクの有意な低下が認められた(HR 6.59、95%CI 3.53~12.3、P<0.0001、図2-左)。一方、術後4週時にctDNAが陰性だった場合の18カ月時のDFSは、それぞれ91.5%(95%CI 87.6~94.2%)、94.9%(同91.0~97.2%)で有意差はなかった(HR 1.71、95%CI 0.80~3.7、P=0.167、図2-右)。

図2. 術後4週時の遺伝子パネル検査の結果および術後補助化学療法の有無別に見たDFS

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(図1、2とも九州大学プレスリリースより)

 以上を踏まえ、同氏は「術後4週時におけるctDNAの検査結果が再発リスクと有意に関連し、ctDNA陽性例では術後補助化学療法により再発リスクが低減できる可能性が示された。ctDNA測定は大腸がん再発リスクの予測に有用であり、再発リスクに応じた術後補助化学療法の個別化の実現が期待される」と結論。その上で、「術後4週時のctDNA陰性例に対する術後補助化学療法の是非についての判断はできなかった。今回、施行の判断は担当医が行ったため、ctDNA以外の臨床病理学的背景が患者ごとに異なる可能性がある。現在、研究結果の検証を目的にctDNA陽性例を対象とする第Ⅲ相試験ALTAIR(JapicCTI-2053)、術後4週時の陰性例が対象の第Ⅲ相試験VEGA(jRCT1031200006)が進行中で、結果が期待される」と付言している。

(小野寺尊允)

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