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コロナ休校時の生活習慣が学校再開後も影響

小中学生対象の縦断調査

2023年02月06日 13:50

326名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期には、国内外の教育機関において流行防止対策の一環として一斉臨時休校措置が実施された。長期休校に伴う生活習慣の変化は、学校再開後の生活に影響を及ぼす可能性があるものの、詳細は明らかでない。東京大学未来ビジョン研究センターの杉本南氏らは、小中学生を対象に学校再開直後(2020年6月)と学校再開後(同年7月~21年2月)に縦断調査を実施。その結果、平時に比べ臨時休校中に起床と朝食の時間帯が遅かった小児は、学校再開後も起床時刻と睡眠時間の変化が大きい傾向が見られたとJ Nutr Sci2023; 12: e8)に発表した(関連記事「長期休校で小児心身症が増加、その実態は?」)。

起床・朝食の時間帯で4群に分類

 学校の時間割・スケジュールは学齢期の小児の生活習慣に大きく関わっている。そのため、COVID-19パンデミックに伴う長期の休校は小児の睡眠や食事の時間的パターンに影響を及ぼし、長期的な健康リスクを高める可能性がある。

 そこで杉本氏らは、2020年3~5月に行われた約3カ月間の長期休校時(給食なし)と学校再開後の生活習慣の変化を明らかにすべく、①臨時休校から学校が再開した後の小中学生の睡眠習慣と食事摂取量の変化を調べる、②臨時休校中の睡眠と食事の時間的パターンの違いによる学校再開後の生活習慣の変化の有無について検討する―ことを目的に縦断調査を実施した。14都道府県の47校に在籍する小中学生1万1,958人に、2020年6月と同年7月~21年2月に質問票(簡易型自記式食事歴法質問票を含む)を送付。今回は両調査に回答し、必要な変数がそろっている4,084人(男児49.3%、女児50.7%、小学生69.5%、中学生30.5%)を解析対象とした。起床時刻、就寝時刻、睡眠時間、主な栄養素や食品群の摂取量を臨時休校中と学校再開後で比較。さらに、潜在クラス分析により得られた臨時休校中の起床と食事の時間的パターンで、「とても早い群842人(起床6時ごろ/朝食6~7時ごろ)」「早い群1,030人(同7時ごろ/7時ごろ)」「遅い群1,249人(同7~8時ごろ/8時ごろ)」「とても遅い群963人(同8~10時ごろ/9~10時ごろ)」の4群に分けてこれらの変数の変化を比較した。

 起床・朝食の時間帯が早い群に比べ、とても遅い群では起床、朝食、昼食の時間帯が1~2時間ほど遅かった。夕食の時間帯は4群間の差が小さく、就寝の時間帯は遅いパターンの2群で遅くなる傾向にあったが群間差は小さかった。

再開後は起床時刻が1時間早く、睡眠時間が0.94時間短い

 検討の結果、全体では休校中と比べ学校再開後は平均起床時刻が1時間有意に早まり(7時35分±1時間6分 vs. 6時32分±29分、差の平均-1.0時間、95%CI -1.1~-1.0時間、Cohen's d=1.23、交互作用のP<0.001)、平均睡眠時間は0.94時間短縮していた(9.3±0.9時間 vs. 8.4±0.8時間、同-0.11時間、-0.13~-0.08時間、Cohen's d=1.04、交互作用のP<0.001、)。

 起床時刻と睡眠時間の変化幅は、いずれもとても早い群と比べ、とても遅い群で有意に大きかった(順に-0.09時間 vs. -2.20時間、-0.24時間 vs. -1.76時間)。就寝時刻と睡眠中央時刻にも有意差が認められた(全て傾向性のP<0.001)。

図. 臨時休校中と学校再開後における睡眠習慣の比較

fig765-636px.png

(東京大学プレスリリースより)

 食事摂取量を見ると、全体では休校中と比べ再開後にはビタミンB1、ビタミンB6、カリウム、果物、乳製品が増加し、砂糖・菓子類、清涼飲料水は減少していたが、効果量は小さかった(η2p<0.04)。これらの関連は、年齢、性、同居家族、同胞を調整後も一貫していた。ただし、学校再開と清涼飲料類の摂取量の間には交互作用が認められ(交互作用のP<0.001)、とても遅い群では減少量が有意に多かった(傾向性のP<0.001)。

 この点について、杉本氏らは「コロナ下において保護者や家族が子の健康と食事に気を遣っていたことで、大きな変化が現れなかったのではないか」と考察している。

 以上を踏まえ、同氏らは「小中学生を対象とした縦断調査から、学校に通うことが小児の睡眠習慣、特に起床時刻に多大な影響を及ぼすことが示唆された。COVID-19流行に伴う臨時休校下では、起床・朝食の時間的パターンが著しく遅くなっていた小児で特に影響が大きかった」と結論。「パンデミックや自然災害に伴う長期休校後、または夏休み明けの学校再開時に健康的な睡眠習慣と食生活を促すことの重要性を裏付ける結果だ」と付言している。

(小野寺尊允)

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