関節リウマチ、日本では春~夏に増悪
請求データ解析で明らかに
2023年02月27日 05:05
315名の医師が参考になったと回答
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千葉大学病院企画情報部の安藤文彦氏らは、厚生労働省が公開しているレセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan;NDB)に含まれる関節リウマチ(RA)患者約20万例のデータを対象に、生物学的製剤(bDMARD)やメトトレキサート(MTX)の初回投与数に季節的変化が見られるかどうか検討する後ろ向き研究を実施。その結果、初回投与数には春から夏に増加する明らかな季節的変化が認められ、日本では春から夏にかけてRAが増悪する傾向が示唆されたとMod Rheumatol(2023; 33: 46-53)に報告した。
RA患者20万5,906例における治療薬の初回投与月を集計
NDBには生活保護受給者(214万5,415例、2017年3月現在)を除く1億2,000万人以上が登録されており、日本人の全ての電子請求データが含まれている。
安藤氏らは今回、RA増悪と季節に関連があるかを明らかにするため、NDBの請求データを基に2010年4月〜17年3月のRA患者におけるbDMARD、MTX、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の初回投与数を月別に集計した。
2つの匿名化されたID(保険会社のコードと保険会社から割り当てられた被保険者の識別番号から成るID1、氏名と生年月日から成るID2)を用いて請求データと個々の患者を紐付け、23万6,084例のRA患者を特定。そのうちbDMARDとJAK阻害薬で治療を受けている他の疾患の患者を除外した20万5,906例を解析の対象とした。
bDMARDはインフリキシマブ(IFX)、エタネルセプト(ETN)、アダリムマブ(ADA)、トシリズマブ(TCZ)、アバタセプト(ABT)、セルトリズマブペゴル(CZP)、ゴリムマブ(GLM)の7剤、JAK阻害薬はトファシチニブ(TOF)を対象とした。バイオシミラーIFXはIFXと同等とした。
対象者における上記のbDMARD、JAK阻害薬の初回投与月を特定した。MTX投与患者も対象としたが、厚労省に分子標的薬投与患者のデータ提供を依頼したため本調査のMTX投与患者は全員、後に分子標的薬投与を受けておりMTXのみを投与された患者は含まれなかった。さらに、薬剤、都道府県、性、年齢ごとの各月の初回投与数も集計した。統計解析は、季節別(5~7月、11~1月)のbDMARDとJAK阻害薬の初回投与数をt検定で比較した。
bDMARDの初回投与は5〜7月で多く、多湿によるRA増悪が原因か
解析の結果、2017年の観察期間終了時に最も多く投与されていたbDMARDはETNであったが、2010〜17年に減少し、TCZ、ABT、GLMは増加していた。
bDMARDの月別の初回投与数は5~7月が最も多い一方で、11~1月に減少しており、正弦曲線状の季節的な変化が見られた。MTXの初回投与数もbDMARDと同様の変化パターンを示した。
性や年齢で層別化すると、bDMARDの月別の初回投与数は性や年齢にかかわらず 春から夏にかけて多く、秋から冬にかけて少なくなる変化パターンを示した。特に、女性で64歳以下の患者において、その傾向が顕著であった。
ETN、TCZ、ABTなどの薬剤は1カ月当たりの初回投与数が500例を超えると、bDMARD全体の季節的な変化と同様のパターンが示された。一方でTOFなど、初回投与数が500例未満のその他のbDMARDは、同様のパターンを示さなかった。
都道府県別に初回投与数を比較すると、多くの県で春から夏にかけて多く、秋から冬にかけて少なくなる変化のパターンが示され、北海道と沖縄県でも有意差は見られなかった。東京など人口の多い都道府県では、その変化パターンがより明確に示された。
今回の結果について安藤氏らは、「bDMARDの初回投与数の季節的な変化は、年齢、薬剤、地域に関係なく1カ月の患者数が500例以上の場合において明確に観察できた。RAの増悪因子としては低温、多湿などが挙げられるが、日本は北欧諸国と比較して冬の寒さは厳しくないものの6〜8月にかけては湿度が高い。このような気候条件によるRA増悪のパターンは、春から夏にかけて増加するbDMARDの初回投与数の変化パターンと一致するため、今回示された初回投与数の季節的変化はRAの増悪に起因するものと推測される」と述べている。
(今手麻衣)