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乾癬治療薬がアルコール依存に有効?

アプレミラスト・マウス実験と概念実証試験で有望な結果

2023年03月02日 11:05

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 米・Oregon Health & Science UniversityのKolter B. Grigsby氏らは、乾癬治療薬として日米で承認されているホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬アプレミラストのアルコール使用障害(AUD)への有効性を検討するマウス実験と概念実証試験を実施。AUDへの適応拡大の可能性を示唆する結果だったとJ Clin Invest2023年1月19日オンライン版)に報告した。

飲酒関連マウスモデルでアルコール摂取量の減少確認

 AUDは難治性の精神疾患であり、AUD関連の死亡は米国で年間9万5,000人以上発生し、経済的損失は莫大な額に上る。これほど深刻な疾患でありながら、米国では2004年にアカンプロサートが発売されて以降(日本での発売は2013年)、新規AUD治療薬は登場していない(日本では2019年にAUDにおける飲酒量低減薬としてナルメフェンが発売)。

 cAMPを特異的に加水分解する酵素であるPDE4は、GWAS研究でアルコールおよびニコチン依存との関連が指摘されており、AUD治療の新たな分子標的として最近注目を集めている。Grigsby氏らはアプレミラストを転用候補として選び、マウス実験を行った。

 まず、アルコール過飲(binge-like alcohol drinking)のマウスモデルである選択交配のHigh Drinking in the Darkマウス(HD1D-1、HDID-2)や近交系HDID-1マウス、C57BL/6Jマウスにアプレミラストを投与。

 アルコール過飲、強迫的飲酒(compulsive-like alcohol drinking)、ストレス促進性の飲酒増加(stress-facilitated escalation of drinking)、依存誘発性の飲酒増加(dependence-induced escalation of drinking)など、さまざまな臨床症状と関連するこれらのマウスモデルにおいて、有害なアルコール摂取行動の減少を確認した。

側坐核への局所投与でも効果確認

 側坐核(NAc)は多くの文献でアルコール摂取の重要な調節因子として支持されており、AUD治療における神経標的の候補ともされている。Grigsby氏らはNAcにおけるPDE4の役割を検討した結果、アプレミラストをNAcに直接投与するだけで十分なアルコール過飲の減少が得られることも明らかにした。

 さらに同氏らは、アプレミラストはNAcからの主要出力経路を構成する中型有棘ニューロン(MSN)の生理機能も変化させることを報告している。

中等度/重度AUDの有償ボランティア51例を対象

 マウスモデルで確認された以上の知見を踏まえ、Grigsby氏らは治療を求めていない18~65歳の有償ボランディア51例(女性24例、男性27例。DSM-5診断基準による中等度または重度AUD)を対象とした第Ⅱa相プラセボ対照二重盲検概念実証試験を実施した。

 対象をアプレミラスト群(26例:目標用量は90mg/日)とプラセボ群(25例)に1:1でランダムに割り付け、性やベースラインのC反応性蛋白(CRP:2mg/L未満と2mg/L以上)で層別化した。

 両群のベースラインの患者背景、さまざまな臨床検査値、治療前の1日当たりの飲酒量、大量飲酒(女性は1日4杯以上、男性は1日5杯以上と定義)日の割合などに差はなかった。

1日当たりの飲酒量、大量飲酒日、有意に減少

 試験期間は11日間で、アプレミラスト群ではプラセボ群に比べ、1日当たりの飲酒量が有意に減った(P<0.05)。潜在曲線モデルを用いて11日間の飲酒量の変化を解析したところ、プラセボ群の1日当たり0.48杯の減少に対し、アプレミラスト群では2.74杯の減少だった(Cohen's d=0.77、効果量=大)。大量飲酒日の割合も、プラセボ群に比べアプレミラスト群で有意に減少した(β=-0.1504、z =2.17、P=0.030)。

 下痢、悪心、腹痛、眠気といった副作用はアプレミラスト群でプラセボ群の2倍以上発生したが、重篤または重症の有害事象はなかった。

 Grigsby氏らは「今回の概念実証試験で示された有効性および安全性のデータは、AUDの新規治療薬としてのアプレミラストの開発継続を支持するものである」と結んでいる。

木本 治

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