アフリベルセプト、糖尿病網膜症の視力改善せず
DRCR Retina Network Protocol W試験
2023年03月02日 17:00
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米・DRCR Retina Network/Indiana University School of MedicineのRaj K. Maturi氏らは、米国およびカナダの64施設で登録した中心窩に及ぶ糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を伴わない中等度~重度の非増殖糖尿病網膜症(NPDR)患者を対象に、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬アフリベルセプトの早期投与の有効性と安全性を4年間にわたって検討するランダム化比較試験DRCR Retina Network Protocol Wを実施。アフリベルセプトを予防的に投与した例では、進行または視力を脅かす合併症発症後に投与を開始した例に比べ、合併症の発症を有意に抑制したが、視力の改善は認められなかったとJAMA(2023; 329:376-385)に発表した。
2年間は予防的投与、その後2年間は合併症発症例に投与
CI-DMEを伴わないNPDRに対するVEGF阻害薬の硝子体内注射は視力を脅かす糖尿病合併症の発症を少なくとも2年間は抑制するが、この治療が長期的な視力改善につながるかは明らかでない。
DRCR Retina Network Protocol Wは、2016年1月~2018年3月にCI-DMEを伴わない中等度~重度のNPDR〔Early Treatment Diabetic Retinopathy Study-Diabetic Retinopathy Severity Score(ETDRS-DRSS、範囲0~100)43~53〕患者328例399眼を登録(平均年齢56歳、女性42.4%、白人45%、ヒスパニック系32%)。アフリベルセプト2.0mg投与群200眼とシャム群199眼にランダムに割り付け、最初の2年間はベースライン時、1、2、4カ月後、その後は4カ月ごとにアフリベルセプト予防的投与またはシャム注射を行った。
3年目と4年目に、軽度NPDRまたはそれ以上(ETDRS-DRSS 35以下)に改善した場合は4カ月ごとの予防的投与を継続し、高リスク増殖糖尿病網膜症(PDR;ETDRS-DRSS:71以上)または失明を伴うCI-DME(ETDRS視力検査表による最高矯正視力スコアが1回の受診で10文字以上低下または2回の連続受診で5文字以上低下)を発症した場合は、両群ともアフリベルセプトによる治療を開始した。
PDRまたは失明を伴うCI-DMEの4年間の累積発症率は、シャム群の56.9%に対しアフリベルセプト群では33.9%と有意に低かった(調整ハザード比0.40、97.5%CI 0.28~0.57、P<0.001)。
4年後における視力のベースラインからの平均変化量は、シャム群が-2.4(標準偏差5.8)文字、アフリベルセプト群が-2.7(同6.5)文字と有意差はなかった(調整平均差-0.5文字、97.5%CI -2.3~1.3、P=0.52〕。
安全性に関しては、Antiplatelet Trialists' Collaborationの定義による心血管・脳血管の有害事象発生率に両群で有意差はなかった(P=0.53)。
予防投与の便益が得られない可能性
同試験は、2年間の一次解析結果では、シャム群に比べアフリベルセプト群ではNPDRの重症度を改善し、失明を伴うCI-DMEの発症率を有意に低下させ、PDRへの進行リスクを低減することが示されていた。
今回、4年間の試験を完了した解析結果では、視力を脅かす合併症を発症した場合にのみアフリベルセプト投与を開始した例に比べ同薬を予防的に投与した例では、PDRまたは失明を伴うCI-DMEへの進行リスクが低減し、有意な解剖学的改善効果が示された。しかし、視力の改善にはつながらなかった。
以上の知見を踏まえ、Maturi氏らは「CI-DMEを伴わないNPDR患者の大半では、予防戦略としてのアフリベルセプト投与による便益が得られない可能性がある」と結論している。
(宇佐美陽子)