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国民病の慢性腰痛に新タイプの貼付薬が登場

2023年03月03日 14:53

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 国民病ともいわれる腰痛。厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、腰痛の有訴者率が男性では1位、女性では2位といずれも上位を占める。福島県立医科大学整形外科学講座准教授の二階堂琢也氏は2月24日に行われた久光製薬主催のメディアセミナーで、慢性腰痛の現状と新たな選択肢となりうる経皮吸収型持続性疼痛治療薬ジクロフェナクの適正使用について概説。「従来の局所作用型湿布薬とは異なるため、適正使用を促す服薬指導が重要だ」と述べた。

患者ごとに異なる痛みの構成要素

 先述の調査によると、人口1,000人当たりの有訴者率は男性では腰痛(91.2)が1位、女性では肩凝り(113.8)と腰痛(113.3)が上位2位を占めるなど、腰痛の訴えは多い。また2020年の春以降、新型コロナウイルス感染拡大防止の一環で多くの企業がテレワークを導入するようになり、身体の不調、中でも腰痛を訴える人が男女とも過半数に上るとの報告もある。

 二階堂氏によると、痛みを構成する要素には、侵害受容器が活性化することで引き起こされる「侵害受容性疼痛」、体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる「神経障害性疼痛」、痛みが長引くことによる不安や恐怖といった「心理社会的因子」があるという。こうした痛みのメカニズムに基づき腰痛の起源を考えると、靭帯や椎間板、筋膜、腱などの痛みは侵害受容性疼痛、神経根や馬尾、変性椎間板内への神経発芽の痛みは神経障害性疼痛であることが多い()。

図.腰痛の起源と痛みの病態

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(メディアセミナー発表資料を基に編集部で作成)

 同氏は「一口に腰痛と言っても、複数の痛みの構成要素が混在しており、その割合は患者ごとに異なる」と説明した。

痛みのメカニズムを考慮した早期介入が重要

 慢性腰痛の薬物治療では、有効性はもちろん、副作用、費用効果、患者の希望を考慮した薬剤選択が求められる。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』や『慢性疼痛診療ガイドライン』(2021年刊行)ではいずれも推奨度2(弱い推奨)とされており、慢性腰痛の薬物療法において重要な薬剤と位置付けられている。

 痛みが遷延すると慢性化や重症化に至る恐れがあるため、ガイドラインに即した適切な薬物治療を早期に開始することが望ましい。薬剤選択の際には、痛みのメカニズムを考慮することが重要だという。

1日1回貼付で24時間痛みを抑制

 こうした中、新たな選択肢として経皮吸収型のジクロフェナクが加わった。同薬は既にがん疼痛治療薬として承認されていたが、昨年(2022年)6月に新たな効能・効果として、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱鞘炎に対する鎮痛・消炎が追加された。

 同薬はNSAIDジクロフェナクナトリウムを有効成分とする疼痛治療薬だが、これまで広く臨床で使用されてきた経口薬や坐薬とは異なり、全身作用型経皮吸収型である。1日1回1~2枚を貼付し、24時間ごとに張り替える。経皮投与であるため、薬剤が消化管を経由せずに直接全身の血中に移行し、24時間安定した血中薬物濃度を維持することで痛みを持続的に抑える効果が期待できるという。

 局所に作用する貼付薬とは異なり、必ずしも痛みのある部位に貼る必要はない。また、痛みのある部位ごとに何枚も貼る必要がなく、経口薬の数を減らすことも可能だ。

52週間の長期投与でもVASスコア平均変化量が改善

 腰痛症に対するジクロフェナクの有効性および安全性を検証する第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験では、腰痛症患者538例を、ジクロフェナクを①1日2枚経皮投与する135例(2枚群)、②1日1枚経皮投与する136例(1枚群)、③プラセボ群267例―にランダムに割り付け、2週間治療を継続した。

 その結果、治療開始3日時における疼痛Visual Analog Scale(VAS)スコアのベースラインからの平均変化量は、プラセボ群と比べ2枚群、1枚群で有意に改善し、プラセボ群に対する優越性が示された(順にP=0.0025、P=0.0024)。

 安全性の検討では、2枚群、1枚群とも貼付部位の瘙痒感は見られたものの、投与中止に至るような重篤な副作用は認められなかった。

 腰痛症に対してジクロフェナク1日2枚経皮投与を52週間継続した長期投与試験では、前治療の有無にかかわらずVASスコア平均変化量の改善が示された。副作用は瘙痒感が最多で、腎機能や肝機能への影響はほとんど見られなかった。

 二階堂氏は「経皮吸収型ジクロフェナクは、運動器疼痛の新しい治療選択肢となる。貼付薬であることから、ポリファーマシー対策においても期待が持てる」と評価。その一方で、「従来の局所作用型の湿布薬とは異なる。痛みがあるときだけ貼ったり、疼痛部位に何枚も貼ってしまったりすると、血中濃度が安定せず思うような効果が得られない、または血中濃度が上昇し過ぎるといったリスクを伴う。また、同じ部位に連続して貼付すると皮膚炎のリスクもある」と指摘し、「正しい服薬指導により適正使用を促すことが重要だ」と強調した。

(比企野綾子)

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