IPFへのニンテダニブ、1年で約半数が中止
市販後調査の中間解析
2023年03月06日 15:18
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ニンテダニブは、日本で特発性肺線維症(IPF)、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に対して使用される分子標的薬である。努力性肺活量(FVC)の低下抑制効果などが示されているが、有害事象による中止も少なくない。神奈川県立循環器呼吸器病センター所長の小倉髙志氏らは、実臨床における日本人IPF患者に対するニンテダニブの忍容性および安全性を検討した市販後調査の中間解析結果をAdv Ther(2023年1月24日オンライン版)に報告。1年以内に約半数が治療を中止していたことが明らかとなった。
肺機能悪化が関連、永続的中止でなく減量・一時的中断を
現在、2015年8月~18年12月にニンテダニブによる治療を開始した日本人IPF患者を対象とした市販後調査が実施されており、今回報告されたのは開始12カ月時における中間解析結果である。主要評価項目は有害薬物反応(ADR、ニンテダニブとの因果関係が否定できない有害事象と定義)の発生頻度、副次評価項目はFVCのベースラインからの変化量とし、治療中止の潜在的危険因子を特定する目的で、12カ月後の治療中止群と治療継続群において多変量解析を実施した。
検討の結果、安全性解析セットの患者5,578例中2,795例(50.1%)がニンテダニブ投与開始12カ月以内に治療を中止していた。全体では3,767例(67.5%)でADRが報告され、1,356例(24.3%)はADRにより治療中止に至っていた。治療中止群2,795例中、ADRにより治療中止に至ったのは1,442例(51.6%)だった。3〜12カ月以内に治療中止となった主な原因は、肝機能異常が18.8%、下痢が13.2%であった。
一方、12カ月時におけるFVCのベースラインからの低下幅は治療中止群に比べ治療継続群で小さかった(調整済み平均変化量±標準誤差−311.2±29.2mL vs. −104.4±10.9mL)。早期治療中止の危険因子はベースライン時のIPF重症度分類Ⅲ〜Ⅳ度(オッズ比1.29、95%CI 1.06〜1.57、P=0.012)およびFVCが70%未満(同1.75、1.44〜2.12、P<0.001)であった。なお、ニンテダニブの減量により、肝機能異常が22.8%から7.5%に、下痢が37.1%から18.9%に低下するなど、ADRの抑制が認められた。
小倉氏らは「ニンテダニブ治療を受けた日本人IPF患者の約半数が治療開始後1年以内に中止しており、肺機能の悪化が早期治療中止のリスクと関連していた」と結論。「臨床状態や肺機能の悪化を防ぐには、ニンテダニブの永続的な中止ではなく減量または一時的な中断を試みるべきであり、効果を最大化するためにニンテダニブはIPFの早期から投与開始すべきである」としている。
(山田充康)