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小児の注射時痛や不安がIVR介入で緩和

2023年03月15日 16:52

379名の医師が参考になったと回答 

 4~12歳の小児に対する静脈穿刺はしばしば強い痛みと不安感をもたらし、医療者の負担増にもつながる。患児の注意を穿刺針からそらすためにテレビアニメを見せたり、玩具で遊ばせたりと医療者はさまざまな非薬理学的介入を試みることがある。だが注意をそらすことに失敗すると、最大の不安感が引き起こされる可能性もある。中国・Chinese University of Hong KongのCho L. Wong氏らは、没入型仮想現実(IVR)の使用により、静脈穿刺を受ける患児が経験する痛みや不安感、ストレスが大幅に軽減したと、JAMA Netw Open2023; 6: e230001)に発表した。

患児149例が対象のRCTで検証

 今回のランダム化比較試験(RCT)では、2019年1月~20年1月に香港の公立病院で静脈穿刺を受ける4~12歳の患児149例を登録し、IVR介入群(75例)と対照群(74例)にランダムに割り付けた。対照群には静脈穿刺手順の説明と言葉でなだめるなどの標準ケアのみを行い、IVR介入群には標準ケアに加えてIVRを実施した。

 痛みの評価にはFace Pain Scale-Revised(FPS-R)を用い、不安の評価には4~7歳はVisual Analogue Scale(VAS)を、8~12歳は中国語版State Anxiety Scale for Children(CSAS-C)を使用した。

 主要評価項目は患児の自己申告による痛みスコア、副次評価項目は患児の自己申告による不安スコア、心拍数、唾液中コルチゾル濃度によるストレスの程度、処置時間の長さ、処置に対する医療者の満足度(40点満点で評価、高スコアほど満足度が高い)。各項目について、処置の10分前、処置中、処置直後、処置30分後に評価した。

年齢に応じたシナリオでIVRを実施

 IVR介入は、患児に処置の手順に関する情報を提供し、不安感を誘発する静脈穿刺の場面から注意をそらすことによってコントロールの感覚が植え付けられるというもの。患児の頭部にスマートフォンを接続した使い捨てヘッドセットを装着し、ディスプレイには静脈穿刺を受ける漫画のキャラクターが登場し、4~7歳の患児には静脈穿刺が必要となった理由について分かりやすい言葉で説明。8~12歳の患児には静脈穿刺をする理由、期待されること、どのように感じるかなど、より詳細な情報の説明がなされた。それぞれ5分間のIVR介入を受けた後、医療者は静脈穿刺を開始した。

< 149例の平均年齢は7.21歳、女児57.7%(86例)、4~7歳は59.1%(88例)だった。静脈穿刺の原因疾患の内訳は、発熱が44.3%(66例)、呼吸器関連が14.1%(21例)、消化器関連が9.4%(14例)などだった。

 痛みは両群とも穿刺直後に最も強く感じたが、対照群に比べIVR介入群では穿刺前に対する穿刺直後の痛みスコアの増加幅が有意に小さかった(β=-0.78、95%CI -1.21~-0.35、P<0.001)。

 不安感は両群とも穿刺前に最も強く感じたが、IVR介入群では穿刺前に対する穿刺直後の不安スコアが大幅に減少した(β=-0.41、95%CI -0.76~-0.05、P=0.03)。

 また、IVR介入群では、心拍数の増加幅が少なく、唾液中コルチゾル濃度の低下幅が大きかった。

処置時間にも医療者の満足度にも良好な影響

 静脈穿刺処置に要した時間は、対照群と比べIVR介入群で有意に短かった(平均持続時間6.56分 vs. 4.43分、P=0.03)。

 医療者の処置に対する満足度は、対照群と比べIVR介入群で有意に高かった(平均スコア32.9 vs. 34.5、P=0.03)。

 今回の知見を踏まえ、Wong氏らは「標準ケアだけでなく、穿刺針から注意をそらすことや処置に関する情報を組み込んだIVRを用いた介入により、小児患者の痛みおよび不安感、処置に要する時間や医療者の満足度が大幅に改善された」と結論。また、サブグループ解析で4~7歳の患児へのIVR介入により、穿刺直後の痛みに対する高い効果と不安感に対する中程度の効果が示されたことから、「IVR介入は年長より年少の患児により優れた影響を及ぼす可能性がある」と付言している。

(宇佐美陽子)

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