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日本人びまん型胃がんの治療標的を同定

飲酒関連のゲノム異常を初めて解明

2023年03月17日 15:24

407名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 胃がんは日本で罹患者数(2019年)、死亡者数(2021年)ともに3番目に多いがんで、スキルス胃がんに代表されるびまん型胃がんは、いまだに予後不良で有効な治療法の開発が望まれている。国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野ユニット長の十時泰氏、分野長の柴田龍弘氏らは、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC-ARGO)における国際共同研究として、日本人697例を含む計1,457例のデータを用いて世界最大規模の胃がんゲノム解析を実施。びまん型胃がんの新たな治療標的として新規のものを含め有望な75種のドライバー遺伝子を発見するとともに、飲酒に関連したゲノム異常が発症に関与することを初めて明らかにしたとNat Genet2023年3月13日オンライン版)に発表した(関連記事「ゲノム解析でスキルス胃がんの治療標的同定」)。

びまん型胃がんの発症要因を探索

 胃がんの重要な危険因子は、Helicobacter pyloriおよびエプスタイン・バーウイルス(EBV)への感染で、特にH. pylori感染を契機とした慢性胃炎は腸型胃がんの発症と強く関連している。一方、びまん型胃がんの発症要因は未解明であり、予防法の確立に向け原因解明が求められている。

 十時氏らは今回、胃がん患者1,457例(日本697例、米国442例、中国217例、韓国52例、シンガポール49例)の胃がんゲノムデータから成る世界最大規模の症例コホートを用いて全エクソン解読(1,271例)および全ゲノム解析(172例)解読、RNAシークエンス解析(895例)を実施。びまん型胃がんの発症要因を探索した。

 解析の結果、胃がん細胞のゲノムにおいて14種の変異シグネチャーを同定した。中でもSBS16は、びまん型胃がん・東アジア人種に多く、男性、飲酒量、アルコールを代謝しにくいゲノム多型(ADH1B/ALDH2)と有意な相関を示した。さらに、びまん型胃がんのドライバー遺伝子であるRHOAの変異がSBS16により誘発されることが示され、飲酒に関連したゲノム異常がRHOAのドライバー変異を誘発し、びまん型胃がんの発症に関与することを明らかにした。

胃がんのドライバー遺伝子の全貌解明

 今回の解析では、胃がんにおけるドライバー遺伝子が新規を含め75種で同定された。全体のうち、なんらかの治療法が知られているドライバー遺伝子を1種以上有する症例は24.6%で、既に胃がんに対して使用可能な治療薬が存在する症例は9.6%だった。治療標的としては、VEGFA、FGFR2キナーゼ、PD-L1/L2といった免疫チェックポイント分子の遺伝子におけるゲノム異常、NRG1/2やRETなど複数のキナーゼ融合遺伝子が同定でき、新たな治療標的として有望と考えられた。

 次に、今回の大規模ゲノムデータと発現データを組み合わせ、RNAスプライシング異常について網羅的な解析を行った。その結果、胃がんにおけるスプライシング異常は、がん抑制遺伝子であるTP53CDH1に最も高頻度に起こっていることが明らかとなった(図1)。

図1. 胃がんにおけるスプライシング異常の全体像

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 また、びまん型胃がんにおけるCDH1のスプライシング異常は特定の部位に集中していたことから、びまん型胃がんの発症においてCDH1変異はドミナントネガティブ(優性阻害)として作用する可能性が示された。さらに高度変異胃がん症例では、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子やB2M遺伝子といったがん抗原提示に関わる分子および、インターフェロンガンマ経路分子における機能喪失型変異やゲノム異常を70%以上に認めた。そのため、こうした症例では免疫チェックポイント阻害薬の効果が得られにくいと考えられた(図2)。

図2. 高度変異胃がんにおける免疫関連遺伝子異常の頻度

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※水色:コピー数欠失、オレンジ:フレームシフト変異、紫:ミスセンス変異、緑:ナンセンス変異、赤:スプライシング異常

(図1、2とも国立研究開発法人国立がん研究センタープレスリリース)

 以上を踏まえ、十時氏らは「世界最大規模の胃がんゲノム解析により、発症要因が不明だったびまん型胃がんについて、飲酒およびアルコール代謝関連酵素の遺伝子多型が重要な危険因子であることを初めて明らかにした。また、びまん型胃がんを含む日本人胃がんにおける治療標的となるドライバー遺伝子や、免疫療法の効果予測因子となりうるゲノムバイオマーカーの全体像も解明した」と結論。「今後、飲酒に関連するゲノム異常の発生機序の検討などを通じ、胃がんの予防法や治療法の開発、予後改善に貢献することが期待される」と展望している。

(小野寺尊允)

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