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院内がん登録の5年、10年生存率を公表

国がん・純生存率による初集計

2023年03月22日 17:22

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 国立がん研究センターは、がん診療連携拠点病院などを含む院内がん登録実施施設で収集した院内がん登録情報を用い、2007年からがん生存率を集計している。従来は実測生存率と相対生存率の集計結果を公表していたが、今回の報告から相対生存率に替えて国際基準となっているネット・サバイバル(純生存率)による集計を実施。2014~15年の診断例における5年生存率は全がん実測生存率が60.3%、純生存率が66.2%、2010年診断例の10年生存率はそれぞれ46.1%、53.3%であったと報告した(関連記事「連携拠点病院のがん3年生存率を初公表」「全がんの10年相対生存率は60.2%」)。

がんのみが死因となる場合の生存率が推定可能

 今回の報告では、実測生存率と純生存率を用いて5年、10年生存率を算出した。実測生存率は、Kaplan-Meier法を用いて算出し、他の原因による死亡とがんによる死亡を区別せず全てを死亡イベントとして扱った。

 純生存率の算出についてはPohar-Perme法を用いた。なお、相対生存率に替えて純生存率を採用する利点については、①国際的に広く採用されている、②がんのみが死因となる場合の生存率が推定できる、③相対生存率はあくまで比にすぎない(100%以上になる場合もある)、④相対生存率のEdererⅡ法では疾患特異的な生存を推定対象としており、年齢などの競合リスクが存在すると生存率が過大評価となる傾向にある―ことによる。

 生存率の公表基準については、院内がん登録生存率の公表は都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会において、以下のように決定している。

・全がんの生存状況把握割合が90%以上

・集計対象が原則30例以上

・集計対象が30例未満の場合、生存率は非公開

 収集対象は、2022年4月1日時点のがん診療連携拠点病院などが453施設、成人の拠点病院に指定されていない小児がん拠点病院が6施設、都道府県推薦病院が300施設および2010年診断例、2015年診断例の院内がん登録全国集計にデータを提出した施設の計775施設。5年予後情報付腫瘍データまたは10年予後情報付腫瘍データの提供を依頼した。

5年生存率は女性で高い傾向

 2015年の診断例については、775施設中555施設から5年予後情報付腫瘍データ81万7,574例が提供され、以下の条件を満たす427施設・48万7,506例のデータを集計対象とした。

・「自施設診断・自施設初回治療」「他施設診断・自施設初回治療」の自施設初回治療例

・悪性新生物(腫瘍)〔新生物(腫瘍)の性状コード3〕

・0~99歳

・全がんの生存状況把握割合90%以上

 なお、2014~15年における5年生存率の集計については、2015年の診断例同様に上記の条件を満たす2014年診断例のデータを加え、2年分の院内がん登録データ447施設・94万2,717例を対象に算出。前回(2013~14年)の437施設・87万5,381例と比べ10施設・6万7,336例増加していた。

 集計の結果、2014~15年の全がんの生存率(平均年齢68.3歳)は、実測生存率が60.3%、純生存率が66.2%で、男女別に見ると男性の62.8%に対し、女性では70.8%とやや高い傾向が示された。部位別に見ると、前立腺がん(実測生存率83.3%、純生存率95.1%)、女性乳がん(同88.1%、91.6%)で生存率が高かった。一方、小細胞肺がん(同10.6%、11.5%)、膵がん(同11.8%、12.7%)はいずれも10%台と低く、症例数が少ないものの甲状腺未分化がん(同6.0%、6.3%)は10%未満だった。

10年生存率、がん種により年齢階級別の実測生存率と純生存率に大差

 2010年における10年生存率は775施設中417施設から10年予後情報付腫瘍データ56万7,052例が提供され、2014~15年の5年生存率と同様の条件を満たす316施設・34万1,335例のデータを集計対象とした。前回(2009年)の281施設・29万3,860例と比べ35施設・4万7,475例増加した。

 集計の結果、2010年の全がんの生存率(平均年齢67.2歳)は、実測生存率が46.1%、純生存率が53.3%で、がん種によっては高齢になるほど実測生存率と純生存率に大きな差が見られた。この結果は、10年間の長期にわたる経過を観察すること、高齢者ではがん以外の原因による死亡例が多くなることが影響していると考えられた。

 これまでは、治癒の目安として5年生存率を用いるケースが多かったが、女性乳がんⅢ期や前立腺がんⅢ期、甲状腺がん(乳頭濾胞がん)Ⅳ期など、がん種や病期によっては5年以降も長期的なフォローアップが必要なことが示された。また、院内がん登録開始初期(2007年に開始)のデータであることから登録精度に課題はあるものの、今後データが蓄積されることでより詳細な集計ができるようになると期待される。

 今回は純生存率による初の集計だったが、集計対象施設・症例数ともに増加し、より安定した推定値が算出できた。一方、母集団が毎年異なり年齢調整などをしていないことから、生存率の経年比較や施設間比較などは引き続き困難である点が課題とされる。また、従来と同様、がん種によっては特性上、性、年齢、病期、手術の有無により生存率は異なるため解釈には留意が必要であることが示された。

(小野寺尊允)

変更履歴(2023年3月22日):10年生存率の全がん実測生存率を修正しました

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