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肺がん患者の悪液質、国内実態調査結果発表

ステージⅢ~Ⅳ期の2割が罹患

2023年03月27日 05:00

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 がん悪液質は食欲不振と体重や骨格筋の減少を主徴とする症候群で、通常の栄養療法では完全に回復せず、患者のQOLと予後を悪化させる。順天堂大学呼吸器内科学講座准教授の宿谷威仁氏らは、全国肺癌登録調査(Japanese Lung Cancer Registry Study)に登録された8,000例超のデータを用いて肺がん患者における悪液質の疫学、危険因子、化学療法の効果と予後への影響を検討。患者の約2割にがん悪液質が認められたと、J Cachexia Sarcopenia Muscle2023年3月10日オンライン版)に発表した(関連記事「がん悪液質、アナモレリンや漢方薬に期待

「過去6カ月以内に5%以上の体重減少」と定義

 日本では、がん悪液質に対する初の治療薬として2021年にグレリン様作用薬のアナモレリンが承認されたものの、現時点で治療選択肢は限られており、危険因子を特定して予防することが重要とされている。だが、がん悪液質の危険因子について検討した研究はほとんどない。

 フランスの55施設で70歳以上の1,030例を対象に行われた研究では、大腸がんと比べて乳がん、婦人科がん、泌尿器がん、皮膚がん、血液がんで悪液質の割合が少なかった。多変量解析の結果、がん悪液質と有意な関連が示されたのは、転移がんの手術歴あり、全身状態(performance status;PS)不良、食事摂取量減少、Timed Up-and-Go(TUG)test成績不良、認知障害またはうつ病リスクありだった(J Cachexia Sarcopenia Muscle 2021; 12: 1477-1488)。

 宿谷氏らは今回、2011年の欧州緩和ケア共同研究(EPCRC)国際コンセンサスレポート(Lancet Oncol 2011; 12: 489-495)で定められたがん悪液質のステージ分類のうち「過去6カ月以内に5%以上の体重減少がある場合」をがん悪液質と定義。全国肺癌登録調査のデータベースから、2012年に全国314施設で登録された1万2,320例のうち治療開始後6カ月以内の体重減少に関するデータが得られたⅢ期/Ⅳ期の肺がん患者8,489例〔年齢中央値69歳(範囲22~102歳)、男性72.4%〕を抽出し、後ろ向きに解析した。

治療効果や全生存期間に有意に悪影響

 解析の結果、8,489例中1,729例(20.4%)が治療開始後6カ月以内に5%以上の体重減少を呈し、がん悪液質と判定された。

 非悪液質群に対し悪液質群で有意差が認められた患者背景は、性、年齢、喫煙歴、肺気腫、PS、上大静脈症候群、臨床病期、転位部位、病理組織像、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異、一次治療法、血清アルブミン値だった。

 ロジスティック分析の結果、がん悪液質と有意な関連が示された項目は、現喫煙、肺気腫、臨床病期(ⅢB期、Ⅳ期)、転位部位(骨、肝臓、脳、副腎)、組織像(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、EGFR遺伝子変異(不明)、血清カルシウム高値、血清アルブミン3.2g/dL未満だった。

 化学療法、化学放射線療法、放射線療法を含む一次治療への反応に関する解析では、非悪液質群に比べ悪液質群で奏効率(49.7% vs. 41.5%)、病勢コントロール率(74.1% vs. 64.3%)がいずれも有意に低かった(全てP<0.001)。

 Kaplan-Meier生存の解析では、非悪液質群に比べ悪液質群で全生存(OS)が有意に短かった(1年生存率60.7% vs. 37.6%、Log-rank P<0.001)。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析でも、悪液質群でOSが有意に短かった(ハザード比1.369、95%CI 1.274~1.470、P<0.001)。

 以上の結果について、宿谷氏らは「全国レジストリ研究により、肺がん悪液質の疫学や危険因子、一次治療への反応および予後が明らかとなった。がん患者の予後改善につながる可能性がある知見だ。がん悪液質の早期特定や介入に役立つものと期待している」と結論している。

 なお、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に免疫チェックポイント阻害薬の効果を評価した後ろ向き研究では、非悪液質群と比べ悪液質群で奏効率、無増悪生存(PFS)、OSが有意に不良なことが示されている(JTO Clin Res Rep 2020; 1: 100020)。同氏は、今回の研究対象は、免疫チェックポイント阻害薬が登場する前に登録された患者とした上で、「免疫チェックポイント阻害薬の使用例による研究で、結果を検証する必要がある」と付言している。

(太田敦子)

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