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クロザピン、併用薬で増える副作用

台湾・好中球への影響を検討したコホート研究

2023年03月28日 16:00

306名の医師が参考になったと回答 

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 台湾・Taoyuan Psychiatric CenterのChin-Chu Yang氏らは、三次精神病院の退院時データを用いて後ろ向きコホート研究を実施。クロザピン(CLO)使用患者ではバルプロ酸(VAL)併用と年齢が好中球減少症と関連する一方、リチウム(Li)併用、若年、男性、ベンゾジアゼピン併用は白血球増加症と関係する可能性があるとBMC Phychitry (2023; 23: 170に報告した。

VALの併用が好中球減少症リスクを増大する可能性

 第二世代抗精神病薬(SGA)であるCLOは難治性統合失調症に対する最も効果的な抗精神病薬であり、特に陽性症状の緩和に有効とされる。一方、CLOの好中球に及ぼす副作用はよく知られており、好中球減少症から無顆粒球症に至ることもある。

 CLO使用者では統合失調症や統合失調感情障害に伴う気分症状の効果を補強するために、VALやLiといった気分安定薬を併用することが少なくないが、VALの併用はCLO関連好中球減少リスクをさらに増大させるとの報告がある。対照的にLiは、白血球前駆細胞に対する保護作用や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)産生刺激作用を持つことから、単独で使用した場合は白血球増加症リスクを増大させる可能性があるものの、造血機能障害(blood dyscrasias)の回避に役立つ可能性が指摘されている。

退院後、最長3年間追跡

 Yang氏らは、2006年1月1日~17年12月31日に台湾の三次精神病院を退院した患者の電子カルテを調べ、退院時にCLOを処方されていた1,084例を抽出。退院後3年間または2020年12月21日までの外来クリニックにおける追跡データを解析した。

 退院時の併用レジメンに基づき、CLO群(700例)、CLO+VAL群(319例)、CLO+Li群(45例)、CLO+VAL+Li群(20例)の4群に分類。好中球減少症は白血球数(WBC)3,000/μLまたは好中球絶対数(ANC)1,500/μL未満、白血球増加症はWBC 1万1,000/μL超と定義し、外来での追跡期間中にいずれかの事象が発生した患者のデータを精査した。

CLO+VAL群で好中球減少、CLO+Li群で白血球増加が多い

 全体の退院時の平均年齢は41.06±12.81歳、男性は539例(49.7%)、主診断名は統合失調症796例(73.4%)、統合失調感情障害149例(13.7%)で、CLOの平均投与量は242.08±148.86mg/日だった。他の抗精神病薬を併用していた患者は325例(30.0%)で、内訳は第一世代抗精神病薬(FGA)が245例(22.6%)、SGAが86例(7.9%)だった。

 追跡期間中、好中球減少症は48例(4.4%)、白血球増加症は453例(41.8%)、好中球減少症/白血球増加症は7例(0.6%)に発症。各群の発症率は、好中球減少症がCLO群 20例(2.9%)、CLO+VAL群28例(8.8%)、白血球増加症がCLO群277例(39.6%)、CLO+VAL群134例(42.0%)、CLO+Li群32例(71.1%)、CLO+VAL+Li群10例(50.0%)、好中球減少症/白血球増加症がCLO群5例(0.7%)、CLO+VAL群2例(0.6%)であった。

VAL/Li併用、年齢、ベンゾジアゼピン、男性が関連因子

 年齢、性、血液学的イベント、CLO用量、併用向精神薬、その他の併用薬を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、CLO群と比べたCLO+VAL群の好中球減少症発症のオッズ比(OR)は3.49(95%CI 1.91~6.39、P<0.01)だった。年齢も好中球減少症のリスク上昇と有意な関連を認めた(OR 1.03、95%CI 1.01~1.06、P=0.007)。

 白血球増加症については、CLO群と比べたCLO+Li群のORが3.39(95%CI 1.72~6.68、P<0.001)で、CLO用量(OR 1.11、95%CI 1.02~1.22、P=0.015)、ベンゾジアゼピン併用(同1.64、1.27~2.13、P<0.001)、男性(同1.39、1.08~1.79、P=0.012)も有意に関連した。年齢に関しては低いほど白血球増加症リスクが低かった(同0.97、0.95~0.98、P<0.001)。

アジア人のCLOとVAL/Li併用関連データとして貴重

 Yang氏らは考察で「CLOやVAL、Liが好中球減少症や白血球増加症を引き起こす機序については未解明な部分がある」としながらも幾つかの仮説を紹介している。また、CLO群における2.9%という好中球減少症の発症率は、文献レビューで報告されている2~3%という有病率と一致するものであったと指摘。

 一方、最近発表された日本の研究で(Hum Psychopharmacol 2020; 35: e2739)で、好中球減少症の発症率が4.9%と報告されている点にも言及。

 東アジア人は白人に比べCLOクリアランスが低く、アジア人の約10%はCLO代謝が低いというシステマチックレビューもあるが(J Clin Psychopharmacol. 2019; 39:135-44)、アジア人におけるCLOとVAL/Li併用が好中球に及ぼす影響を調べたデータは少なく、その点が今回の研究の強みであると述べている。

木本 治

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