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スミレの匂いが発汗量に影響する?

男女間での興味深い違いも明らかに

2023年04月06日 05:00

339名の医師が参考になったと回答 

 発汗は体温調節の他、皮膚の恒常性を維持するために必要な生理機能である。発汗量が多過ぎる多汗症、発汗を完全に欠く無汗症はいずれも健康を損なうばかりでなく、日常・社会生活にも大きな支障を来すため、発汗を制御する方法が求められている。長崎大学皮膚病態学の村山直也氏らは、特発性後天性全身性無汗症(AIGA)患者の発汗部および無汗部皮膚から採取したエクリン汗腺の遺伝子発現を比較した結果、発汗部のエクリン汗腺では特定の嗅覚受容体遺伝子が高発現していることを発見。さらにその受容体に、スミレやキンモクセイの匂いに例えられる香料であるβ-イオノンを塗布すると男女間で興味深い違いが生じたことをJID Innov2023; 100196)に報告した。

発汗部で高発現する嗅覚受容体OR51A7に着目

 村山氏らは、AIGA患者のパラフィン包埋皮膚標本から発汗部および無汗部皮膚のエクリン汗腺を採取、RNAシークエンス解析で遺伝子発現のプロファイリングを行い、有意差(P<0.01)および2倍以上の遺伝子発現差を持つ転写物をフィルタリングし102の遺伝子を同定した。その中で嗅覚受容体の遺伝子であるOR51A7OR6C74OR4A15は発汗部のエクリン汗腺で高発現している一方、無汗部の汗腺では発現が低下していた。

 これらの嗅覚受容体遺伝子の発現および局在を確認するため、無汗症の皮膚病理標本でin situ ハイブリダイゼーションを実施したところ、OR51A7 mRNAの発現が汗腺分泌細胞の細胞質と汗腺を取り囲む筋上皮細胞で検出された。他の2つの嗅覚受容体については確認ができなかったため、OR51A7に着目して研究を進めた。OR51A7を活性化する香料は未解明だったため、同じOR51受容体ファミリーのOR51E2を活性化する香料β-イオノンを候補として検証を行った。免疫組織学的検討からOR51E2もエクリン汗腺に発現することが確認できたため、OR51A7とOR51E2、そして嗅覚受容体の活性化に必要なG蛋白を強制的に発現させた培養細胞(HEK293)を用いてアルカリフォスファターゼーTGFαシェディングアッセイを行い、OR51A7に反応する香料を検討した。その結果、OR51A7はβ-イオノンにOR51E2よりも高い感受性で反応することが分かった()。

図.β-イオノンの作用点とOR51A7の分布

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(長崎大学プレスリリースより)

β-イオノン塗布で女性では発汗量が減少、男性では増加

 続いて村山氏らは、β-イオノンの局所投与がOR51A7またはOR51E2を介してヒトの発汗に影響するかについて、定量的腹部運動軸索反射試験 (QSART)を用いてヒトで検討した。その結果、β-イオノンの局所塗布は女性の発汗量を減少させた(6例中5例)一方、男性の発汗量を増加させた(7例中5例)。また、同じ被験者で実施された嗅覚テストでは、全ての女性被験者がβ-イオノンの匂いを感知できたのに対し、7例中5例の男性被験者は匂いを感知できなかった。

 同氏らは「現時点では性差が生じる理由を説明できないが、β-イオノンを塗布した皮膚ではなんらかの発汗誘発刺激に伴い発汗量が変化し、女性には発汗減少傾向、男性には発汗増加傾向が表れることが示唆された。この研究が発汗異常治療薬の新規創薬に貢献することを期待したい」としている。

(中原将隆)

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