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アトピーの早期積極治療で卵アレルギー予防

二重抗原曝露仮説を実証

2023年04月13日 16:32

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 乳児期に発症したアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーの発症リスクを高めるとされる。国立成育医療研究センターアレルギーセンターセンター長の大矢幸弘氏らは、アトピー性皮膚炎への早期積極治療による食物アレルギー発症予防効果を検討する多施設共同評価者盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。二重抗原曝露仮説を実証する世界初の報告をJ Allergy Clin Immunol 〔2023; S0091-6749(23)00331-7〕に発表した。

全国16施設、318例を検討

 2008年に提唱された「二重抗原曝露仮説」によると、湿疹などにより荒れた皮膚からのアレルゲン侵入はアレルギーの発症リスクを高める一方、消化管で吸収されたアレルゲンはアレルゲンとして認識されず、アレルギーの発症リスクを下げるとされる。

図. 二重抗原曝露仮説

二重抗原曝露仮説図.png

 この仮説が正しければ、食物アレルギーの発症予防には①アトピー性皮膚炎の発症予防や早期治療による経皮感作の予防、②アレルギーの原因となりうる食物の早期の経口摂取による経口免疫寛容の誘導―の二重の介入が有効と考えられる。これまで、②については2017年に同センターが離乳期早期の鶏卵摂取による鶏卵アレルギーの発症予防効果を報告したのをはじめ(Lancet 2017; 389: 276-286)、複数の研究が報告されているが、①についてはRCTでの報告はまだない。

 そこで大矢氏らは、アトピー性皮膚炎に対する早期積極治療による食物アレルギー発症予防効果を検討するPACI Studyを全国16施設で実施した。対象は生後7~13週の乳児で、最低28日間持続または断続的な痒みを伴う湿疹を有し、The U.K. Working Party(UKWP)の診断基準でアトピー性皮膚炎と診断された318例。アトピー性皮膚炎に対して積極的な治療を行う群(積極治療群)318例と、標準的な治療を行う群(標準治療群)322例にランダムに割り付け、生後28週時での鶏卵アレルギーの有病率を検討した。

 なお、積極治療群では保湿薬の1日2回の使用に上乗せして、ステロイド外用薬を以下のスケジュールで無症状の部位を含む全身に使用した(図2)。同氏らによると、ステロイドを湿疹部に限定して使用すると無症状の炎症から新たな湿疹が出現するなど寛解の実現が困難になる患者が多いことから、積極治療群では湿疹のない部分を含めた全身への使用としたという。

表. 積極治療群の治療スケジュール

治療スケジュール表.png

(図、表とも国立成育医療研究センタープレスリリースより)

 一方、標準治療群では保湿薬の1日2回の使用に上乗せして、ステロイド外用薬を湿疹が発現した部位のみに、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に基づいて使用した。また、両群ともレスキュー薬として担当医の判断でモメタゾンフランカルボン酸エステルの使用も可能とした。

積極治療群で鶏卵アレルギーの発症が10.5%ポイント低下

 検討の結果、28週時における鶏卵アレルギーの有病率は、標準治療群と比べ積極治療群で有意に低かった(41.9% vs. 31.4%、P=0.0028、リスク差-10.5%ポイント、片側CIの上限-3.0%)。

 ただし、成長障害での入院例が積極治療群の6例で見られた。また、因果関係は不明だが標準治療群と比べて積極治療群で体重(平均差-422g、95%CI -553~-292g)および身長(同-0.8cm、-1.22~-0.33cm)が低かった。

 以上の結果から、大矢氏らは「食物アレルギーの発症予防には、乳児期のアトピー性皮膚炎を早期に積極治療し、経皮感作のリスクを低下させることが重要であることが示され、二重抗原曝露仮説を実証する結果となった」と結論。

 その上で「乳児期のアトピー性皮膚炎の重症度には個人差が大きいため、実臨床においては患者の症状や重症度などに合わせて適切な強さのステロイド薬を使用し、使用期間と減量スケジュールを慎重に検討し寛解状態を実現・維持し、副作用を回避することが求められる」と付言している。

(植松玲奈)

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