スタチン使用中の運動、筋症状に影響せず
2023年05月08日 05:05
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オランダ・Radboud University Medical CenterのNeeltje A. E. Allard氏らは、スタチン関連筋症状(statin-associated muscle symptoms;SAMS)の有無にかかわらず、スタチンを使用している人がウォーキングなどの中強度の運動をしても、筋損傷マーカーや筋肉痛などの筋症状は悪化しないことをJ Am Coll Cardiol(2023;81:1353-1364)に発表した。
4日続けて毎日30~50kmウォーキングを実施
スタチンは心血管疾患(CVD)予防の目的で広く使用されているが、一部の患者で筋肉痛などのSAMSが問題となることがある。また、CVD予防には運動も重要だが、一部のスタチン使用者では高強度の運動によって筋損傷が悪化する可能性があること、 スタチンの使用はコエンザイムQ10(CoQ10)の合成を阻害することで運動誘発性筋損傷(exercise induced muscle damage;EIMD)を悪化させる可能性があることが先行研究で示されている。
Allard氏らは今回、①SAMSを有するスタチン使用者群(35例、平均年齢62±7歳)、②SAMSのないスタチン使用者群(34例、平均年齢66±7歳)、③スタチンを使用していない対照群(31例、平均年齢66±5歳)ーの3群において、中強度の運動が筋損傷マーカー〔乳酸脱水素酵素(LDH)、クレアチンキナーゼ(CK)、ミオグロビン(Mb)、心筋トロポニンI(cTnI)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)〕に与える影響について比較検討した。また、白血球中のCoQ10量と筋損傷マーカー、筋パフォーマンス、患者報告に基づく筋症状との関連についても検討した。
対象者は4日間にわたって中強度の運動(1日当たり30km、40km、50kmのいずれかの距離を任意のスピードでウォーキング)を行った。筋損傷マーカー、筋パフォーマンス、患者報告に基づく筋症状の評価はベースライン時と運動後に行った。白血球中のCoQ10量の測定はベースライン時に行った。
CoQ10量も有意な群間差なし
検討の結果、SAMSを有するスタチン使用者群、SAMSのないスタチン使用者群、対照群のいずれにおいても筋損傷マーカーはベースライン時と比べて運動後に上昇していたが(P<0.001)、有意な群間差は認められず(P>0.05)、スタチンの使用によるEIMDの悪化は認められなかった。
筋肉痛スコアに関しては、ベースライン時にはSAMSを有するスタチン使用者群で有意に高かったが、運動後にはいずれの群においても有意な上昇が認められ、その上昇度は同程度であった。一方、運動後の筋弛緩時間は対照群と比べてSAMSを有するスタチン使用者群で有意な延長が認められた。CoQ10量に関しては3群間に有意差は認められず、CoQ10量と筋損傷マーカーや耐疲労性、患者報告に基づく筋症状に関連は認められなかった。
以上から、Allard氏らは「スタチンの使用およびSAMSの存在は、中強度の運動後のEIMDを悪化させないことが示された。また、筋損傷マーカーは白血球中のCoQ10量には関係していなかった」と結論。米・Mount Sinai Health SystemのRobert Rosenson氏も、この研究に関する付随論評で「SAMSがある患者の多くは、筋肉のバイオマーカーやパフォーマンスの悪化を心配することなく中強度のウォーキングプログラムに参加してよいと考えられる」と コメントしている。
(岬りり子)