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世界初のRSVワクチン承認、開発競争が激化

GSKのアジュバント添加RSVワクチン

2023年05月09日 15:52

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 米食品医薬品局(FDA)は5月3日、世界初のRSウイルス(RSV)ワクチンを承認したと発表した。膜融合前型の遺伝子組み換えRSV F糖蛋白質(RSVPreF3)抗原と製造元のグラクソ・スミスクライン(GSK)独自のAS01Eアジュバントを組み合わせて作製されたアジュバント添加RSVワクチン(商品名Arexvy、以下RSVPreF3 OA)、RSV関連下気道疾患の予防を目的としており、60歳以上の高齢者が接種対象となる(関連記事「RSVワクチン、第Ⅲ相で80%超の有効性」)。RSVワクチンの開発をめぐっては国内外で競争が激化しており、今年(2023年)から来年にかけて新たなワクチンが続々と登場することが予想される。

予防効果は82.6%、重症の下気道疾患には94.1%

 RSVは肺や呼吸器に影響を及ぼす感染性ウイルスで、有効なワクチンや治療法はない。高齢者が感染すると、加齢に伴う免疫低下や基礎疾患のため重症化リスクが高まるとされる。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心不全などの症状が悪化し、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる懸念がある。米国疾病対策センター(CDC)によると、米国では毎年、RSV感染により65歳以上の高齢者のうち約6万~12万人が入院し、6,000人~1万人が死亡している。 日本では、RSV感染による入院が約5万7,000例、死亡が4,000例発生すると推定される。

 RSV感染症に対するワクチンの開発は50年以上前から進められてきたが、いまだ実用化したものはない。RSV感染症の重症化リスクを有する児に対しては、予防薬(注射薬)としてパリビズマブ(商品名シナジス)が使用されているが、通常の予防接種と異なり、保険適用で受けられる対象疾患が限定されるなどの課題があった。

 今回のRSVPreF3 OAの承認は、欧州連合、北米など17カ国でRSV感染症の流行シーズン前に登録した60歳以上の成人2万4,966例を対象に同ワクチンの下気道疾患に対する有効性と安全性を検証した。主要な第Ⅲ相試験AReSVi-006 (Adult Respiratory Syncytial Virus)のデータなどに基づくもの。

 同試験では、RSVPreF3 OAを単回接種する群(1万2,467例)とプラセボ群(1万2,499例)に1:1でランダムに割り付け、主要評価項目としてRSV感染症の流行1シーズン中における下気道疾患に対する同ワクチン単回接種の有効性および安全性などを検討した。

 解析の結果、中央値6.7カ月の追跡期間中に下気道疾患を発症したのは、単回接種群が7例、プラセボ群が40例で、RSVPreF3 OAの有効性は82.6%(96.95%CI 57.9~94.1%)と主要評価項目を達成した。また、重症の下気道疾患に対する有効率は94.1%(95%CI 62.4~99.9%)、特定の心肺系および内分泌代謝系などの併存疾患を有する例での有効性は94.6%(同65.9~99.9%)、RSV関連急性呼吸器感染症に対する有効率は71.7%(同56.2~82.3%)だった。

ギラン・バレー症候群が1例報告、市販後にリスクのシグナルを評価へ

 単回投与群ではおおむね良好な安全性プロファイルが示された。最も多く認められた有害事象は、注射部位疼痛、疲労、筋肉痛、頭痛、関節痛で、大半が一過性かつ軽度~中等度だった。一方、重篤な副反応や潜在的な免疫介在性疾患の発現率は、両群で同程度だった(単回接種群7例、プラセボ群5例)。

 FDAによると、RSVPreF3 OAの全ての臨床試験におけるワクチン接種後30日以内の心房細動の発現率は、同ワクチン投与群の10例、プラセボ群の4例で報告された。

 別の2件の研究では、60歳以上の被験者約2,500例にRSVPreF3 OAを接種した。このうち1件では、接種後9日目に筋力低下を生じる神経障害の一種であるギラン・バレー症候群が1例確認された他、インフルエンザワクチンと同時にRSVPreF3 OAを接種した2例がそれぞれ接種7日目、22日目に神経症状を呈する自己免疫性炎症性脱髄疾患である急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)を発症し、うち1例が死亡したという。

 FDAは、少数ではあるものの接種後にこれらの神経障害や自己免疫性炎症疾患が認められたことから、GSKに対しギラン・バレー症候群とADEMの深刻なリスクのシグナルを評価する市販後調査の実施を求めた。また承認要件ではないが、GSKは心房細動を評価する研究を行う予定という。

日本でも複数品目が承認申請中

 RSVワクチンをめぐる競争は国内外で熾烈化しており、GSK以外にファイザー〔2価融合前F蛋白(RSVpreF)抗原含有RSVワクチン〕やモデルナ(mRNA-1345)などがFDAからの承認取得を目指している。モデルナは高齢者に対するmRNA-1345の第Ⅲピボタル臨床試験ConquerRSVの中間解析結果から、有効性が83.7%で懸念される副反応は確認されなかったと発表(関連記事「RSVワクチンの第Ⅲ相試験、高齢者への有効性は84%」)。ファイザーもRSVpreF抗原含有RSVワクチンの第Ⅲ相試験の中間解析結果で、60歳超の高齢者に対する有効性が66.7~85.7%だったと発表している(関連記事「RSウイルス2価ワクチン、高齢者に有効」)。

 日本では、GSKがアジュバント添加RSVワクチン(高齢者用)を昨年10月に、ファイザーがRSVワクチン(母子免疫用)を今年2月に厚生労働省に申請している。

(小沼紀子)

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