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アジア初!皮膚がんの疫学的解析

全国がん登録データ6万7,867例を分析

2023年05月17日 05:00

299名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 オゾン層の破壊に伴う有害な紫外線の増加や高齢化の進展により、皮膚がんが世界的に増加している。超高齢社会を迎えた日本においても皮膚がんは看過できない問題であるが、これまで実際の患者数に基づく研究は少なく、発症率などの結果を一般化することは難しかった。国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の緒方大氏らは全国がん登録(NCR)データを解析、日本における全皮膚がんの発症率や発症年齢をCancer Sci2023年4月24日オンライン版)に報告した。これはアジア人における皮膚がんの疫学に関する初の包括的研究である。

年齢調整罹患率は人口10万対27.89

 NCRは、全国の医療施設から集めたがん患者の情報を一元的に管理するデータベースとして2016年に発足。国立がん研究センターがデータ管理を担っている。今回の検討では、NCRから2016年と2017年に診断された皮膚がん症例6万7,867例のデータを抽出し解析した。

 その結果、皮膚がんのサブタイプ別の発症数(発症率)は、有棘細胞がん2万9,763例(43.9%:うちBowen病1万63例、in situ NOS 2,427例)と基底細胞がん2万5,227例(37.2%)が多く、次いで悪性黒色腫4,854例(7.2%、in situ 1,085例)、皮膚リンパ腫2,603例(3.8%)、乳房外パジェット病2,102例(3.1%、in situ 524例)、皮膚付属器がん1,947例(2.9%)、隆起性皮膚線維肉腫621例(0.9%)、メルケル細胞がん430例(0.6%)、皮膚血管肉腫320例(0.5%)であった。

 皮膚がん全体の年齢調整罹患率(人口10万対)は2015年日本人モデル人口で27.89、2000〜25年WHOモデル人口で9.28。発症率が高い有棘細胞がんと基底細胞がんは2015年日本人モデル人口ではそれぞれ12.18と10.47、2000〜25年WHOモデル人口では3.40と3.63だった。

発症率の高い有棘細胞がんと基底細胞がんの好発年齢層は80歳代前半

 好発年齢層はサブタイプで異なり、高い順に並べるとメルケル細胞がん(85〜90歳、平均発症年齢80.7歳)、有棘細胞がん(80〜85歳、同79.5歳)、基底細胞がん(80〜84歳、同74.3歳)、皮膚血管肉腫(79〜85歳、同77.4歳)、皮膚付属器がん(75〜80歳、同74.1歳)、皮膚リンパ腫(75〜80歳、同68.0歳)、乳房外パジェット病(71〜76歳、同75.6歳)、悪性黒色腫(65〜70歳、同67.8歳)、隆起性皮膚線維肉腫(35〜40歳、46.8歳)であった。患者の平均年齢は隆起性皮膚線維肉腫で最も低く、20歳未満の症例が多く見られた。平均年齢が最も高いのは、好発年齢層の高いメルケル細胞がんであった。

 原発部位は頭頸部、体幹、四肢、生殖器などで、サブタイプによって好発部位に特徴が見られた()。

図.各種皮膚がんにおける原発部位の内訳

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Cancer Sci 2023年4月24日オンライン版)

 結果の解釈には、レジストリの設立が2016年と新しいために考慮を要する点が幾つかあるという。解析対象となるデータが2016〜17年に限定されていること、追跡期間が短く生存と死亡に関する十分なデータが得られなかったことなどが挙げられるが、緒方氏らは「これらの問題はデータの集積で解決可能」と説明している。今回の研究は皮膚がんの疫学的データを包括的に解析したアジア初のものであり、同氏は「今後はさらに研究を発展させ、希少がんを含めた皮膚がんの治療法を開発する上で重要かつ有用な基礎データとしていく」と付言している。

野田優子

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