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心不全死亡への心血管疾患の影響は2割

2023年05月24日 17:53

337名の医師が参考になったと回答 

 近年、死亡原因となった疾患(原死因)の頻度を把握する上で重要な指標である人口動態統計において、心不全の増加が指摘されている。心不全の原因としては急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中などの心血管疾患(CVD)の関与が挙げられるが、人口動態統計で原死因として報告される心不全への心血管疾患の寄与度は明らかでない。大分大学公衆衛生・疫学講座教授の斉藤功氏らが多目的コホート研究JPHCのデータを用い、CVDの発症とその後の死因の関連を前向きに検討したところ、人口動態統計での心不全死亡に対するCVDの発症の寄与度は2割程度であったとCirc J2023年3月21日オンライン版)に報告した。

1万4,375人の原死因を検討 

 今回の研究は、1990年、92〜93年に全国11保健所管内に在住する40〜69歳の一般住民約14万人を登録、生活習慣についての情報を収集し、20年以上にわたりさまざまな疾患の発症に関する追跡を行うJPHC研究の一環として実施した。対象は、研究開始時にCVDの既往がなく追跡中に死亡した1万4,375人。時間依存性Cox比例ハザードモデルを用いて生活習慣(喫煙、飲酒、運動)や併存疾患(高血圧、糖尿病、がん)を調整した上で、原死因(心不全、虚血性心疾患、脳血管疾患)に対するAMI、冠動脈疾患(AMI+発症1時間以内の心臓突然死)、脳卒中、CVD(冠動脈疾患+脳卒中)のハザード比(HR)を算出。さらに、CVD発症が原死因に及ぼす影響を評価するために集団寄与危険割合(PAF)を推定した。

 1万4,375人の原死因の内訳は、心不全が495人、虚血性心疾患が818人、脳血管疾患が1,437人、他のCVDが790人、その他が1万835人だった。心不全が原死因だった者のうち、生前に冠動脈疾患12.9%、脳卒中12.7%、CVD24.4%の発症が認められた。また、虚血性心疾患が原死因だった者では39.9%に冠動脈疾患が、脳血管疾患が原死因だった者では70.4%に脳卒中の発症が認められた()。

表. 原死因別に見た冠動脈疾患、脳卒中、CVD発症者の割合

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原死因別に冠動脈疾患、脳卒中、CVD発症のPAFも算出

 心不全死亡に対する調整HRは、AMIが2.99(95%CI 1.85〜4.86)、冠動脈疾患が13.3(同10.0〜17.6)、脳卒中が1.72(同1.31〜2.26)、CVDが3.57(同2.87〜4.45)だった。

 心不全死亡に対するPAFは、冠動脈疾患が12.0%(95%CI 11.6〜12.2%)、脳卒中が5.3%(同3.0〜7.1%)、CVDが17.6%(同15.9〜18.9%)だった。また、虚血性心疾患死亡に対する冠動脈疾患のPAFは39.1%(同39.0〜39.2%)、脳血管疾患死亡に対する脳卒中のPAFは68.8%(同68.6〜69.0%)だった()。

図. 原死因別に見た冠動脈疾患、脳卒中、CVD発症のPAF

451_1_thumb.png

(表、図とも国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト発表資料より)

※図表中の「循環器疾患」は本記事では「心血管疾患」と表記

 この結果について、斉藤氏らは「人口動態統計における心不全死亡に対するCVDのPAFは2割程度と部分的であることが推定された。今後、心不全死亡に至る主な要因を探索するには、さらなる研究が必要だ」としている。

 なお本研究の限界として、①対象が登録時40〜69歳の非都市部の住民であり、他の年齢集団や都市部の住民には当てはまらない可能性がある、②研究開始時にCVDの既往例を除外した、③心不全の原因の1つである心房細動の情報が得られていないーことなどを挙げている。

編集部

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